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1級建築士

平成23年度 1級建築士設計製図合格発表

1級建築士設計製図合格発表

平成23年度1級建築士設計製図試験の合格発表について

設計製図合格率 40.7% 《昨年より1.1%ダウン》
最終合格率 11.7% 《昨年より1.4%アップ》

1.受験者答案の分析から見えてくる採点基準についての考察

 試験機関からは、合格発表と同時に、後述する「採点のポイント」が公表されます。しかし、どのような答案が減点となったかを示す具体的な「採点基準」については公表されていません。
 日建学院では、この「採点基準」こそが試験対策の要と考え、それを明らかにするため、独自の分析を行っています。
 下記の分析結果は、受験者が試験直後に復元した答案の中からサンプルとして200人を抽出し、答案の計画内容と合否結果とを照らし合わせ、詳細に分析した結果から見えてきた、日建学院独自の「採点基準」です。

  1. 療養室の向き

    受験者答案では、療養室を東側と西側に計画した受験者は41.5%、南側、東側、西側に計画した受験者は44.0%、北側にも計画した受験者は14.5%いました。
    療養室は法的採光が必要です。療養室を北側に計画しても法的採光が確保されていれば法的には問題ありませんが、その点がどのように評価されたかがポイントとなりました。

    受験者答案を分析すると、次表のBのとおり、療養室を北側にも計画した受験者は、合格率が26.5%低下しています。試験機関から公表された「採点のポイント」では「(2)意匠・建築計画」で「@要求室の機能性・快適性等」が挙げられており、法規を満たすだけではなく、快適性に配慮した計画が求められていると考えられます。

    療養室の向き[日建学院生200人(合格率57.5%)の計画内容と合格率の関係]

    計画内容 受験者の割合 合格率 200人合格率57.5%との差
    @東側、西側に計画 41.5% 65.1% +7.6%
    A南側、東側、西側に計画 44.0% 59.1% +1.6%
    B北側にも計画 14.5% 31.0% −26.5%
  2. レクリエーションルームの計画

    レクリエーションルームの床面積は約150m2と要求され、要求室の中で最も大きな床面積の指定でした。無柱空間としなければならなかったか、また、整形としなければならなかったか、結果が注目されていました。

    受験者答案を分析すると、室の中に柱を計画した約47.5%の受験者の合格率は58.9%で、200人合格率57.5%とほぼ同じであり、必ずしも無柱空間とする必要はなかったと言えます。 また、矩形にこだわらず不整形な形で計画した約20%の受験者の合格率も低下しておらず、合否には影響しなかったと考えられます。 室の用途、機能性を考慮した場合、必ずしも無柱空間や整形とする必要はなかったと言えます。

  3. 設置階

    (施設長室・応接室)
    設計条件では、要求室の設置階について、「基準階」「1階又は2階」「1階」「適宜」の4種類の指定がありました。 施設長室・応接室は1階の指定でしたが、これを2階に計画した受験者が散見されました。

    試験機関から公表された「採点のポイント」では「施設長室・応接室」の設置階違反については「重大な不適合」とはされていませんが、受験者答案を分析すると、2階に計画した受験者の合格率は約16%低下しており、それだけでは不合格とはならないものの、大きな減点があったと考えられます。

    (食堂・デイルーム)
    食堂・デイルームは1階又は2階の指定でした。

    受験者答案を分析すると、2階に計画した約85%の受験者の合格率は約5%上昇しており、1階に計画した約15%の受験者の合格率は26.5%の低下でした。今年の設計条件のポイントの一つである、「食堂(基準階指定)」、「食堂・デイルーム」、「レクリエーションルーム(1階指定)」の3室を「明るく開放的な空間」とするためには、「食堂・デイルーム」は2階に計画するのが最も適当であったと言えます。

    食堂・デイルームの設置階
    [日建学院生200人(合格率57.5%)の計画内容と合格率の関係]

    計画内容 受験者の割合 合格率 200人合格率57.5%との差
    @2階に計画 85.0% 62.4% +4.9%
    A1階に計画 14.5% 31.0% −26.5%
    B欠落 0.5% 0% −57.5%
  4. バリアフリー法の階段について

    試験機関から発表された標準解答例は@、Aとも、建築基準法に定める、けあげ20p以下、踏面24p以上の階段で計画されています。バリアフリー法円滑化誘導基準において、けあげ16p以下、踏面30p以上としなければならないのは「多数の者が利用する階段」であり、今年の課題はそれに適合させなくても良かったことが分かります。

  5. 廊下の計画

    介護老人保健施設の施設基準等を定める介護保険法において、従来型では、中廊下は内法2.7m以上と定められています。

    今年の課題では、この介護保険法の規定を満たすべきか明記されませんでした。受験者答案を分析すると、廊下幅が介護保険法の規定を満たしていない約32%の受験者の合格率も低下しておらず、合否には影響しなかったと考えられます。

  6. サービスステーションの計画

    サービスステーションからの見通しについて「@食堂とEVが見渡せる」「A食堂のみが見渡せる」「BEVのみが見渡せる」「Cどちらも見渡せない」の4種類に分類した場合、@は4.5%上昇、Aは1.0%低下、Bは1.9%低下、Cは14.6%低下となりました。 設計製図の基本である、ゾーニングと動線計画の重要性があらためて強調された結果と言えます。

    サービスステーションからの見通し
    [日建学院生200人(合格率57.5%)の計画内容と合格率の関係]

    計画内容 受験者の割合 合格率 200人合格率57.5%との差
    @食堂とEVが見渡せる 39.5% 62.0% +4.5%
    A食堂のみが見渡せる 31.0% 56.5% −1.0%
    BEVのみが見渡せる 22.5% 55.6% −1.9%
    Cどちらも見渡せない 7.0% 42.9% −14.6%
  7. エレベーターの計画

    サービス用エレベーターを2基(小荷物専用昇降機を含む)計画した約8.5%の受験者の合格率は約13%上昇しており、2基設けることで、食品搬出入動線と汚物搬出動線が交差しないように配慮された計画は採点において評価されたと考えられます。

  8. 耐力壁の計画

    構造計画については、「必要に応じて、耐力壁等を設け、耐震性に配慮する。」と出題されました。受験者答案を分析すると、「@X・Y方向とも耐力壁が設けられている」「AX方向のみ」「BY方向のみ」「Cどちらもない」の4種類に分類した場合、@は19.2%上昇、Aは7.2%上昇、Bは10.1%低下、Cは6.0%低下となりました。「必要に応じて、耐力壁等を設け」の指定のなか、X・Y方向とも耐力壁が設けられている計画が採点において評価されたと考えられます。

    耐力壁の計画[日建学院生200人(合格率57.5%)の計画内容と合格率の関係]

    計画内容 受験者の割合 合格率 200人合格率57.5%との差
    @X・Y方向とも耐力壁が設けられている 19.7% 76.7% +19.2%
    AX方向のみ 33.6% 64.7% +7.2%
    BY方向のみ 25.0% 47.4% −10.1%
    Cどちらもない 21.7% 51.5% −6.0%
  9. PSの計画

    平成18年以来4年ぶりに「空調設備は空冷ヒートポンプマルチ型エアコンとし、給水設備は受水槽方式とする。」と設備方式が指定されました。 受験者答案を分析すると、PSが不足している約44.3%の受験者の合格率は約9%低下しており、設備方式の指定によりPS等の計画について採点しやすくなっているなか、大きな採点のポイントになったことが分かります。

  10. 計画の要点等

    計画の要点等については、特に設備計画について、「光熱費の削減」、「維持管理」、「機器からの騒音・振動防止」、「設備の損傷防止」、「停電」、「断水」等、テーマを具体的に絞った問題が出題されました。特に東日本大震災を考慮して、地震等の災害への対応策が求められました。
    一例として「レクリエーションルームの計画について、その位置とした理由及び動線計画において工夫したこと」を挙げると、日建学院が独自に「要求された項目(位置と動線計画のそれぞれ)について、すべて記述していること」、「採用した方式等について、採用した理由、根拠が具体的で明確であること」という2つを基準に「@優」「A良」「B可」に分類したところ、受験者の合格率は「@優」が4.4%上昇、「A良」が1.5%低下、「B可」が7.5%低下と高い相関を持っており、「優」の記述力が求められていることが分かります。 「計画の要点等」の記述は、図面との整合も合わせると、受験者の基本的な知識・能力等が明確に表れます。それが採点にも大きく影響したと判断されます。

    [記述]レクリエーションルームの計画について
    [日建学院生200人(合格率57.5%)の計画内容と合格率の関係]

    計画内容 受験者の割合 合格率 200人合格率57.5%との差
    @優 23.0% 61.9% +4.4%
    A良 68.3% 56.0% −1.5%
    B可 8.7% 50.0% −7.5%


    採点基準についての考察のまとめ
    受験者答案の分析から見えてくる採点基準について、どのような用途でも共通する、合否を分ける重点項目は次のとおりと考えることができます。
    ●ゾーニングと動線計画
    設計製図の基本は、ゾーニングと動線計画です。特に今年の課題では療養室の向き、サービスステーションの計画が合否に大きく影響する結果となりました。
    ●適切な構造計画、設備計画
    新試験制度においては、構造計画、設備計画が合否に大きく影響することがあらためて明らかになりました。
    ●「計画の要点等」の適切な記述
    新試験制度において、「計画の要点等」の記述は、図面に匹敵するほど採点のウェイトが高まっているのではないかと想定されます。
    計画の要点等については、今年は特にテーマを具体的に絞った出題が目立ち、記述力が合否に大きく影響する結果となりました。

2.試験機関から公表された「採点のポイント」と「採点結果の区分」

合格発表と同時に試験機関から公表された「採点のポイント」は次のとおりです。

  1. 空間構成

    @建築物の配置計画
    Aゾーニング・動線計画
    B要求室等の計画
    C建築物の立体構成等

  2. 意匠・建築計画

    @要求室の機能性・快適性等
    A図面表現等

  3. 構造計画

    @構造種別、架構形式及びスパン割り等の計画
    Aスラブ及び小梁の計画

  4. 設備計画

    @光熱費の削減のための設備計画
    A設備スペース及び設備シャフトの計画
    B地震等の災害に対する設備計画


  5. 設計条件・要求図面等に対する重大な不適合

    @ 「要求図面のうち1面以上欠けるもの」、「計画の要点等が完成されていないもの」 又は「面積表が完成されていないもの」
    A 地上5階建てでないもの
    B 図面相互の重大な不整合(上下階の不整合、階段の欠落等)
    C 床面積の合計が「3,400 m2以上、4,000 m2以下」でないもの
    D 次の要求室・施設等のいずれかが所定の階に計画されていないもの

    療養室A(4人室)、療養室B(個室)、食堂、サービスステーション、浴室A、談話
     室、汚物処理室、機能訓練室、食堂・デイルーム、厨房、浴室B、診察室、エント
     ランスホール、レクリエーションルーム、事務室、設備スペース、エレベーター、
     便所

    Eその他設計条件を著しく逸脱しているもの


    続いて、平成20年度から23年度までの採点結果の区分(ランク分け)の状況を示します。


    ランクT:「知識及び技能」*を有するもの
    ランクU:「知識及び技能」が不足しているもの
    ランクV:「知識及び技能」が著しく不足しているもの
    ランクW:設計条件・要求図面等に対する重大な不適合に該当するもの
    *「知識及び技能」とは、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的

    かつ総括的な知識及び技能」をいう。

    今年度は、ランクWの割合が10.7%となりました。
    そのほとんどは未完成によるものと思われます。
    新試験制度が始まって以来3年間、ランクWの割合は1割程度以下となっており、課題文の読み落とし等によりランクWの重大な不適合に該当するものが過大にならないよう配慮して課題文が作成されているものと思われます。
    また、ほとんどの受験者は、試験機関からは公表されていない細かな項目に関する採点基準によって、合格となったランクTと、不合格となったランクU、Vに区分されたことになります。前述したとおり、その「採点基準」こそが試験対策の要となるわけです。
    また、今年度は、ランクUの割合が30.5%となり、年々増加傾向にあります。したがって、細かい採点基準の中で1点を競う試験になっていることが分かります。

3.新試験制度の影響

新試験制度3年目となる23年の試験では、昨年と同様に、新試験制度導入時に公表された「見直しのイメージ(中央建築士審査会)」から下記のように軌道修正された部分はありましたが、受験者にとって影響は少なかったと思われます。

  1. 要求室の床面積指定について

    23年試験では、22年試験とほぼ同様に、26室中、主要な10室の床面積が与えられました。21年試験では、全室の床面積が特記事項から算定する形式でしたが、床面積の想定範囲が広がりすぎ、採点をしにくいという問題が生じたことが推測されます。今後の試験においても一部の床面積を指定する形式が採用されるのではないかと考えられます。

  2. 主要な室のみを要求室として指定する形式について

    23年試験では、汚物処理室、リネン室等、要求されなくても必要と判断して計画するべき室についても、要求室として要求されました。22年試験と同様に、ほぼ全ての室を要求されたことで、問題は易しくなったといえます。

新試験制度3年目を迎え、今年初めて、1回の学科合格で設計製図試験3回目となる方が受験しました。今年学科合格者と学科免除者(23年は前年及び前々年の学科合格者の合計)の設計製図試験合格率は次のとおりです。なお、23年度について試験機関から前年及び前々年を分けた合格率は発表されていません。

今年学科合格者と学科免除者の設計製図試験合格率の比較
  全国合格率 今年学科合格者の合格率 学科免除者の合格率(前年度学科合格者)
※23年は前年及び前々年の合計
A−@合格率の差
合格者/受験者 合格率 合格者/受験者 合格率
23年度 40.7% 1,822名
/5,025名
36.3% 2,738名
/6,177名
44.3% 8.0%
22年度 41.8% 2,229名
/5,661名
39.4% 2,247名
/5,044名
44.5% 5.1%
21年度 41.2% 3,050名
/8,172名
37.3% 2,114名
/4,373名
48.3% 11.0%
20年度 41.7% 2,794名
/7,263名
38.5% 1,350名
/2,672名
50.5% 12.0%
19年度 49.4% 2,156名
/4,863名
44.3% 1,549名
/2,638名
58.7% 14.4%

上表から分かるとおり、今年は、昨年に比べて@今年学科合格者とA学科免除者の合格率の差は前年より大きくなりましたが、大きな変化はない結果となりました。

4.24年度試験対策

  1. 低層建築物、基準階建築物それぞれのエスキス手順の理解

    課題テーマは、低層建築物と基準階建築物の2つに大別することができます。 介護老人保健施設、ホテル、事務所ビル等の基準階建築物のエスキス手順は、美術館、コミュニティセンター等の低層建築物のそれとは異なります。早期から両方について実践課題を通してエスキス手順をマスターすることが必要です。

  2. 矩計図対策

    新試験制度において、「梁伏図、矩計図等の構造計画に関する図面から1面程度」出題すると公表されて以来、3年連続で梁伏図が出題されており、来年は矩計図が出題されることも想定しておかなければなりません。 矩計図は、梁伏図に比べて手間のかかる図面です。部材寸法を覚え、納まり等を把握した上で、早い段階から「作図スピード」をあげるとともに、正確な図面を描き上げる能力を身につけることが大切です。

  3. 記述対策

    受験者答案分析から明らかなように、「記述で合否が決まる」と言っても過言ではありません。記述対策を十分に行うことが合格への絶対条件です。

●日建学院の24年度試験対策

  1. 基本理論講義・総合設計コース

    日建学院では、7月下旬の課題発表に先行し、2月下旬から始まる「基本理論講義」、5月下旬から始まる「総合設計コース」において、実践的なエスキス実習、記述実習を通して、各種の建物用途における建築計画、構造計画、設備計画等のポイントを学習します。

  2. 本試験対策特別課題にチャレンジ(無料)!

    総合設計コース入学者には、今すぐ実施できる「本試験対策特別課題」を2課題用意しました! 今年のような基準階建築物のエスキス手順しか学習していない受験者のために、低層建築物の代表として「コミュニティセンター」「図書館」の2課題としました。 基準階建築物のエスキス手順が頭に残っている早い時期に両者のエスキス手順の違いを理解し、どちらにも対応できるようにすることが合格への近道です! 。

試験結果

  平成23年 平成22年
学科の
試験
設計製図の
試験
学科の
試験
設計製図の
試験
実受験者数 32,843人 11,202人
うち、製図から6,177人
38,476人 10,705人
うち、製図から5,044人
合格者数 5,171人 4,560人 5,814人 4,476人
合格率 15.7% 40.7% 15.1% 41.8%
最終 実受験者数 a 39,020人 43,520人
合格者数 b 4,560人 4,476人
合格率 b/a 11.7% 10.3%

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