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知れば得する土地建物基礎知識 |
| 小柴一生/行政書士 |
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不動産と登記 |
【沽券(こけん)にかかわる】
少々古風な表現ですが、「沽券にかかわる」という表現があります。その意味は人が体面を傷つけられたときなど、品位や体面に差し障ったりするような場合に用いますが、この「沽券」という語句の本来の意味をご存じでしょうか。読み方は「こけん」と読み、「沽」は売り買いする、「券」は証文のことで、江戸時代に土地の売買契約の際に交わした売り渡し証文のことを指します。それには、売買価格が必ず記してあるところから、人の値打ち、品格、体面といった意味に転じ、値打ちが下がって面目が失われるといった意味を表すものとして、「沽券が下がる」「沽券にかかわる」──などという慣用句が成立したのです。
この沽券は現在でいえば、「権利証」と一般的に呼ばれるものにあたり、不動産が自分のものであることを証明する大事なものです。そう考えると、不動産(特に土地)というのは、江戸時代の昔から今に至るまで、財産の価値として大きなものであることに変わりはないのですね。
ということで、これから不動産にまつわるいろいろなことがら(マンションの紛争・相続・地代や家賃・隣地との関係・担保・税務対策など)を、幅広い角度から書き進めていくことにします。
不動産と登記は切れない関係
不動産の登記という言葉はよく使われますね。不動産を売ったり、買ったり、あるいは相続したり、また担保として差し出すときにも、必ず登記がでてきます。ともかく不動産と登記は切っても切れない関係にあるものです。
この登記とは、簡単にいうとわたしたちの大切な財産である土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・氏名などを 公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係などの状況が誰にでも分かるようにすることで、取引が安全でスムーズに行われる役割をはたします。
したがって、たとえばマンションを買って、代金を全額支払ったとしても、登記がなければ確定的に自分のものであるといえません。この登記簿に所有権の登記(記載)をすることにより、初めて誰に対しても、そのマンションの権利は自分のものであると主張することができるのです。そのことをちょっと難しい言い方をすると、登記の対抗力といいます。
不動産登記法が大改正
このような登記の手続きの仕方などの制度を定めている法律が、不動産登記法ですが、この3月に全面的に大改正されました。その目的は、インターネットを利用したオンライン申請を導入し、カタカナ交じりの読みにくい条文を口語化したものです。しかし、1899(明治32)年に作られた法律を一挙に現代の情報化社会に合わせることは整合性に問題が生じ、実務においてはしばらくの間混乱することが予測されているのが実情です。
今回の法改正により、直接影響を受けるのは登記の専門家である司法書士や土地家屋調査士ですが、一般の方にとっても、不動産を所有したり、購入したりするときには関係してきますから、基本的なことは知っておいたほうがいいでしょう。実は前述した「権利証」の制度もこの法改正により廃止されているのです。これらについても次回から順次お話をしていきましょう。
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登記法が大改正 |
【立錐の余地もない】
今回の不動産にまつわる言葉は、「立錐(りっすい)の余地もない」です。立錐は、木に穴を開ける道具である錐(きり)を立てることです。その錐が立つだけの余地すらもなく、ぎっしり詰まって隙間もないという、狭い土地を例える言葉です。
モノの本によると、中国の『史記』にある「滑稽伝」の一節に「いまや秦は六国の子孫を滅ぼして、立錐の地さえないようにした」というのが出典で、ここから広まったようです。でも特に都会では、錐が立たないような土地でも立派な財産には違いはないです。
新不動産登記法
明治32年(1899年)に制定された不動産登記法が、年号が平成であるいま、大改正され、今年3月7日から施行されています。
不動産登記法はこれまでにも、何度か改正されてきましたが、今回は全条文が改正され、まったく新しい仕組みがつくられるなど、改正よりも新法が成立したといったほうがよいくらいです。
ところで、一般の人にとっては普段、不動産登記法自体は馴染みが薄く、また住宅を購入した際などの登記申請も、登記の専門家である司法書士に依頼するケースがほとんどです。したがって、この改正が皆さんの生活に直接の影響を及ぼすわけではありませんが、不動産の相続、取得や売却をするときなどのために、その基本的なことは知っておいても損はありません。
そこで今回から、一般の方にもぜひ知っておいてもらいたい不動産登記法の改正点の基本事項を連載していきます。
オンライン法務局
不動産登記を担当する役所のことを一般に「登記所」と呼びますが、正式には「○○法務局」「○○法務局△△出張所」といいます。従来の法務局は、不動産登記事務がコンピュータによりデータ化された法務局と、データ化されずに登記簿(バインダーで綴じられた紙の登記簿)で事務を行う法務局とが並存していました。
今回の不動産登記法の改正により、登記申請をコンピュータのオンライン上で行える法務局ができました。国は、順次このオンライン指定庁に切り替える予定で、2011年ころまでには全部の法務局がオンライン化されることになっています。オンライン化されると、東京に居ながら九州にある物件の登記がペーパーレスで、コンピュータからできるようになります。それまでの間は次の3タイプの法務局が並存することになります(名称は便宜的なもので正式な呼び方ではありません)。
《オンライン庁》
登記事務はコンピュータ化され、登記申請は オンラインで行うのを原則としますが、すべてオンラインでなければならないのではなく、紙による申請、あるいはフロッピーディスクなどによる申請も認められます。
《コンピュータ庁》
登記事務はコンピュータ化されていますが、登記申請は書面で行います。
《ブック庁》
登記事務は従来のままであり、登記申請も書面で行います。
権利証は正式には「登記済証」と呼び、例えば、マンションを買って所有権の登記を申請し、登記が完了すると法務局から買主に交付される書面です。したがって、この登記済証は、そのマンションの所有者しか所持していないものですから、買主がその所有権を主張したり、さらにそのマンションを転売しようとするときは、本人確認の書類として提出しなければならない重要な書類です。
この登記済証が今回の改正で廃止されることになりました。詳しい内容は次回説明します。
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権利証が廃止 |
【青田買い】
青田買いの「青田」とは、まだ稲が実っておらず穂の青々とした田のことで、青田「買い」は、その青田の時期に収穫量を見積り、先物買いをすること意味します。それが転じて、優秀な人材を早期に確保する用語として用いられています。
また、不動産の用語としては、先物売買の意味合いから、まだ完成していない物件を完成する前に売ることを青田売りといいます。特にマンションの売買においては、1部屋だけモデルルームをつくり、それをもとに売買契約をするという販売形式が通常のように行われています。しかし、実際に完成後の物件が、それと違うということがあってはならないので、宅地建物取引業法では、建築確認がおりる前に、建物の広告や売買契約をすることを禁じています。
権利証の廃止
前回は、全国の登記所が将来的にはすべてコンピュータによりオンライン化され、原則として登記手続のすべてがコンピュータによりなされることになると書きました。しかし、オンライン申請がすべての登記所ですぐに行われるわけではありません。これから全国の登記所が順次指定されていくことになりますが、それまでは書面による申請が行われます。
しかし、オンライン申請が実施されていなくても、今回の法改正により、登記の仕組みがすぐに変わるものがあります。その一つが前回お話しした、登記済証(権利証)の廃止です。
登記済証とは自分に権利がある不動産であるということの証明書ですから、これは一大事です。ではどうしてそのような大事な書面を廃止してしまったのでしょうか。
コンピュータによりオンライン登記申請を行うということは、登記所への申請も、登記所からの通知も、すべてデータでやりとりします。申請書という紙に書かれたものは、利用できなくなるのが廃止の理由です。
そうすると、登記済証に変わるデータでやりとりできるものが必要になります。そこで考えだされたのが、「登記識別情報」というものです。
12桁の登記情報
登記識別情報とは、たとえば、売主Aさんと買主Bさんの間でマンションの売買契約がされ、AさんからBさんへの所有権の移転登記が申請された場合、その登記が完了すると、買主のBさんに数字とアルファベットからなる12桁の番号が通知されます。それが登記識別情報です。この番号には同じものはなく、この番号が権利証に代わるものとなります。
登記識別情報は、権利証と同じく本人確認の役割を果たすものですから、将来Bさんがそのマンションを売却しようとするときには、この登記識別情報がなければ、原則として登記ができないことになります。もし、登記識別情報がない場合には、「事前通知」という面倒な手続き方法をとらなければなりません。
これまでは権利証を大事に保管していましたが、今度はその番号を忘れないようにしなければならないということになります。ちなみに、登記識別情報を忘れてしまっても再通知はされませんので注意してください。
しかしそうなると、現在登記名義人が持っている登記済証は、役に立たなくなってしまうのでしょうか。安心してください、自分が登記した登記所がオンライン庁に指定されるまでは、書面による申請になりますから、これまでどおり登記申請に用いることができます。
保証書制度の廃止
今回の改正で保証書制度もなくなりました。改正前は、登記の申請時に登記済証を添付しなければならない場合、それができないときは登記済証の代わりとして保証書というものを提出しなければならず、それによって本人確認をしていました。しかし、今回の改正により、事前通知制度がそれに代わる手段として設けられました。登記所から、登記名義人に通知がなされ、本人から登記申請に間違いがないとして申出があった場合に限り、登記をする制度なのです。
出頭主義の廃止
いままでは、権利の登記(売買契約による所有権移転登記など)を申請する場合には、当事者かその代理人が必ず登記所に出頭しなければなりませんでしたが、オンライン申請の導入にともない、この出頭主義が廃止されました。オンライン申請をする場合には、登記所にデータを送付することにより登記申請をすることができるわけですから出頭主義の廃止は当然です。
また、従来どおり書面で登記申請をするときも出頭主義は廃止されましたから、登記申請書を郵送により送付することもできます(郵送の場合は書留郵便)。
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登記しないと…… |
【行灯部屋】あんどんべや
「行灯(あんどん)」とは、木や竹の枠に紙を貼り、中に油皿を入れて火をともす照明具のことです。その行灯や布団を収納していた薄暗い部屋を行灯部屋と呼んでいたことから転じて、現在では、マンションなどで窓がなかったり、ほとんど光が入らない部屋という意味に使われます。窓がなくても、ふすまや障子などの引き戸で仕切られている和室の続き間なら、引き戸を開けっぱなしにすれば隣の部屋から光が入ってきます。マンションの行灯部屋がほとんど和室になっているのは、そのような理由によるものです。
ところで、昔の遊郭では、2人以上で遊びに来たお金を払えない客に対し、金の工面がつくまで1人を行灯部屋に入れ、残りの1人が金の工面を付けてくるまで閉じこめておいたそうです。落語の郭噺しに「居残り佐兵次」というのがあって、「佐兵次という遊び好きの男がいて、薄汚い自分の家でごろごろしているよりは、きれいな品川の女郎屋の方がよっぽどましと、大いに飲み食いし、遊女と楽しんだあげく、支払う金は持っていない、さっさと居残りを決め込んでしまいます。佐兵次は居残りにもかかわらず、お座敷に顔を出しては、他の客を接待したり一緒に楽しんで、なかなか快適な居残り生活を続けます。音を上げたのは店のほうで、しまいには頼むからもう帰ってくれとお金を渡してとにかく帰ってもらうことになる」という、本末転倒の見本のようなお噺ですが、あやかりたいような気もしないではないですね。
登記は安くない
不動産とは切っても切れないのが「登記」です。例えば、マンションを購入した人は必ず「登記」をします。正確にいうと、購入したマンションの「所有権移転登記」を司法書士に依頼して、マンションの売主から自己の名義に移転する登記をします。この移転登記をするには、登録免許税を納めなければなりませんし、司法書士への報酬の支払いもしなければなりません。もし3000万円で購入したマンションであるなら、それら諸々の費用はおおよそ50万円程度にもなります。このような費用を支払ってまでどうして登記をするのでしょうか。
それは、不動産について登記をしておかなければ、この物件は自分が買ったのだから自分のものだということを、売主以外の者には主張することができないからなのです。そのために大金をはたいて、自分が所有者であるという登記をするわけです。もしその登記をしないとすると、次のようなことが起こりえます。
それは、売主が物件を二重売買してしまうケースです。仮に売主Aが、買主Bとの間でマンションの売買契約をしたとします。しかしAからBへの所有権の移転登記がされていないのをいいことに、Aは、その後になってCとの間でも売買契約しました。典型的な二重売買です。このときにBはCに対して売買契約をしたのは自分の方が早いからといって、Cに所有権の主張ができるかというと、できないのです。
所有権を主張するには登記をしておかなければなりません。もし、Cが先に登記をすると、所有権は確定的にCのものになってしまいます。つまり、この場合のBとCとの関係は、売買契約の先後に関係なく、登記を先にしたものの勝ちということになるのです。このことを専門的にいうと、「登記の対抗力」といいます。登記がいかに重要であるかがお分かりいただけるでしょう。
売主の二重売買
それでは、登記は具体的にどのようになされるのかというと、不動産の所在地を管轄する登記所には「登記記録」(登記簿)が備え付けられており、不動産ごとに定められた情報が記録されています。建物であれば、不動産番号・所在・家屋番号・種類・構造・床面積などの物理的状況が表題部として記録され、さらに所有権者はだれか、担保に入っているかなどといった情報が権利部に記録されています。
所有権がAからBに売買により移転したのであるなら、AとBは共同で、所有権移転の登記を申請することによって、権利部に所有者Bと記録されます。これで一安心なのです。
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土地の「相隣関係」 |
【普請】ふしん
家を建てたり改築したりするときに、「普請する」という言葉を使うことがあります。新築したわが家を謙遜して、「いや安普請ですよ」などという使い方をしますし、また、建物だけでなく道をつくるときの「道普請」という言葉もあります。このように、普請とは建物を建てたり道をつくることを言います。
普請とは本来仏教用語であり、「功徳を普(あまね)く、請(こ)い願う」という意味で、お寺が、広く一般の人から寄付を募り、また労役を提供してもらって、お堂や仏塔などを造営したり、修理をしたりすることなのです。
それがその後、一般家庭が家の屋根を葺き替えたり、改修したり、また新しく建築したりするときにも使われるようになったものです。それでも最近では、普請という言葉はあまり聞かれなくなりました。今は、何千万円ものローンを組んで資金を借り入れ、やっとの思いで家を手に入れるのが普通ですから、そんなに苦労して手に入れたマイホームを安普請などと謙遜する気にはならないからでしょうね。
登境界での攻防!?
本来、土地は連続した一つのものです。それを人為的に区切って不動産登記上、一筆の土地として、その筆ごとに所有権を認めています。したがって、どの土地も必ず他の土地と接しています。
このように隣り合っている土地においては、互いに隣の土地に何らかの影響を及ぼすことは避けられませんから、隣接する土地の所有者相互間における土地の利用を調整していくことが、必要不可欠となってきます。そこで民法は209条〜238条に「相隣関係」という規定を設けて、その調整をはかっています。その主な内容を見ていきましょう。
▼境界付近での隣地の利用
土地の所有者は、隣の土地との境界またはその付近に、塀や建物を作ったり、修繕するために必要な範囲で隣の土地の使用を請求することができます。ただし、隣の住家の中には隣人の承諾がない限り、立ち入ることはできません。
▼袋地からの通行権
ある土地が他人の土地に囲まれていて公路へ出ることができない袋地の所有者は、その周囲の他人の土地を通行することができます。その場合、通行の場所と方法は、通行する者のために必要なもので、周囲の他人の土地にとって損害が最も少ないものでなければなりません。
▼流水・排水の関係
土地の所有者は、隣の土地から自然に水が流れてくることを妨げることはできません。
貯水・排水などのために設けた工作物が壊れたことなどによる人工的原因により、流出する水が別の土地に損害を与えるようなときは、損害を受ける土地の所有者は、損害をかける土地の所有者に、その修繕をさせることができます。必要なときには損害を生じないように、予防工事をさせることもできます。
▼境界標の設置
相互の土地の範囲を明確にするため、土地の所有者は、隣の土地の所有者と共同で境界標を設けることができます。この場合、境界標の設置および維持の費用は、相隣者が半分ずつ負担します。ただし、測量の費用は、それぞれの所有地の広さに応じて分担します。
▼垣根や塀などの囲いの設置
所有者が異なる2棟の建物があって、その間に空地があるときは、それぞれの所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲いを設けることができます。しかし、当事者間で協議が成立しないときは、高さ2bの板塀または竹垣にしなければなりません。
囲いの設置および維持の費用は、お互いに半分ずつ負担します。
▼隣の竹木などが入り込んだときの措置
隣の土地の竹木の枝が境界線を越えてこちら側に飛び出しているときは、竹木の所有者に境界線を越える部分を切り取るよう請求することができます。竹木の所有者の承諾無しに勝手に切り取ることはできません。
隣の土地の竹木の根が、境界線を越えて出ているときは、その根を切り取ることができます。
▼境界線と建物の建築制限
建物を建てるには、境界線から50a以上離さなければなりません。ただし、この規定による間隔は、当事者間で協議し合意することにより狭くすることもできます。
隣接地の土地所有者がこの規定に違反して建物を建てようとするときは、裁判所にその建築工事の差止請求をすることができます。ただし、工事着手してから1年以上経過、またはその建築が完成した後は、損害賠償の請求しかできません。
▼観望に関する制限
境界線から1b未満(この距離は、窓または縁側の最も隣地に近い点から直角に測って境界線に達するまで)のところに、他人の宅地を望むことができる窓や縁側を作ろうとするときは、目隠しをつけなければなりません。
譲り合いが原則!?
相隣関係については、以上のように民法にいくつか規定されていますが、その民法は明治時代に成立しているものですから、内容が時代遅れになっていて、現代社会に即応した規定が設けられていないなどの不都合が目立ちます。しかし、これらの規定の根底にあるのは、隣地者間で紛争が起きた場合には、お互いに譲り合って解決していこうとする考え方です。細かな民法の規定がどうのこうのという前に、このような法律の趣旨というものを念頭に置いて隣地関係を築いていくことが大事なことでしょう。
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公正競売規約を知ろう |
【我他彼此】がたぴし
ガタピシとは、「これはずいぶんひどい建て付けだ。ガタピシだ」というように、建て付けの悪い建具や引き出しを開け閉めする時に立てる音を表現したり、機械や装置、組織や人間関係の状態などが、円滑に動かない様子を表したりもします。事件などがあると、「背景にはガタピシした人間関係が窺われます」などと、専ら擬声語として用いられることもあります。ところが、本来は、この用語も仏教用語なのです。
漢字では「我他彼此」と書きます。「我他」と「彼此」。つまり、《自分と他人》《あれとこれ》というように物事を対立してとらえることで、これを「我他彼此の見」といいますが、そこからさまざまな衝突や摩擦が生じて、円滑を欠く状態となることを表します。
また、仏教には「此(シ)あるが故に彼(ヒ)あり」というように、相互関係を重視した教えがあり、そこには対立ではなく、相手の存在を認める寛容があります。相反する物事のとらえ方が併存するところに、仏教の懐の深さが窺われます。
広告表示のルール
私たちが住まいを買うため、あるいは借りるために住宅などを探す場合、まず自己予算、ローンの設定、家族構成、購入目的などを決めてから、いろいろな情報を収集し、検討することから始めます。その収集手段として代表的なものは、新聞折込チラシ、ダイレクトメール、住宅情報誌、そして現在はインターネットなども有力な情報ツールです。
ところが、不動産の広告には、往々にしてインチキ広告や誇大広告などが見受けられます。駅から歩いて5分が実際は20分もかかったり、市街化調整区域内の土地であるため建物は建てられないのに、すぐにでも別荘が建設できるように表示されていたりする広告などは、後を絶ちません。これでは、消費者は安心して物件を購入するわけにはいきませんし、不動産業界全体も悪いイメージがついてまわることになります。
そこで不動産業界は、広告に関して一定の自主的なルールを取り決めています。それは「公正競争規約」と呼ばれ、公正取引委員会の認定を受けています。この不動産の規約は、不動産公正取引協議会に所属する会員業者に適用されますから、全国のほとんどの宅建業者はこれを守らなければなりません。ちなみに、適用される業者の目印は、店頭に貼られた「公正表示ステッカー」です。この規制はあくまで「自主規制」ですが、規約を守らない業者に対して、注意、警告、あるいは500万円までの違約金を課徴することができる罰則規定が設けられています。
表示基準を見る
ここで、この表示基準のいくつかを抜粋してみましょう。
▼不当な二重価格表示の禁止
事業者は、次の各号に定める場合(省略)を除き、二重価格表示(「実売価格」とこれよりも高い価格「比較対照価格」を併記することなど)により、実売価格に比較対照価格を付すことをしてはならない。
▼交通機関とその所要時間
(1)電車、バス等の交通機関は、現に利用できるものを表示し、特定の時期にのみ利用できるものは、その利用できる時期を明らかにして表示すること。
(2)自動車による所要時間は、道路距離を明らかにして、走行に通常要する時間を表示すること。この場合において、有料道路を通行する場合はその旨を明示すること。
(3)徒歩による所要時間は、道路距離80mにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは1分として計算すること。
▼生活関連施設
デパート、スーパーマーケット、商店等の商業施設は、現に利用できるものを物件までの道路距離を明らかにして表示すること。
▼融資等の条件
(1)不動産ローンの返済例を表示する場合において、その返済例に係る利息の計算方法が変動金利制によるものであるときは、金利の変動に伴う返済額の変更の概要を示すこと。
(2)不動産ローンの返済例を表示する場合において、ボーナス併用払のときは、1月当たりの返済額の表示に続けてボーナス時に加算される返済額を明示すること。
▼特定用語の使用基準
(1)不動産の形質その他の内容等について、「完全」「完璧」「絶対」「万全」等、全く欠けるところがないことを意味する用語は、断定的に使用してはならない。
(2)不動産の形質その他の内容、価格その他の取引条件等に関する事項について、「日本一」「日本初」「業界一」 等、他の競争事業者の供給するもの又は他の事業者よりも優位に立つことを意味する用語を使用してはならない。
(3)不動産の形質その他の内容又は価格その他の取引条件等に関する事項について、「最高」「最高級」等、最上級を意味する用語を使用してはならない。
(4)不動産の価格について、「買得」「掘出」「格安」「投売り」「破格」「激安」「バーゲンセール」等、著しく安いという印象を与える用語は、使用してはならない。
▼別荘地等の名称使用基準
(1)例えば、別荘地(別荘又はリゾートマンションを含む)の最寄駅の名称を「軽井沢駅」とするには、軽井沢駅から直線距離5000m以内に所在していること。
(2)例えば別荘地(別荘又はリゾートマンションを含む)に「草津温泉」という名称を用いる場合は、草津温泉から直線距離1000m以内に当該物件が所在していること。
皆さんが新聞の折り込みチラシなどを見るときに、広告にはこのような規制があるのだということを知った上で見ると、ずいぶん物件に関する見方が変わってくると思います。特に実際に不動産を買いたいとか借りたいと思っている方は、もっと詳しく調べてみると良いでしょう。
その場合は、インターネットの検索画面で「不動産公正規約表示基準」と入れて検索すれば、すぐに調べることができます。
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デメリット表示を見逃すな |
【施主】せしゅ
仏教用語で、法事または葬式などの供養をする人のことを「施主」といいます。古代インドのサンスクリット語では「ダーナパティ」といい、布施を行う主(あるじ)のことを指します。仏教でいう布施とは、自分の持っているものを、できるだけ他人に施すことです。本来お布施は、何かの行為に対する対価ではなく、喜んで仏さまに差し出すものであり、寺や僧などにお金や物を寄進することはすべて布施といいます。かつてはその意味から、経済的に恵まれ、見返りを期待せず、社会に奉仕することに生き甲斐を見いだしていた粋な旦那衆で「道楽」として建築を極める人たちを「施主」と呼んでいたようです。そうした施主の例として数奇屋建築があります。
ところで、現在は家を建てたり、リフォームする際の建築主のことを「施主」と呼びます。要するに、建築会社からすれば「お客さん」のことを指します。最近では「お施主さま」などと呼んでいるハウスメーカーや建築会社もあるくらいで、見返りを期待しないという本来の施主の意味からはどんどん離れていくようですね。
環境と建物自体の表示に注意
前回は不動産の表示に関する公正競争規約から、代表的な表示基準を紹介しました。今回は、広告に必ず記載しなければならない物件の″デメリット″表示を見てみましょう。
公正競争規約は、不動産業界が自主的に定めた不動産広告のルールですが、公正取引委員会から一般消費者の利益を保護する基準として認定を受けているものです。不動産の広告においては、広告に記載すると売主にとって不利となる事項であっても、それを知らないで購入した買主が不測の損害を被ることがないように、業者である売主は広告に一定の記載を義務付けられています。
公正競争規約は、デメリット表示について「宅建業者が取引物件を広告するについて、一般消費者が、通常予期することができない、不動産立地や、環境などに関する事項で、取引の相手方に著しく不利益な取引条件については、見やすい場所に、見やすい大きさで、分かりやすい表現で明瞭に表示しなければならない」と規定しています。
具体的には12種類の事項が定められていますが、その中で環境についてのデメリット表示には、以下のようなものがあります。
▼鉄道・高速道路・ゴミの焼却場・産業廃棄物の処理場などの建設計画が決定され、公示されているときは、それらは、騒音や日照、あるいは大気汚染など、環境に影響を及ぼすおそれがあることから、その計画があることを表示しなければなりません。
▼日照、通風、眺望、景観などを阻害するような建物の建築計画や宅地開発計画が、広告主自身が主体となるものであるときは、その旨およびその計画内容を表示しなければなりません。
これらについては、計画の段階で規制するものです。次に、物件自体についてのデメリット表示について、その主なものは以下のとおりです。
▼市街化調整区域内の土地……市街化調整区域内の土地については、「市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません」と、16ポイント以上の文字で表示しなければなりません。表示されていても豆粒のような文字では困りますからね。
▼接道義務を満たしていない土地……建築基準法上、建物の敷地は道路に2b以上接していなければなりませんが、その義務を満たしてしない土地については、その土地が更地であるときは「建築不可」と、すでに中古住宅が建っているときは「再建築不可」と表示しなければなりません。
▼土地上に古家、廃屋が存在する土地……「売地。ただし、古家あり」と表示しなければなりません。更地と勘違いされるからです。
▼土地に地上権が設定されている土地……例えば地下鉄を通すために、土地の全部または一部に、地上権が設定されているときには、その旨を表示しなければなりません。それらの権利が付着していることにより、用益することに支障が生ずる場合があるからです。
▼みなし道路に接している土地……道路は原則として、その幅員が4b以上なければならず、それに満たない道路をみなし道路といいますが、この道路に接している土地は、道路の中心線から2bのところが、道路と敷地との境界とみなされることから、その後退した敷地部分内に建物を建てることはできません。これを「セットバック」といいますが、こういう場合には、この旨を表示しなければなりません。
▼傾斜地……敷地面積の約30%以上が傾斜地である土地については、その旨とその面積を表示しなければなりません。
▼著しく不整形な土地……例えば、旗竿状の土地や、極端に高低差などがあって、土地の有効利用を図ることができないほどのものであるときは、その旨を表示しなければなりません。
▼道路法や、都市計画法による道路の予定地……道路法により道路区域が決定され、または都市計画法の告示がされた道路の区域にかかる土地については、道路予定地である旨を表示しなければなりません。これらの土地には建築制限があるからです。
不動産は資産価値が高い大きな買物です。おいそれと買い換えるわけにはいきませんから、業者は、これらの不利益があることを消費者が購入する前に、正直に伝える義務があるのは当然のことです。
公正競争規約は「自主規制」であることから強制力がなさそうですが、規約が等しく守られるように、規約を守らない業者に対しては、注意、警告、あるいは500万円までの違約金を課徴することができる罰則規定が設けられています。
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用途地域と建築制限 |
【建築】けんちく
建物を建築するという場合、通常は新築するという意味で使用しますが、建築基準法上における建築とは、「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転すること」と定義されています。
これを少し詳しくみると、「新築」とは文字通り新たに建物を建てることをいい、広告上で新築と表示してあるものは建築後(完成後)1年未満で未使用の物件を指します。「増築」とは現在の建物に新しい建物をつけ加えることで、床面積が増えることになります。
また「改築」とは、建築物の全部もしくは一部を除却すると同時に、これと同様の規模・構造の建築物を建てることをいいます。そして、「移転」とは、建物を壊さずに同一敷地内に建物を移動させることをいいます。曳屋(ひきや)ともいい、この場合、建物の同一性は失われませんが、登記上の問題として所在地番変更の登記が必要になることがあります。
ちなみに、別の敷地に建物を移築することは新築に該当することになります。
用途地域は12種類に分類して制限
前今回のテーマは「用途地域」です。不動産を購入する時、その物件が位置するエリアが都市計画上、どの用途地域に指定されているかは非常に重要な問題です。それによって、せっかく土地を購入しても、思ったような建物を建築することが制限される場合などがあるからです。それはなぜなのか、ちょっと堅苦しい話ですが読み進めてください。
都市周辺への無秩序な乱開発を防ぎ、良好な環境を保ちながら道路や建物・施設を整備するなど、適正な土地利用を図るために設けられた「街づくりの計画」のことを都市計画といいますが、都道府県や市町村がその都市計画に基づいた街づくりを進める場合に、土地や建物の用途を規制するために定められた法律が「都市計画法」です。
都市計画においては、具体的に都市計画区域を指定し、さらにその区域内を「市街化区域」と「市街化調整区域」に区分します(都市計画区域の中に線を引いて、区域区分を定めることから「線引きをする」ともいいます)。
区域区分を定めるのは都道府県で、必要がないと判断すれば定めなくてもよいことになっていますが、三大都市圏などの都市計画区域に関しては、必ず区域区分を定めなければならないことになっています。
その区域区分の「市街化区域」というのは、都市計画区域内ですでに市街地を形成している区域と、線引きが行われた時点以後10年以内に、優先的に市街化を図るものとされた地域であって、そこには用途地域が定められます。
用途地域は、市街化区域内を建物の用途ごとに大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3つに分け、さらに細かく12種類に分類します。不動産の広告などを見ると、物件の概要に「第1種低層住居専用地域」「工業地域」「商業地域」などと必ず書かれています。この用途地域においては、その地域ごとに建築することができる建物の種類やその規模(建ぺい率や容積率)が制限されることになります。
静かな住宅地のまん中に工場、事務所や遊戯施設が建つなど、いろいろな用途や形態の建物が無秩序に建築されると、騒音・悪臭・日照問題など多くの弊害が現れてくるからです。
そこで、地形や交通の便など地域の状況にあった用途を定め、土地の効率的な利用を促し、秩序ある街づくりのために、建築物の用途や形態などの制限を定めています。これが用途制限といわれるものです。
用途地域と主な用途制限の内容を見ていきましょう。
(1)第1種低層住居専用地域……低層住宅の良好な環境を守るための地域です。住宅のほか、小規模なお店や事務所を兼ねた住宅、小中学校などが建てられます。
(2)第2種低層住居専用地域……主に低層住宅の良好な環境を守るための地域です。住宅のほか、小中学校や床面積150平方メートルまでのお店などが建てられます。
(3)第1種中高層住居専用地域……中高層住宅の良好な環境を守るための地域です。住宅のほか、病院、大学、床面積500平方メートルまでのお店などが建てられます。
(4)第2種中高層住居専用地域……主に中高層住宅の良好な環境を守るための地域です。住宅のほか、病院、大学、床面積1500平方メートルまでのお店や事務所などが建てられます。
(5)第1種住居地域……住居の環境を守るための地域です。住宅のほか、床面積3000平方メートルまでの店舗、事務所、ホテルなどが建てられます。
(6)第2種住居地域……主に住居の環境を守るための地域です。住宅のほか、店舗、事務所、ホテル、パチンコ屋、カラオケボックスなどが建てられます。
(7)準住居地域……道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居の環境を保護する地域です。
(8)近隣商業地域……近くの住民が日用品の買い物をするための店舗など、商業業務の利便の増進を図る地域です。
(9)商業地域……銀行、映画館、飲食店、百貨店、事務所などの商業業務の利便の増進を図る地域です。
(10)準工業地域……主に軽工業の工場など、環境悪化のおそれのない工業の利便を図る地域です。
(11)工業地域……主として工業の利便増進を図る地域で、どんな工場でも建てられます。住宅やお店は建てられますが、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
(12)工業専用地域……専ら工業の利便増進を図る地域です。どんな工場でも建てられます。住宅、お店、学校、病院、ホテルなどは建てられません。
このように、用途地域ごとに建築可能な建物は厳しく制限されていますから、用途地域の指定されている土地を購入しようとするときは、事前の調査が必要です。
不動産の広告を見る場合は、まずこの用途地域がどこに属するのかを注意しましょう。用途地域が不明であれば、各地域の役所にある「都市計画課・建築担当課」などの窓口ですぐに教えてくれます。
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公正競争規約が改正 |
本連載の第6回、7回(05年10月号、11月号)で不動産の表示に関する公正競争規約について、いろいろな基準をお話ししましたが、その公正競争規約がこのほど改正され、1月4日から施行されることになりました。時代の変化に対応して、過剰な規制の整理、新たな問題に対応する規定を追加・整備することが目的です。
そこで今回は、改正公正競争規約について整理してみました。
用途地域は12種類に分類して制限
▼広告に必要な表示事項
「予告広告をした後に必ず本広告をしなければならないこと」とされました。これは、予告広告を行った時点で売買契約を行い、本契約をしないものが見受けられたので、予告広告の意義を明確にしたものです。
▼デメリットの明示義務
物件のデメリットなどの明示義務について、最近の表示の実態などを踏まえて、次の3点が追加されました。
(1)路地状部分の面積が土地面積のおおむね30%以上を占めるときは、その旨を明示すること
(2)建築工事を相当の期間にわたり中断していた新築分譲マンションなどについては、その工事中断期間を明示すること。
(3)国土法による許可または事前届出を必要とする場合は、その旨を明示すること。
▼特定用語の使用基準
宅建業者は、「完売」など著しく人気が高く、売行きがよいという印象を与える用語を広告に表示するときは、それぞれ表示内容を裏付ける合理的な根拠を示す資料を現に有している場合を除き、使用してはならないとされました。
▼不当な二重価格表示の禁止
旧公正競争規約では、価格の有利誤認の有無を問わず、不当な二重価格表示は原則として禁止していましたが、これを緩和して、事実に相違する広告表示や、実際のものや他の宅建業者に係るものよりも有利であると誤認されるおそれのある二重価格表示のみが禁止されることになりました。
▼その他の不当表示の禁止
最近の表示実態を考慮して、次の8事項を不当表示として追加し、禁止することになりました。
(1)建築基準法上の居室に該当しない部屋について、居室であると誤認されるおそれのある表示。
(2)土地の地目または形質、地勢、土壌などについて、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示。
(3)土壌の改良の内容または程度について、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示。
(4)温泉源から採取した温泉を給湯管によらずに供給するものについて、給湯管によるものであると誤認されるおそれのある表示。
(5)物件からの眺望・景観、または物件を中心とした眺望・景観を示す写真、絵図、コンピュータグラフィックスによる表示で、事実に相違する表示または実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示。
(6)物件の価格、賃料またはその他の費用について、実際のものよりも安いと誤認されるおそれのある表示。
(7)物件の引渡しにおいて、頭金などの支払いを条件としている場合、頭金の額を下回る手付金などの支払いのみで、物件の引渡しを受けることができるものであると誤認されるおそれのある表示。
▼物件の内容・取引条件等に係る表示基準
物件内容・取引条件などに係る表示基準が、より具体的な基準に変更されました。主な変更点は次のとおりです。
(1)「物件の所在地」について、県庁所在地、政令指定都市および特別区に所在する物件については、都道府県名を省略して表示することができるとされました。
また、個人の所有する中古住宅などの広告では、個人情報保護法との関係から地番を表示しないこととされました。
(2)「交通の利便」について、まず公共交通機関の利用が通例であるときは、鉄道などの最寄駅からの徒歩所要時間を表示すること、その最寄駅などからバスを利用するときには、駅名、バスの所要時間およびバス停からの徒歩所要時間を表示すること、さらに、バスのみを利用するときは、バス停の名称とそこまでの徒歩所要時間を表示することとされました。
(3)「面積」に関する規定のうち、「居室等の広さを畳数で表す場合の表示基準」について、旧規定では1畳当たりの面積が1・5平方b未満の中古住宅においては、1畳当たりの面積を明らかにせずに、単に「6畳間」などと表示すればよいと解釈されるおそれがあったので、改めて「1畳当たりの面積が1・62平方bに満たないものについては、その旨および畳1枚当たりの広さを明示して表示することができる」こととされました。
温泉で新規定
「設備・施設等」に関する規定のうち、「温泉」に関して新たに規定が設けられました。
内容は▽温泉に加温したもの▽温泉に加水したもの▽温泉源から採取した温泉を給湯管を用いず、運び湯により供給する場合▽共同浴場を設置する場合において、循環装置または循環ろ過装置を使用する場合──は、それぞれその旨を表示しなければならないというものです。これは、最近都心型マンションにおいても温泉付であることをセールスポイントにしているものが増えていますが、他方、温泉旅館などで源泉から湧出したお湯に加温したり、お湯を循環させたりしているのに、これを隠蔽した事件が多発したので、その旨を明示することとされたものです。
以上、公正競争規約の主な変更点を取り上げましたが、その内容を見ると、より消費者の保護が要請される今日的でタイムリーな改正であるといえるでしょう。
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開発行為と許可制度 |
【不動産価格】
一般に物の価格は一つしかありません。市場価格として現に取引される価格です。しかし、不動産である土地にはいくつかの「価格」があります。「市場価格」「公示価格」「路線価」「基準価格」「固定資産税評価額」などです。
その違いを見ていくと、「市場価格」は、現在取引されている価格です。しかし、バブル期の4分の1という場所もあり、底を打っているとはいっても一部にすぎず、実際に上昇に向かうとはまだまだ言いきれないでしょう。
「公示価格」は、地価公示法に基づき、国土交通省の土地鑑定委員会が地域の標準的な地点を選定し、毎年1月1日時点の標準地の1平方m当たりの正常な価格を公表するもので、公共事業用地の取得価格などを決める際の指標として利用されます。
「路線価」は、相続税や贈与税を算出するときの基準になるもので、主要な道路に面した土地の税務上の評価額を1平方m当たりの単価で表したものをいいます。路線価は公示価格の8割を基準として決められています。
「基準価格」は国土利用計画法の規定に基づいて、知事が毎年7月1日時点の基準地の標準価格を判定するもので、土地取引の価格規制を行う場合の審査において、地価公示価格とともに相当の価格を判断する際の規準として使用されています。
「固定資産税評価額」は原則として固定資産税の課税標準となる金額であり、具体的には土地課税台帳、家屋課税台帳、償却資産課税台帳に登録されている金額をいいます。土地については3年に一度評価替え(評価額の見直し)が行われ、前年の公示価格及び鑑定評価に基づく価格の7割程度が一応の目安とされています。
このように、不動産の価格は多様で、それぞれ使用目的ごとに定められています。
さて、今回は「開発許可制度」についての話です。皆さんは、この言葉をよく聞くことと思いますが、この制度は街づくりにおいて、非常に重要な役割を果たしています。
本来、街づくりである都市計画(この場合の都市というのは、大都会だけを指しているのではありません。人の住んでいる場所を指します)は、健康で文化的な都市生活および機能的な都市活動を確保することを目的とし、そのために農林漁業との健全な調和を図り、適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られなければなりません。
スプロール現象防止
例えば、あるデベロッパーが都市郊外に分譲住宅団地をつくることを考えてみます。もし、その区域がライフライン(道路・上下水道・ガス・電気など)も完備していない場所であるとすると、それはとても機能的な街とはいえません。また、人口が急激に増えることが予測され、その結果、学校などの公共施設が不足し対処できなくなることも目に見えています。
このような何の計画性もないものが点々とつくられると、それはまさに乱開発そのものであり(ちなみにこれをスプロール現象といいます)、このような行為には歯止めがかけられなければなりません。
そこで、都市近郊における無秩序な市街化を防止し、都市の水準を確保するため、開発事業を行うには一定の区域ごとに一定の許可基準を設けて、それに該当する場合には知事の許可が必要であるとしたのが、開発許可の制度です。
根拠は都市計画法
街づくりの基本となる法律は「都市計画法」です。そこには「都市計画区域・準都市計画区域・都市計画区域および準都市計画区域外の区域で、一定規模の開発行為を行う場合には、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければならない」と定められています。これをもう少し詳しく見てみると、「開発行為」というのは建築物を建築するため、またコンクリートなどの各種プラント、ゴルフコース、1ha以上の 野球場・遊園地・動物園などの特定工作物を建設することを目的として行う、土地の区画形質の変更のことをいいます。この「土地の区画形質の変更」とは、簡単にいうと土地の造成のことで、土を盛ったり、山を削ったりする行為です。では、これらの開発行為をする場合にはすべて許可がいるのかというと、そうではなく、一定の規模以上の開発行為をする場合に必要なのです。その規模は区域によって異なり、開発許可が必要な規模は次のとおりとなっています。
▼都市計画区域=(1)市街化区域は1000平方m以上(2)市街化調整区域は規模にかかわらずすべて必要(3)市街化区域と市街化調整区域に区分されていない区域は3000平方m以上
▼準都市計画区域=3000平方m以上
▼都市計画区域および準都市計画区域以外の区域=1万平方m以上
そして、この規模の開発行為であっても(1)市街化区域以外の区域において、農家の住宅・農業用施設などの建築を目的とする開発行為(2)医療施設など一定の公益施設の建築を目的とする開発行為(3)国や都道府県などが行う開発行為C災害応急措置としての開発行為──などの場合には例外として許可は不要です。
開発行為の許可申請
これら開発許可を受けようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、一定の事項を記載した申請書(開発許可申請書)を都道府県知事に提出しなければなりません。その申請を受けた都道府県知事は、都市計画法に規定される「許可基準」に照らし合わせ、申請の内容や手続きが法令に違反していないときは開発許可をします。それによって初めて、土地の造成工事が可能なのです。
土地を所有しており、そこに建物を建てようとすると、まず、その土地の造成工事が必要である場合には、開発許可を受け、実際に建物を建てる段階でも、容積率や建ぺい率の制限があり、建物の種類も地域によって用途の制限を受けるので、これに違反しないようにし、その他諸々の基準をクリアした上で事前に建築確認を受けなければなりません。
街づくりの中で、宅地や建物の安全などを考えるとやむを得ないのでしょうが、まさに許認可国家の面目躍如というところでしょうか。
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農地の売買・転用 |
今回のテーマは「農地」です。
日本人は元来農耕民族です。基本的には、営々と自給自足で暮らしを営んできました。しかし、今日の日本は、輸入で食料をまかなうようになり、食料の自給率はかろうじて30%を保っている状況です。いまや、日本と戦争をするにはミサイルはいらない、食料の輸入を断てばよい、といわれるまでになっています。
そこで、政府もこれ以上食料の自給率を下げるわけにはいかないので、農作物を生産する農地については、これを宅地にしたりすることを非常に厳しく規制しています。
農地の定義
不動産登記法上、土地の利用目的である用途を分類する地目は全部で21種類あります。列挙しますと、田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼(ちしょう)、山林、牧場、原野、墓地、境内地(けいだいち)、運河用地、水道用地、用悪水路、ため池、堤、井溝、保安林、公衆用道路、公園、雑種地に分類されます。
しかしそこには、いわゆる農地という地目はありません。では、農地とはどのような土地をいうのでしょうか。農地法という法律では、「農地とは、耕作の目的に供される土地をいう」と規定されています。この場合の「耕作」とは、土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することをいうと解されています。分かりやすく言うと、人が土地を耕して整地をし、そこに種を蒔き、潅漑をして肥料をやり、除草をしたりしている、実際に作物が耕作されている土地を言います。
現況で判断
このような土地であれば、田や畑はもちろんのこと果樹園なども農地に該当します。また、国の減反政策に協力して米を作っていない休耕田などのように、一時的に耕作されていない土地も農地です。休耕地であっても、耕耘機やトラクターなどで耕作をしようと思えばいつでも耕作できるような土地も農地です。
しかし、一時的とはいえない長期の休耕地や、耕作が放棄されているような土地は農地とはいえません。
このように、農地法では土地の現況に着目し、たとえ、土地登記簿上の地目が山林、宅地など農地以外のものになっていても、現況が農地として利用されていれば、農地法の規制などを受けることになります。
本来、登記簿に記載された地目と、現況の地目とは一致していることが望ましいのですが、実際には現況が宅地であっても、登記簿上は畑や山林のままになっている土地が数多くあります。
ちなみに、土地の鑑定評価をする場合や、課税についても、あくまでも現況により判断されます。
売買は許可必要
それでは、次のようなケースを考えてみましょう。
仮に自分が農地を所有しているとします。しかし、高齢でもあり農業を続けるのも大変になってきたので、農地の一部を近所の農家のAさんに売ろうと考えています。農地を農地のまま売却したいのですが、その場合、一般の宅地のように、売買契約を締結して、所有名義をAさんに移転することは自由にできるでしょうか。
答えはノーです。農地を売買するには、農地法の規定により農業委員会(一定の場合には都道府県知事)の許可を受けなければならないことになっています。そして、無許可で売買契約をした場合には、売買の効力は生じませんし、移転登記もできません。それだけではなく、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることになります。
つまりは、自分の土地であっても自由に処分することはできないということなのです。農地を買い受けた者が、そのままその農地の耕作を継続し、生産性が低下することがないよう一定の基準を設け、これに該当しなければ農地の権利を移転することは認めないという趣旨なのです。
ちなみに、農地の売買については、農地法第3条に規定されているので、一般に「3条許可」といいます。
転用も許可必要
次は、こういうケースです。Bさんは広い農地を持っています。そのBさんにはサラリーマンの息子がいて、近々結婚することが決まったので畑の一部をつぶして宅地にし、家を建ててやることにしました。農地はBさんのものですから、その農地をどのように利用してもBさんの勝手であり、宅地にすることも自由にできそうに思えますね。
ところが、これも答えはノーです。農地を農地以外に転用することは自由にはできません。これについては、農地法第4条に規定があり、同一事業の目的で、4f(=4万平方b。ちみなに東京ドームの広さは4万6755平方bですから、おおよその広さの見当はつくでしょう)を超える農地を宅地などの農地以外のものにする場合(これを転用といいます)には、農林水産大臣の許可を受けなければなりません。4f以下の転用の場合でも、原則として都道府県知事の許可を受けなければなりません。
このように、自己転用であっても農地の生産性が低下することになる場合には、厳しく規制されています。ちなみに、この許可は「4条許可」と呼んでいます。
ただし、4条許可には例外的に、転用しようとする農地が市街化区域内にあるのであれば、あらかじめ農業委員会へ届け出るだけで足り、許可を受ける必要はありません。この場合、市街化区域内においては、農地よりも住宅地などにするほうが、土地の有効利用という観点からは望ましいといえるからです。
転用目的の移転
さらにこんどは、農地を転用することを目的として第三者に売却するというケースはどうでしょうか。
例えば、建売住宅を建設して販売する不動産会社に農地を売るような場合です。これは、前記の「3条」と「4条」が同時に行われるケースになりますから、やはり都道府県知事(4fを超える場合には農林水産大臣) の許可を受けなければなりません。
ただし、転用のみの場合と同様に、市街化区域内の農地あれば農業委員会への事前の届出だけで足ります。この規制は農地法第5条に規定されていますから「5条許可」といいます。
公共利益で制限
以上のように、農地の転用を規制する農地法4条、5条は許可制度になっていますが、その許可基準は、市街地に近接した農地や生産力の低い農地などから順次転用されるよう誘導するため、農地を区分し、それに応じて転用の可否を判断することになっています。
少し難しい言い方をすると、農地という土地を所有している場合には、本来有している所有権の処分の自由は、公共の利益を理由に制限されるということです。
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マンションは管理を買え |
1955(昭和30)年頃から普及し始めたマンションは、現在その戸数は400万戸を超え、居住人口も1000万人を超えています。居住形態としてのマンションの増加は、おどろくほどのスピードで進行しています。ある調査データによると、マンションに住んでいる人の永住意識は、99年が39%であったのに対し、03年は48%にも達しています。
このように、マンションを「終の棲家」として考えるのであれば、簡単に買い替えるわけにはいきませんから、購入時にしっかり物件を確認し、後になって悔いのないようにしなければなりません。
そこで今回は、マンションの購入時に必ずチェックしなければならないポイントについて見てみましょう。紙面が限られているので、すべての項目について記載するのは無理ですが、最低限これだけは必要だという項目を挙げましょう。
(1)価格の妥当性の判断
例えば、購入前に数棟のマンションの価格を比較しようとする場合、総額で高いマンションか低いマンションかを判断しないで、必ず1平方b当たりの単価で比較することです。
その単価と使用されている材料や備品のグレードを加味して、総合的に判断します。
(2)管理がしっかりしているか否か
「マンションは管理を買え」とはよく言われることです。どういう意味なのかというと、どんなに設備やつくりがよく、例え″億ション″といわれるマンションであっても、管理が行き届いていないマンションは資産としての価値は低下していく一方です。また、住みやすいマンションとは言えないということです。マンションの管理については、分譲時に売主から知らされる規約がどのように定められているかにより、ある程度判断することができます。
(3)規約内容のチェックポイント
▼管理会社はどこか……その管理会社の実績を調べる。
▼管理費、修繕積立金の額はいくらか……特に修繕積立金の額は、ある程度高くても将来のマンションの維持保全を考えるとやむを得ないでしょう。
▼長期修繕計画はどうなっているか……マンションを資産と考える場合には必須のチェック事項です。
(4)ペットの飼育
現在では、ペットを飼育することができるマンションも増えていますが、まだまだ少数派です。入居してから、トラブルの大きな原因となりますので、ペットと暮らしたい人は事前調査が必要です。
(5)遮音性能
マンションでの大きな問題に音があります。特に上階の振動音を完全に防止することは不可能に近く、避けられない問題といえます。音は、気になり出すときりがなく、ピアノの音が原因で殺人事件が起こるくらいですから、音に敏感な人は特に遮音性に優れたマンションを選びましょう。振動音も設計方法により、今はかなり軽減することができます。そのチェックポイントは、床スラブ(床のコンクリート)の厚さが最低でも20aはあり、2重床となっているか否かです。分譲業者に設計図面などを見せてもらい、事前に必ずチェックしましょう。
(6)資料はできるだけ取り寄せ、モデルルームは必ず見ておく
手に入る資料や見ることのできる資料はできるだけ読んでおきましょう。今はその資料もインターネットにより検索する時代ですが、それだけで終わらず、資料を読んだ後は、必ずモデルルームに足を運びましょう。そのときに、資料を読んだ知識がものをいいます。設備についての質問などを係員にすることができますし、きれいに飾られたモデルルームに惑わされ、マンション業者の口車に乗せられて購入を決めてしまうこともなくなるはずです。
(7)重要事項説明書は必ずすべての項目を確認
宅建業者には、物件を売却するときに買い主に対して、「重要事項説明」という一定事項を説明する義務があります。この重要事項説明は、いわばその物件についてのカタログと考えればよいものです。物件の購入者がその物件について、法的に受ける規制や、物件の設備状況などが記載されています。マンションであると、具体的には「敷地に関する権利」、駐車場やバルコニーなどの「専用使用権についての規約の定め」「管理委託先の氏名・住所」などです。これらにより、買い主は物件についてのさまざまな事項を知ることができます。そこで、宅建主任者から形式的にではなく、その内容のきちんとした説明を受けることが必要です。
戸建住宅であれ、マンションであれ、苦労して頭金をつくり、何十年というローンを組んで買う大きな資産に違いはありません。一度購入すると容易に買い替える訳にはいきませんから、欠陥マンションをつかまぬよう、慎重には慎重を期しましょう。これは自己責任の世界です。
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有限のまま?株式にする? 新会社法施行1 |
今回は不動産関連の話題からすこし外れるのですが、5月1日から施行される新会社法を2回にわたって取り上げたいと思います。
建築・不動産関連業界には、小規模な有限会社が多く存在しています。また、個人で独立、起業する場合でも、これまでは有限会社でスタートすることが多かったと思われますが、新会社法施行後は、有限会社を設立することはできなくなります。それでは、いま現在の有限会社はどうなるのか、何が変わるのか、などについてまとめてみたいと思います。
新会社法が施行
従来、一般的に「会社法」という言われかたがされていましたが、本来「会社法」という単独の法律はありません。商法に規定されていた株式会社・合名会社・合資会社関連の規定および、有限会社法に規定されている有限会社の規定を総称して「会社法」といっていました。
しかし、会社法は長年、主要部分が改正されてこなかったため、法律の想定と現実の運用とに大きな乖離(かいり)がありました。例えば、法律の制定当時、株式会社は大規模の公開会社、有限会社は小規模な同族会社という使い分けが想定されていましたが、現実には、株式会社の大半を小規模な同族会社が占めているといわれ、現在の法制では、企業のあり方の変化や国際化という最近の社会経済情勢の変化に対応することが困難になってきていました。
そこで、最低資本金制度、機関設計、合併による組織再編など、会社に係る各種の制度の在り方について、体系的かつ抜本的な見直しを行う必要が生じ、商法の会社編、有限会社法などの関連各規定を統合し、現代的な表記に改めた上で、分かりやすく再編成した新法典として「新会社法」を創設したのです。
その新会社法は2005年6月29日に公布され、今年の5月1日から施行されることになりました。
特例有限会社
新会社法の施行後、新たに有限会社を設立することはできなくなります。
そのため、現在設立されている有限会社は、そのまま有限会社として存続するか、それとも株式会社へ移行するか、どちらかを選択することになります。
そのまま存続する場合、新会社法施行後は「特例有限会社」という名の株式会社として存続することになります。社名は変わることなく、依然として○○有限会社のままです。そのために、定款の変更や登記申請など特別の手続は必要ありません。
「特例有限会社」の運用に関し、次の事項には従来の有限会社法の規定がそのまま認められます。
▽取締役には任期なし
▽決算公告の必要なし
▽会社の機関としては、株主総会+取締役、株主総会+取締役+監査役のいずれか
▽会計監査人は不要
▽株主総会の決議要件は総株主の半数以上であって、その株主議決権の4分の3以上
株式会社に移行
新会社法の施行時、すでに設立されている有限会社は、通常の株式会社へ移行することもできます。その場合、株式会社の最低資本金制度(1000万円)も撤廃されるので、資本金300万円のまま株式会社にすることができます。
その移行手続は、定款を変更して商号を「株式会社」という文字を用いたものに変更し、定款の変更の決議の日から、本店においては2週間以内に、有限会社の解散の登記と、商号変更後の株式会社についての設立の登記をする必要があります。
そのほか▽株式会社の最低資本金制度を撤廃▽会計参与制度を創設▽合同会社という新しい会社形態を規定──などが主な変更事項です。
最低資本金制度の撤廃や、合同会社という新しい会社形態を創設することにより、元手がなくても、有限責任会社のメリットを享受できるようにして、起業をしやすくしています。
このように、新会社法では、現代の経済情勢に合わせた改正が行われているのです。
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誰でも、お金がなくても 新会社法施行2 |
前回は新会社法成立の経緯と、特例有限会社についてお話ししました。今回は、新会社法の下で、新たに会社を設立する場合について見ていきましょう。
新会社法の施行により、今後は有限会社を設立することができなくなりますから、これから起業しようとする人は、株式会社を設立することになります。その株式会社の設立手続は今までに比べて非常に容易になっています。簡単にいうと、誰でも、お金がなくても、ともかく会社をつくることができるということです。
最低資本金制度廃止
まず第一に、最低資本金制度が廃止されます。これまで、債権者保護などの観点から、会社の信用力を推し量るということを理由に最低資本金制度が設けられており、株式会社の設立には最低1000万円の資本金が必要でした。
しかし、これが創業の障害となっており、インターネットを利用したビジネスなど少額で容易に起業することができるようにするため、新会社法においては、この最低資本金制度自体が廃止されることになりました。資本金の額は自分で自由に決めることができるので、極端な話、1円でも会社を設立することが可能なのです。
実は、2003年2月からすでに「最低資本金規制特例制度」として、いわゆる「1円会社」といわれる制度があり、これにより設立された会社は約2万7000社、うち実際に1円で設立された会社は1200社にのぼっています。
今後は特例ではなく、誰でもつくることができます。
取締役は1人でもOK
従来の株式会社は、取締役は3人以上で、取締役会を設けなければならず、監査役も1人以上必要であるというのが基本形でした。
今後は、設立する会社が「株式譲渡制限会社」(会社の株式を譲渡するには、取締役会または株主総会の承認を必要とする規定が設けられている会社であり、中小企業のほとんどがこの形態です)であるときは、この規定が大幅に緩和されます。従来と比べると、次のようなメリットがあります。
▼取締役会を置かなくてよい(取締役は1人でよいから経費が削減できる)。
▼取締役は2年、監査役は4年とされている任期を最長10年まで伸張することができる(変更登記を頻繁にする必要がないため、登記費用を節減することができる)。
▼株主からの請求がない限り、株券を発行しなくてもよい(株券の印刷代などが不要になる)。
類似商号制度の廃止
これまで会社の商号については、他人が登記した商号と同一・類似の商号の場合、同一市区町村内において、同一の営業のために登記することができませんでしたが、企業活動の広範化や登記手続の簡素化から、この「類似商号」の規制が廃止されます。
これにより、定款をつくる段階での類似商号調査に要する手間と費用が不要になります。その結果、同時にその類似の判断基準になっていた「会社の目的」についても緩和され、例えば、商業、製造業、サービス業などという具体性が欠ける包括的な目的であっても登記することができるようになります。
払込金保管証明制度の一部廃止
発起設立の方法により会社をつくるときには、発起人は金融機関に株式の発行価額の全額を払い込み、その保管証明書が必要でした。そのため設立登記が完了するまで、払込金を引き出せませんでしたが、今後は払込金保管証明書の代わりに残高証明書の提出でよいとされますから、一度払い込みがあれば設立登記前でも出資金を引き出し、活用することが可能になります。
設立費用の削減
これら設立手続の簡素化は、その設立費用の軽減にもなります。従来の株式会社の設立費用の概算は、資本金1000万円+印紙税4万円+定款認証費用5万円+払込金保管証明書発行手数料約2万5000円+登録免許税15万円として合計約1027万円を要していました(資本金1000万円の例)。新会社法では、資本金1円+印紙税4万円+定款認証費用5万円+登録免許税15万円で、合計約24万円で足りることになります(資本金1円の例)。
このようなことから、06年以降は、それまで個人企業であったものが株式会社化するなど、多くの起業や創業が予測されます。ただ、現実的には会社を経営していくにはある程度のお金がなければなりません。会社は例え1円でできても、必要な資金なくして会社経営はできません。むろん、パソコンとコピーと電話があれば始められる会社と、当初から設備投資の必要な業種の会社とではおのずと必要な資金は異なりますが、会社設立後の運転資金や資金調達のことを考慮して、最初の資本金の額を決める必要があるでしょう。設立後に金融機関から融資を受ける際などに、会社の資本金がいくらあるのか、また決算書の提出などを求められることもありますから、これらの点を経営戦略上総合的に検討して資本金を積むべきでしょう。スタート時点で1円で会社を設立して、金融機関から1000万円を借りようとするのは本末転倒ですから。
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クーリング・オフで契約解除 |
土地であれ建物であれ、不動産は高額な財産です。通常であれば、人はせいぜい生涯に一度、戸建であるかマンションであるかは別として、不動産を買うことができるかどうかというのが一般的なところでしょう。
しかし、そのような大事な取引であるにもかかわらず、もし悪徳不動産業者によってだまされて契約してしまった場合には、取り返しの付かないことになってしまいます。今でも、現地見学会などと称し、温泉に招待するなどして消費者の冷静な判断力を奪った状況で行われる原野商法などと呼ばれる契約は後を絶ちません。
そこで、宅地建物取引業法という法律では、このような状況下でなされた売買契約は無条件で解除することができるという規定をつくり、一般消費者たる買主を保護しようとしています。これをクーリング・オフ制度といいますが、今回はこれについてのお話です。
制度の概略
クーリング・オフ制度を簡単に言うと、消費者が宅建業者から不動産を売買により取得した場合に、その契約が例えば喫茶店のような場所で行われたときは、宅建業者のいいなりに契約がなされるおそれがあるため、このような通常契約をする場所とはいえない場所で締結した売買契約は、白紙撤回することができるとする制度です。
今日いろいろな面で消費者の利益保護がいわれており、「消費者契約法」なども近時成立していますが、不動産は財産的価値が高いため、特に「宅地建物取引業法」の中で消費者の利益保護の観点から種々の規定が定められ、その典型規定がクーリング・オフ制度です。
規定内容の詳細
この規定は正確に言うと、宅地建物取引業法第37条の2に「事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等」として規定されており、宅建業者が「自ら売主」として「宅建業者以外の一般人」との間で、宅地または建物の売買契約を行った場合に、一定の場所(宅建業者の本店や支店など)以外の場所で、「買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主は、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除を行うことができる」とするものです。
クーリング・オフができるかできないかは申込み、または契約が行われた場所で判断されます。いくつか例を挙げてみましょう。
▼宅建業者が申し出た場合の買主の自宅または勤務先……○クーリング・オフできる
▼買主が申し出た場合の買主の自宅……×クーリング・オフできない
▼テント張りの現地案内所……○
▼買主が申し出た場合の喫茶店、取引銀行……○
▼宅建業者の事務所
……×
制度の例外
以上が原則ですが、次の場合には、本来クーリング・オフをすることができる場所で契約をしても、クーリング・オフすることはできなくなりますので注意が必要です。
「宅建業者から、クーリング・オフできる旨及びその方法を書面で知らされた日から、起算して、8日を経過したとき」「物件の引渡を受け、かつ代金の全額を支払ったとき」には、もはや契約を解除することはできません。
◆ ◆ ◆
本来、不動産の売買に適用される法律は「民法」であり、民法の規定によれば、いったん成立した売買契約は、相手方が契約違反をしたなどの理由がなければ契約を解除することはできないのが原則です。
しかし、一般消費者の保護を図るため、一定の場合、無条件で契約を完全白紙撤回することができ、さらにその場合の宅建業者は、相手方に違約金や損害賠償を請求することもできず、また、宅建業法で規定するクーリング・オフの規定より買主である消費者に不利となる特約は無効とされるクーリング・オフの規定は、最も強力な消費者の保護の規定といえましょう。
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「敷引」特約は無効!? |
建物の賃貸借契約の終了によって賃借人が建物を明け渡す際に、建物の損傷の有無にかかわらず敷金の一部を差し引く「敷引」特約は、特に関西地区においては慣行的に行われています。
しかし、近時その特約は不合理な特約であるとして裁判所で争われているケースが増えています。
神戸地方裁判所で2005年7月14日に言い渡された保証金返還控訴事件の判決において、裁判所は、賃貸住宅の賃貸借契約は消費者契約であるから「消費者契約法」の適用があるとした上で、実情を総合的に判断し、この事件においては、消費者契約法第10条の適用により無効との判決を下しました。
消費者保護法としての消費者契約法は、新しい法律ですが、この法律が適用されるケースとして注目される判決なので、今回は内容を詳しく取り上げてみます。
★ ★ ★
【事実関係】
1 Aは不動産の賃貸借および売買の媒介などを業とする会社である。
2 AはBに対し、03年7月13日に建物を次のとおりの約定で賃貸し、引渡した。
(1)賃貸借期間は03年8月3日〜05年8月2日
(2)賃料は1カ月当たり5万6000円
(3)共益費は1カ月当たり6000円
(4)貸主および借主双方に異議がなければ、本契約は同一条件で自動的に更新される。
(5)敷金の清算は、貸主に本物件の明渡しがあったときは、敷金を無利息で借主に返還する。ただし、賃料等の滞納分、原状回復費用の未払分および損害賠償費用について、当該債務の額を敷金から差し引くことができる。
3 BはAに対し、賃貸借契約締結の際、賃貸借契約終了時に敷引金として25万円を差し引いた残額の返還を受ける旨の合意(敷引特約)のもと、保証金として30万円を預け入れた。
4 Bは、本件賃貸借契約を解約し、Aに対し、04年2月末日、本件建物を明け渡した。
5 Aは、本件建物の明渡しを受けた際、Bに対し保証金30万円から本件敷引金25万円を差し引いた残額である5万円を返還した。
【借主Bの主張】
▼敷引金を差し引くことは、自然損耗の修繕費用を賃借人に負担させることになり、本来賃料でまかなわれるべき修繕費用を、退去時に二重に徴収することになるから、賃借人にとって不合理な負担というほかない。
▼敷引金は、公営住宅法、都市基盤整備公団法、住宅金融公庫法等に関する法律に違反するものとして、これらの法の適用のある賃貸住宅契約においては禁止されており、しかも、住宅金融公庫法違反においては罰則の適用まである。
【貸主Aの主張】
▼関西地方において、慣行として敷引特約が付されている賃貸借契約は多く存在し、消費者契約法施行後においても、このような慣行がなくなっていない。
▼本件物件のように単身者向け賃貸マンションの物件情報は、雑誌やインターネット、多数の仲介業者の店舗によって広く公開されており、賃料額と並んで敷引特約の有無や敷引金額も明記されているのが普通である。
【裁判所の判断】
本件敷引特約は消費者契約法第10条により無効であるか否かを次を根拠に判断した。
▼賃貸借契約は賃貸目的物の使用収益と賃料の支払が対価関係にあることを本質的な内容とするものであり、民法上、賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる旨の明文の規定は存しない。そうすると、民法において、賃借人が負担する金銭的な義務としては、賃料以外のものを予定していないものと解される
また、学説や判例の集積によっても敷引特約が確立されたものとして一般的に承認されているということはできない。したがって、賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる内容の本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比較し賃借人の義務を加重するものと認められる。
▼関西地区での不動産の賃貸借契約においては、敷金、保証金などの名目で一時金の授受が行われた際、賃貸借契約終了時に敷金から一定金額(敷引金)を返還しない旨の合意(敷引特約)がされることが多い。この敷引金の性質については一般的に貸借契約成立の謝礼・貸借目的物の自然損耗の修繕費用・賃貸借契約終了後の空室資料などと説明されているが、この性質から賃借人に本件敷引金を負担させることに正当な理由を見いだすことはできず一方的で不合理な負担を強いているものといわざるを得ない。
▼さらに、関西地区における不動産賃貸借において敷引特約が付されることが慣行となっていることからしても、賃借人の交渉努力によって敷引特約を締結しないとすることは困難であり、賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押しつけている状況にあるといっても過言ではない。
【結論】
以上で検討したところを総合考慮すると、本件敷引特約は、信義則に違反して賃借人の利益を一方的に害するものと認められる。したがって、本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比較し、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法第10条により無効である。
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このように、敷引特約という借主にとって負担を負うことになる特約を、消費者契約法により排除することができるとしたこの判決は、控訴審判決であり、先例として意味するところは非常に大きく、注目されるものです。
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管理組合規約(案)に注意 |
以前、紙面のQ&Aのコーナーで、マンションにおけるペットの飼育に関するトラブルについて書きましたが、その後も読者の方からさらにいくつかの相談を受けています。そこで、近時マンションのトラブルに関しての重要な判例が出ていることから、前回に引き続いて判例を詳しく紹介します。
マンションという居住形態は、特に都市圏においては戸建住宅よりも多く、居住人口も1000万人を超えています。そこでは、家族や他人との関係が希薄となりがちな生活の隙間を埋めるように、ペットを終生の共とする人が増えていることから、マンションにおけるペットをめぐるトラブルも多くなっているという現状があります。
そのような中で、最近、マンションにおけるペットに関するトラブルについて、東京地方裁判所から注目に値する判例が出されました。この判例は、マンションに居住後の隣人とのペット飼育についてのトラブルではなく、マンションを購入する前に、ペット飼育が禁止されているマンションであることの告知を受けなかったとして、マンションの購入者がマンションの販売業者に対し契約の取消、損害賠償を求めた事件です。
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【事件の概要】
(1)現在係争中のマンションに居住しているAとその妻Bは、マンションを購入すべく01年4月から9月にかけて、当時販売中の本件マンションについて、分譲業者Xの従業員Cから説明を受けたり、モデルルームを見学したりして、同年9月22日にXとの間で売買契約を締結した。
(2)その際、AはXの取引主任者であるDに飼育中の犬を見せ、本件マンションで飼うことができるかを尋ね、Dはこの程度の犬であれば問題はないと述べた。
(3)Aは、Xから本件マンションの管理組合規約(案)および管理委託契約書の交付を受け、それらについて承認書に署名捺印した。
(4)Aは02年3月に家族や犬とともに本件マンションに入居したが、ペットの飼育について管理組合で問題とされ、そのためAは、犬の飼育について、できる限りエレベーターに乗らないとか、隣家にアレルギーを持つ子供がいることから、室内にいてもなるべく窓を開けないなど、かなり周囲に気遣いを必要とする生活を余儀なくされている。
(5)そこで、AはXに対し、契約する前にペットの飼育に関して適切な説明を行わず、その結果、本件マンションでペットを飼育することができるものと誤信させて本件売買契約を締結させたとして、消費者契約法に基づく契約の取消と、損害賠償を求めて提訴した。
【判決の要旨】
東京地方裁判所は、Aの請求を認めず、その請求をいずれも棄却した。
【判決の理由】
(1)マンションの販売業者は、そのマンションの根本的な取り決めである管理組合規約の内容を説明する義務を負うが、Xはそのマンションの規約がまだ案の段階であったので、規約の案を説明した。その中で、ペットの飼育の可否を含む管理に関する事項について、規約内容を説明したものであるが、その規約は案の段階のものであり、正規のものが成立する段になって変更されることが予測され、販売業者の説明は、ペットの飼育の可否についての説明義務まで伴うものではない。実際にCは、ペットを飼育するに際し、他人に危害を加えたり、迷惑をかけないなど、ペット飼育に制約があることを説明したと認められる。
(2)さらに、Aは、Xの主任者DがA以外の者にペットの飼育は原則禁止されているとの説明をしたことから、Aの飼育が困難な状況になったと主張するが、それによって直ちに本件マンションの居住者の認識がペット飼育の可否に結びつくものではないから、Dが他の購入者に行った説明がAに対する不法行為に該当するとは言えない。
(3)Aにとって、マンションにおけるペットの飼育の可否は重要な事項であったといえるが、Dがペットの飼育に関してAに説明したのは、当時の管理組合規約の案によれば、危害を加えたり迷惑をかける行為に該当しない限りペットの飼育が可能であるというその管理組合規約の解釈を述べたにすぎない。また、その案である管理組合規約も、管理組合規約としては一般的なものである。さらに、Aが以前のマンションで管理上一定の制約を受けてペットを飼育していたことからすれば、XがAに対し特に不利益なことを述べたとは言えない。
(4)以上から裁判所は、消費者契約法による本件契約の取消を認めず、それに伴う損害賠償もまた、認めなかった。
【結論】
ペットの飼育に関するトラブルは、マンションにおけるトラブルの中でも「違法駐車」「騒音」に次いで多く、それも、そのほとんどが入居後の隣人相互間あるいは管理組合全体の問題です。
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本件のような売買契約時点における説明内容の不備が争われることはまれなことですが、この判例からいえることは、管理組合の規約については、売買契約を締結する前に、宅建業者は重要事項として十分に説明し、購入者もまた疑問点のないよう聞くことが必要であり、双方に誤解のないことが求められます。特にペットや騒音などについのトラブルは暴力沙汰に至ることもあるからです。
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傾斜地住宅の注意点 |
以古来、日本の国土は山地が多く、平地は全体の3割しかありません。山地であるということは、地形的特徴として必然的に斜面が多いということです。その昔は、山地に住む人は少なく、斜面の土地利用などは考える必要もありませんでしたが、人口の増加とともに生活の場所は平地から山間部へと延びはじめ、丘陵地や山地の開発が進んできました。しかし、斜面での土地利用を考える場合、斜面の崩壊、地すべりなどの土砂災害をはじめ、問題点は多くあります。具体的には「防災」「維持管理」「環境・生態系」「景観」などについてです。その中で、ここでは斜面と建築との関係を中心に考えてみましょう。
■ 建築する場所における法規制を知る
斜面を宅地造成して建物を建てようとする場合、まず必要なことは、その対象となる地域が、次のような法的に規制されている区域に該当していないかを知る必要があります。
▽宅地造成等規制法による「宅地造成規制区域」
▽急傾斜地災害防止法による「危険区域」
▽地すべり等防止法による「地すべり防止区域」
▽土砂災害防止法による「土石流危険渓流」
これらの法律により規制される区域は本来、建物を建てる土地としての条件が悪い場所であり、そのため、災害から生命や財産を保護することを目的として、法的な規制がされています。したがって、これらの規制区域内で造成工事や建築物の建築をするに際しては、一定の許可などが必要とされます。
■ 造成地の切土・盛土の安全性を確認する
盛土の場合は、造成後一定の時間を経なければ地盤が安定しません。転圧(ローラを転がして、圧して締め固めること)されているかどうかを確認します。地盤の強度に不安がある場合や、擁壁が古かったりして安全性が確認できないときは、杭基礎(杭を土中に打ち込み建物を支える方法)にするなどの対策が必要です。
■ 擁壁などの安全性を確認する
切土の場合は、地盤の強度もさることながら、のり面(斜面)に設置する擁壁の強度などに注意します。擁壁は、斜面が崩壊するのを防ぐ防護壁であり、重要な役割を担っていますから、その強度が十分でなければなりません。強度をチェックするポイントは次の通りです。
▽擁壁の水抜き穴が詰まることなく機能しているか
▽擁壁に亀裂がないか
▽造成地内の道路にたわみはないか
このチェックは、いつ盛土・切土が行われたかにかかわらず、しなければなりません。
■ 斜面と住宅をめぐる問題点
私たちは、長らく斜面を坂に造成して道路や住宅地として利用してきました。特に戦後、郊外の開発が進むにつれて、斜面を積極的に居住の場として利用するようになり、多くの住宅が斜面を造成した地盤に建てられています。
しかし一方で、最近では斜面と建築をめぐる問題も生じてきています。94年に建築基準法の容積率に関する法改正があり、地下室(建物の壁の3分の1が地下に接していれば地下室です)は容積率に算入しなくてもよいことになりました。
本来この規定は、一般住宅による土地の有効利用を目的とするものですが、一部のマンション分譲業者が傾斜地にこの規定を適用したマンションを建設し始めました。斜面の部分は地下室とされるので、斜面の下から基礎を立ち上げ、例えば地上3階地下5階、実質的には8階建という奇妙な階数のマンションが出現しています。奇妙なだけではなく、地下の部分は容積率算定の対象外の部分であるのに、販売可能な住戸であるという、常識外のことが頻発するようになりました。
また、このことは、周囲の景観を損ね、斜面の貴重な緑地を失わせることになるなど、周辺住民との摩擦が生ずる原因にもなっています。
そこで、いくつかの自治体では制度上の欠点の是正を図るため、独自に条例を制定して地盤面の設定方法を制限することで、この制度転用による地下室マンションの規制に乗りだしています。
■ 傾斜地の安全性に関する情報収集
傾斜地に家を建てたり、土地を購入したりする際、建築基準法や宅地造成規制法などの手続や許可がおりているからといって、それが即安全を保証してくれるわけではありません。より安全な場所に住もうと思うのであれば、自身で十分な資料を収集して確認しなければなりません。
例えば、洪水災害や土砂災害などについては、県の河川課や砂防課が管轄しており、そこで相談したり、公開されている「ハザードマップ」(自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したもので、予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲と被害程度、さらには避難経路、避難場所などの情報が図示されている)を手に入れることができます。
いずれにしても、傾斜地に家を建てたり、土地を購入したりする場所が、危険区域あるいはそれに近接する区域である場合は、きちんと専門家のアドバイスを受けることが大切です。
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ハートビル法の改正内容 |
今回はハートビル法についてのお話です。
この法律は、高齢者や身体障害者などが円滑に利用できる建築の促進を図ることを目的として、1994年に制定されたもので、正確には「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(略称でハートビル法)といいます。
65歳以上の人口が総人口に占める割合である高齢化率が7%〜14%の社会を「高齢化社会」、同14%超〜21%未満を「高齢社会」、同21%以上は「超高齢社会」と呼ばれますが、日本はすでに1970年に高齢化社会に、1994年の時点で高齢社会となり、2010年には超高齢社会となる見込みです。
ハートビル法は、このような本格的な高齢社会の到来を迎えて、高齢者や身体障害者などの方にとって住みよい住環境を整備し、積極的な社会参加を促すため、それらの方々が円滑に利用できるような良質な建築物をできるだけ多く建築させることを目的として制定された法律です。そして、この法律は2003年に現状にあうよう大改正されていますので、その内容を見ていきましょう
対象建築物
この法律は、不特定多数の者が利用する建築物(これを特定建築物といいます)を建築する者に対し、障害者などが円滑に建築物を利用できる措置を講ずることを努力義務として課すものです。劇場や銀行、ホテル、コンビニエンスストアなど、誰もが日常利用する建築物や、老人ホームや身体障害者福祉ホームなどのお年寄りや体の不自由な方が主に利用する建築物、事務所や学校、マンションなど、多くの方々が利用する建築物がその対象となります。
利用円滑化基準
ハートビル法では、最低限のバリアフリー化の基準である「利用円滑化基準」と、望ましいレベルを示す「利用円滑化誘導基準」が定められています。一定規模(延べ面積2000平方b)以上の特定建築物は、バリアフリー対応に係る利用円滑化基準に適合させなければならなくなります。ハートビル法は、建築基準関係規定となり、建築確認の中で審査されます。
利用円滑化基準とは最低限のレベルであり、例えば「車いすと人がすれ違える廊下の幅の確保」「車いす用のトイレがひとつはある」「目の不自由な方も利用しやすいエレベータがある」などが具体的基準です。これが利用円滑化誘導基準となると、望ましいレベルとして「車いす同士がすれ違える廊下の幅の確保」「車いす用のトイレが必要な階にある」「建物の面積に関わらずエレベータがある」などとなります。
計画の認定
利用円滑化誘導基準を満たす建築物の建築主は、所管行政庁の認定を受けることができます。認定を受けた場合、建築主の負担を軽くするために、つぎのようなメリットがあります。
■補助制度
美術館、文化ホール、地下鉄の出入口などの公益的な施設を含む建築物については、その施設に至る廊下、階段、エレベータなどの移動システムや、これらに付随するトイレなどの整備費の一部が補助されます。
■低利融資
日本政策投資銀行から低利の融資が受けられます。また認定を受けていない場合でも、一定の配慮がなされれば、低利の融資が受けられます
■税制上の特例措置
税制上の特例措置として、昇降機を設けた延べ面積2000平方b以上の認定建築物(新築、増築、改築)については所得税、法人税の割増償却(10%、5年間)を可能にしています。
■容積率の特例
お年寄りや車いすの方などに利用しやすくするためには、トイレや廊下などの面積が増えます。法律では延べ面積の10分の1を限度に、容積率の算定に際して延べ面積に不参入とすることができます。
■確認手数料の免除
ハートビル法の認定と建築基準法による確認申請を同時に行った場合は、確認手数料が無料になります(民間の指定確認検査機関に確認申請を提出する場合は、この制度を利用することができません)。
東京都の取組み
03年4月に施行された改正ハートビル法は、地域の実状に応じたきめ細かい取組みを可能とするため、地方公共団体による条例の制定を可能にしました。東京都ではこれを受けて、次のようなハートビル条例を制定しています。
▽ハートビル法で定める特別特定建築物に、学校、共同住宅、保育所などの社会福祉施設、運動施設、料理店が加えられました。
また、対象規模については以下に掲げる考え方に基づき、ハートビル法で定める規模(延べ面積の合計2000平方b以上)よりも引き下げています。
▽学校、病院、官公署、社会福祉施設などのように、公共公益性が高く、不特定多数の人が利用する建物は、すべての規模が対象とされます。
▽物品販売店舗、サービス店舗、飲食店などのように、生活に身近で、不特定多数の人が利用する建物は、500平方b以上が対象とされます。
▽劇場、映画館、集会場、展示場などのように、不特定多数の人が利用する建物は、1000平方b以上が対象とされます。
▽共同住宅は、多数の人が利用し、高齢者などへの対応が必要であることから、2000平方b以上が対象とされます。
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最近、駅でエスカレータやエレベータの設置工事がなされたり、商業ビルでも車いすで利用することのできる大きなトイレが設置されたりなどしていますが、これらはすべてハートビル法の規定の適用を受けて実施されているものです。自分がその立場に立ってみると、それらの必要性と有り難さが分かってくるものですが、ビル(施設)だけでなく、心のハートも高齢者や身体障害者などの方に優しくありたいものです。
(一部の記述は国土交通省のパンフレットなどを参照)
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区画整理のメリット |
今回は「土地区画整理」についてのお話です。
駅前の再開発や、古くからほとんど手が加えられてこなかった地域が開発されるケースがよくあります。これらの地域のほとんどは、昔からの建築物が秩序なく立ち並ぶ街であり、交通の便が悪く、もし火災や地震が起こった場合に避難が難しく、道幅も狭く、救急車や消防車が現場に入れないような、都市防災上とても危険な状態にあるといえます。このような状態を改善して快適な街にするために、不整形な土地の形状を整え、道路、公園、広場、ガス、上下水道などの必要な施設を総合的に整備するとともに、個々の宅地を整然と区画し、土地を最も利用しやすいようにする事業として土地区画整理事業があります。
例えば、市町村が土地区画整理を実施する場合は、あらかじめ土地の所有者などから意見を聴き、街づくりの計画を定めます。その計画に沿って、区画整理を実施する一定の区域を定め、土地の所有者から公平に少しずつ土地を提供してもらい(これを減歩[げんぷ]といいます)、その土地を道路や公園などの公共施設用地に充てたり、面的な広がりを持った広い地域にわたって一括して整備します。
さらに、土地の利用価値を高めるため、残りの土地の形を整理します。その結果、工事完了後、最終的には従前の土地とは別の土地が割り当てられる(これを換地といいます)ことがあります。土地区画整理にはこのような手段が用いられ実施される事業です(図のイメージを参照)。

ちなみに、開発事業の一つとして、用地買収という方法があります。用地買収は、その区域の所有者は地区外に移転しなければならないことがあり、また、買収されず残った土地が不整形になるためムダな土地が出やすく、住宅や生活道路の整備ができないといったデメリットがあります。
■ 誰が実施する?
▽個人でも実施することができます。土地の所有者または借地権者は自らの土地について、1人または数人が共同して施行することができます。
▽土地の所有者または借地権者が、7人以上共同して土地区画整理組合を設立し、施行することができます。民間として実施する場合に最も多いケースです。
▽地方公共団体(都道府県市区町村)は、都市計画で施行区域と定められた区域内において、都市計画事業として施行することができます。区画整理の約70%は地方公共団体によるものです。
■ メリットは?
まず、幹線道路・区画道路などの整備により、交通の利便性が高まります。また、上下水道やガスなどを一体的に整備することができます。さらに、宅地が整形になり、有効利用ができるようになります。
特に駅前が区画整理により整備されると、商店街の集客力が高まり、経済的効果も大きくなることが予想されます。
■ 区画整理の例
▽JR仙台駅東側地区
区画整理により整備された大通りを中心に、PC関連店舗やIT企業が集積することから「ITアベニュー」とも呼ばれる街区です。野球の「楽天球団」がフランチャイズとして事務所を構えていることでも話題を集めています。
▽東京都汐留地区
JRの貨物操作場跡地が区画整理事業により、一大ビル群に生まれ変わりました。ビジネスだけでなく、商業店舗などが設けられ、若者でにぎわっています。
▽東京都秋葉原地区
中央卸売市場の跡地を活用して土地利用の転換を図り、都市機能の更新を行うことで、単なる電気街から一変、大規模電器の小売店舗が競う、IT化の先端をいく街へと変貌しています。
■ ■ ■
たぶん皆さんも、地元の区画整理が実施されている区域に「○○地域土地区画整理事業地」というような大きな看板が掲げられているのを目にしたことがあると思います。
その場所は数年もすると、すっかり様変わりすることになるでしょうから、その過程を追っていくのもおもしろいでしょう。
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「土地収用」の仕組み |
「今度、家の前の庭が道路の拡幅工事のため収用にかかって、補償金はもらえるけれど庭が半分になってしまった」
このような話をよく聞くことがあります。今回は、その土地収用についてのお話です。
個人が所有している土地や建物はいうまでもなく、その個人にとっての大きな財産です。しかし一方、国民が社会生活を営む上で、道路や鉄道、またライフラインである電気や上下水道施設、学校や病院といった施設は必要不可欠のものであり、これらをどうしても個人の所有する土地の上に設置しなければならない場合があります。こうした場合、通常はその事業の施行者(これを起業者といいます)が土地所有者や関係人などと話し合い、任意で契約を結んでその土地を取得し事業を施工します。
しかし、補償金の額などで折り合いがつかなかったり、土地の所有権について争いがあるなどして、話し合いにより土地を取得できないことがあります。こうしたときに、起業者が土地所有者や関係人に適正な補償をしたうえで、土地を取得することができる仕組みがあります。これを土地収用制度といいます。
私有財産保障と公共利益の調整
少し難しい話になりますが、日本国憲法第29条1項は、「財産権は、これを侵してはならない」と規定し、私有財産制度を保障しています。しかし同時に第3項では、公共の福祉との調整を図るため「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」と規定しています。
この規定を受けて「公共の利益の増進と私有財産との調整を図る」ことを目的として制定された法律が土地収用法であり、土地などを収用または使用するための手続や補償の内容などについて規定しています。
簡単にいうと、この法律の内容は、収用または使用の「要件」「効果」「収用にともなう損失の補償」などから成り立っています。
土地収用法に基づき土地を収用することができる事業は、土地収用法に掲げられている事業(道路、空港、河川、ダム、下水道、公園などの事業)に限られており、国や県、市町村の行う事業のすべてが収用の対象となるわけではありません。また、民間の会社が行う事業でも、鉄道、電気などの公共性の高い事業であれば、収用することができます。
土地収用の具体的な手続は、次のとおりとなっています。
(1)起業者は公共事業に必要な土地を取得するため、国土交通大臣または知事の事業認定を受けます。事業認定とは、起業者が実施しようとする公共事業について、その事業が土地を収用するのに値するものかどうかを判断し、起業者に対し収用する権利を与えるか、与えないかを決める処分です。
(2)次に、事業認定を受けた起業者は、収用委員会に収用の裁決の申請をします。収用委員会では、審理や調査などを行い、裁決で補償金の額などを決めます。
(3)土地に関する補償額は、近傍類似の取引価格などを考慮して算定した相当な価格によるとされ、この裁決によって、起業者は土地を取得することができることになり、事業が行われます。
不満も多く、根気が必要
土地収用法による土地収用において不満が多いのは、やはり損失補償額が低額であるということです。それに対する不服申し立ての手段は、行政事件訴訟法にしたがい、裁判所に対して起業者を相手に訴訟を提起するしかありません。収用委員会の裁決の取消を求めた上で、裁決された補償金の額と妥当と思われる金額との差額の支払いを求める訴訟です。
収用される側である国民の一般的な感情として、財産の中でも土地に対する執着は根強いものがあると思われますから、公共のためとはいってもそう簡単に収用に応ずるわけにはいかないというのが実情でしょう。
また、特に地方などでは、先祖代々受けついできた土地を失うことになるという金銭には代え難いという感情的な面もあり、土地収用は土地を収用する側にとっても根気のいる事業のようです。
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いまさら聞けない基礎知識 |
土地と定着物
今回は知っているようで知らない「不動産」についての法的な基礎知識についてお話しします。
不動産とは、土地・建物を言う、というのが一般的な認識です。確かにその通りなのですが、これを法的に少し詳しく見ると、民法では不動産について「土地及びその定着物は、不動産とする」と規定しています。
まず、「土地」とは言うまでもなくいわゆる″地べた″ですが、所有権(ある物を全面的に支配する権利)としては、一定範囲の地面(地表)に正当(常識的)な範囲の空中と地中の権利を含んだものをいいます。地中も土地の一部であるので、例えば地中の土砂について、土地所有者は第三者に採石権(石を採る権利)を設定することができます。
また、土地の定着物とは「継続的に土地に付着するものであって、その状態で使用されることがその物の取引上の性質と認められるもの」をいいます。つまり、定着物は、原則としてその付着する土地と一体をなすものとして、不動産の一部と考えます。
例えば、石垣・銅像・線路・庭石などの土地の定着物は、独立の不動産としては認められませんが、土地の構成部分の一部として不動産と認められるということです。
ただ、これには例外が二つあります。第1は、「建物」で、これは土地とは別個独立の不動産と認められます。第2に土地とは別に、独立して取引の対象となる一定の要件を備えた樹木(立木「りゅうぼく」と読みます)です。
ちなみに、これら不動産以外の物は、すべて動産です。従って、土地や建物に付着する物であっても、定着物でない物(仮植中の樹木など)は動産です。ただし、自動車・航空機・船舶などは、登録すれば法律上不動産と類似の扱いを受けます。
公示制度
不動産は重要な財産であり、経済上の価値も大きいことから、個々の不動産については、その権利関係がどのようになっているかを誰もが知ることができると同時に、その権利を保護することを目的とする不動産の公示制度が設けられています。
権利の実体関係については、民法第177条において「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。これを簡単に言うと、「大金をはたいてマンションや戸建住宅を買ったとしても、安心はできないよ。その不動産が確定的に自分のものであると主張するには、原則として自己名義で所有権の登記をしなければだめだよ」ということなのです。
さらに具体的な登記手続については、不動産登記法という法律で詳細が定められています。その登記とは、不動産の表示(土地であれば所在地や地番・面積など、建物であれば床面積や階数・屋根種類など)、権利関係について、不動産の所在地を管轄する登記所(正確には法務局または地方法務局)に備えられる登記簿(登記がコンピュータ処理されている登記所においては登記記録)に一定の事項を記載することをいいます。
もしあなたが不動産を所有していて、登記を必要とする場合には、土地・建物の表示の登記については土地家屋調査士が、権利関係の登記については司法書士がその専門家であり、実際の登記はこれらの専門家に依頼することになりますから、登記についての細かい知識は必ずしも必要ではないでしょう。しかし、最低限度として、登記簿(登記記録)を読むことができるくらいの知識は持っているべきでしょう。
土地と建物の種類
それでは、基礎知識として、不動産登記法上の土地の種類と建物の種類を整理しておきましょう。まず土地について、登記簿(登記記録)上の土地の種類を地目といいますが、その地目は▽田▽畑▽宅地▽塩田▽鉱泉地▽池沼▽山林▽牧場▽原野▽墓地▽境内地▽運河用地▽水道用地▽用悪水路(灌漑用または悪水排泄用の水路)▽ため池▽堤▽井溝(田畝または村落の間にある通水路)▽保安林▽公衆用道路▽公園▽雑種地──の21種類と決まっており、これ以外の地目は認められていません。
なお、雑種地とは雑種地以外のいずれの地目にも該当しない土地です。たとえば、駐車場、ゴルフ場、飛行場、運動競技場、野球場、遊園地、自動車教習所、鉄塔敷地、変電所敷地、廃棄物処理用地などの土地をいいます。
これに対し、建物についてはその種類として、建物の主たる用途によって▽居宅▽店舗▽寄宿舎▽共同住宅▽事務所▽旅館▽料理店▽工場▽倉庫▽車庫▽発電所▽変電所──に区分して定め、これらの区分に該当しない建物については、これに準じて適当に定めるとされています。建物は土地と異なり、限定されていません。
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不動産の価格と相続税 |
今回は不動産の価格、特に相続税の対象となる不動産の評価について考えてみましょう。
今まで長い間、空き地として何の利用もされていなかった土地に、急に「建売住宅」が建ったりすることがあります。例えば、土地所有者である親が死んで息子が相続したが、相続税を支払うために土地の一部を売却し、買い受けた不動産会社が分譲住宅を建てるというケースなどです。不動産を所有することは大きな財産を持つことですが、土地持ち=金持ちではないということも多く、特に相続が生ずると、相続税の支払いのために相続した不動産を売却したり、あるいは、物納といって相続した不動産そのものを相続税の支払いに代えて国に納める場合も増えています。
一物四価の不動産
通常、物の価格は一つで、それを一物一価といいますが、不動産においては、一物四価です。つまり、不動産の価格は▽一般市場における取引価格(実勢価格)である「時価」▽国土庁が時価の目安として公示する「公示価格」(実勢価格の80%〜100%の価格)▽市町村が固定資産税を課するための「固定資産税評価額」(公示価格の約70%)▽相続税を課するため国税庁による「相続税評価額」(公示価格の約80%)──があります。
本来「時価」というのは、その不動産が市場においてなんの制約もなく、当事者が自由に取引を行った結果、そのときに成立した価格を指します。相続税を計算する上においても財産はすべてそのときの「時価」で評価されるのが原則です。
しかし、通常の場合は、相続したその不動産がその時点で取引の対象となっているわけではないので、その意味で、時価がどれだけであるのかは分かりようがないのです。そこで国税庁は、「財産評価基本通達」というものを定めて、これに基づき不動産を評価することにより課税の公平を図っています。
相続時は二評価
相続税課税時の土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」があります。路線価方式は、市街地の宅地において適用され、路線価方式を採らない土地については倍率方式が用いられます。
路線価とは、街路(道路)に接する標準宅地の単位面積あたりの適正な時価に基づいて算定された価格であり、毎年1月1日を評価時点として全国で約41万カ所について、公示価格、売買実例価格および不動産鑑定士などの専門家の意見価格などを基に国税庁で不公平にならないように決められ、公示価格と同水準の価格の約80%程度を基準に決定されます。
2006年8月1日に国税庁が公表した全国約41万地点の標準宅地の平均路線価は、1平方b当たり11万4000円(前年比0・9%増)で、バブル経済崩壊後14年ぶりに上昇しています。特に景気回復により土地取引が活性化している3大都市圏や地方の中心都市でアップし、その他の地域も下げ幅が前年より縮小しています。
ちなみに、06年の路線価日本一は、21年連続で東京都中央区銀座5丁目の銀座中央通りの文具店「鳩居堂」前で、前年より9・9%増の約1872万円となっており、よく言われる、はがき1枚当たりの面積に換算すると約27万7000円という価格です。
路線価の評価額
各税務署にはその国税局管内の路線価図が置かれており、それは無料で見ることができますから、自分の土地が接している道路の価格を知ることができます。また国税庁のホームページでも見ることができます。
実際の路線価図には、道路の上に相続税評価額が1平方b当たり1000円単位で表記されていますから、対象宅地の評価は、その面する道路の路線価にその宅地の面積を掛ければよいことになります。ただし、実際の土地の形状や間口、奥行き、高低差、規模などにより価格は影響を受けるので、その場合には一定の補正をして評価額を調整します。
建物は固定資産額
一方、自家用の建物の評価については、固定資産評価額が、そのままその建物の評価額となりますから、「固定資産税評価証明書」を取り寄せることにより、その評価額が判明します。建物がアパートなどの貸家である場合は、固定資産評価額から借家権割合(30%)相当額を控除して評価します。
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ともかく、土地持ち貧乏とはいっても、相続税に縁のない人たちにとっては、うらやましい限りです。相続税などの税金がついてまわるといっても、一度くらいはそのような苦労をしてみたいものと思うのは、ひがみでしょうか。
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借地人と地主、どちらが有利 |
皆さんの住まいは戸建住宅ですか、それともアパートやマンションのような共同住宅でしょうか。戸建住宅に住んでいる方でも、他人の土地を借りて、その土地の上に家を建てて住んでいる人は大勢いることと思います。土地を借りることを借地といい、その場合の借りる側の権利を借地権といいます。法的にいうと、借地借家法で「借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」と規定されています。今回は、その借地権についてのお話です。
借地契約は2種類
戸建住宅に住もうとする場合、自分の土地の上に自分の建物を建てることができれば、それに越したことはないのでしょうが、土地だけを借りて自分の家を建てることがあります。その場合、土地の所有者(地主)との間に土地を借りる契約をしますが、実はその契約の種類には2種類あります。「土地賃貸借契約」と「地上権設定契約」です。この二つを合わせて「借地契約」といいますが、正確にいうと、借地契約はこのどちらかなのです。
しかし、実務的にいうと、借地契約の99%は土地賃貸借契約によるものです。地上権設定契約によるものは皆無といってもよいでしょう。筆者も20年以上不動産に関わる仕事をしていますが、借地権が地上権であるというケースにはお目にかかったことはありません。その理由は土地を借りる側の権利である、土地賃貸借契約による土地賃借権と、地上権設定契約による地上権との権利内容の違いにあります。
具体的には、地上権は物権といって、借りた側(この場合「地上権者」といいます)は借りた土地を自由に使用し、また転貸することができ、さらにその地上権を他人に譲渡することも自由です。その結果、地主は自分の土地であっても自分が使用することは一切できないことになります。
これに対して、土地の賃借権は債権といって、賃借人は、賃貸人である地主の承諾なしには、賃借権の譲渡、転貸ができません。契約条件にしたがって、賃借期間中、地主に対して土地を使用することを要求できる権利にすぎません。ですから、本来的には地主がその土地を第三者に売却してしまうと、新地主との間に賃貸借契約を締結し直さなければその土地を使用できず、明け渡しをしなければならなくなってしまいます。
このように土地賃借権よりも地上権のほうが土地を借りる側にとって強力な権利ですから、地主にしてみれば、そのような強力な権利を与える地上権という借地契約をすることがないのは当然なのです。
借地権の物権化
ただ、そうすると、もともと弱い立場にある賃借人の保護に欠けることになります。そこで、借地人の保護を目的として1991年に借地借家法が制定されました。地主が変われば新地主に対抗することができないことについては、賃借人自身の建物の登記があればこれをもって対抗力を認め、また借地期間も、民法の最長20年という規定が修正され、延長されています。さらに、第三者への譲渡についても、地主の承諾が得られないときには、これに代わる裁判所の許可を得ることにより可能となっています。このことを少し難しくいうと賃借権の物権化といいますが、これにより借地人の保護を図ろうとしているのです。
ここまでは借地人の側からみた借地権です。一方当事者の地主の立場に立って考えてみると、借地期間の定めをして、その期限がきたので更新を拒絶しようとしても、地主の側にどうしてもその土地を返してもらわなければならないよほどの理由(これを「正当事由」といいます)がなければ、原則としてその借地契約は自動更新されてしまうという問題があります。世間でよく″いったん借地契約をすると、貸した土地は二度とは戻ってこない″と言われるのは、その間の事情を示すものです。
その結果、借地の供給は減少し、土地を借りるには多額の権利金を必要とするということになってしまいました。そこで、これらの弊害を排除すべく、借地期間が満了したなら必ず土地を返還してもらえるという内容の借地権が規定されました。
それが「定期借地権」です。その種類として、(1)一般定期借地権(2)建物譲渡特約付借地権(3)事業用借地権──があります。最近これら定期借地権などもだんだん増えてきていますが、これについては次回のテーマとしましょう。
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3種類ある定期借地権等 |
前回は借地権を取り上げました。そこでは、いったん借地契約をすると貸した土地は二度と戻ってこないということがほとんどなので、結果として借地の供給は減少し、土地を借りるには多額の権利金を必要とするということになってしまったということと、そのため、これらの弊害を排除すべく、借地期間が満了したなら必ず土地を返還してもらえるという内容の借地権が設けられたと書きました。それが「定期借地権等」ですが、今回はこの定期借地権等について、それがどういうものであるかを見ていきましょう。
定期借地権等として、「等」という言葉がついているのは(1)一般定期借地権(2)建物譲渡特約付借地権(3)事業用借地権──の三つの種類があり、これらをまとめて呼ぶときに「等」をつけます。最近、借地契約にこれらの定期借地権を設定するケースも徐々に増えてきていますが、まず「一般定期借地権」はどのようなものでしょうか。
定期借地権
「定期借地権」は、借地契約において50年以上の存続期間を定めます。この期間が満了しても契約の更新はありません。建物を再築しても存続期間の延長はありません。このような特約を、書面によってすることができる借地権です。
より具体的にイメージすると、土地を第三者から借りてマンションを建設し、建物と土地を借りる権利(借地権)をマンションの所有者で共有します。共有者は土地を借りるわけですから、地主に地代を払います。そして契約期間が満了したなら、マンションを取り壊して更地にし、地主に返還します。
この定期借地権付マンションのメリットは、土地を購入しない分、通常の所有権のマンションに比べておおよそ6〜7割程度の価格で購入できるという点にあります。ただ、財産的価値としては、最終的に契約期間が満了したら、建物を取り壊して地主に土地を返還することになるので、期間経過とともにその価値は減少し、建物を取り壊した時点でゼロになります。
一方、通常の所有権のマンションは、期間の経過と共に資産価値は減少していっても、また、建替えが困難ではあっても資産価値がなくなるということはありません。ですから、50年以上の契約期間のみ居住すると割り切って、所有権の約6〜7割前後という安い借地権付のマンションにするか、通常の所有権のマンションにするかという選択になります。
これは個々人のライフスタイルによるものですから、どちらがいいとは一概に言えるものではありませんが、考え方によってはこの定期借地権は案外魅力があるかもしれません。現に定期借地権付マンションは着実に増加してきています。
建物譲渡特約付
「建物譲渡特約付定期借地権」は一種変わった借地権です。借地期間は30年以上の期間です。この期間を経過すると、借地人は、借地上に建てていた自己所有の建物を地主に譲渡することをあらかじめ定めておきます。つまり、契約期間が満了すると、地主にその建物を相当の対価で譲渡(売却)するというものです。
ただ、地主に建物を譲渡した後も、借地人が建物の継続使用を請求したときは「期間の定めない建物賃貸借」契約がされたものとみなされます。今まで借地をしていた人は、今度は借地をするのではなく、地主に譲渡した建物を借家とすることにより、引き続きその建物に住み続けることができます。
この建物譲渡特約付きの定期借地権を応用した「定期借地権付住宅」のひとつとして「つくば方式」といわれるものがあります。この方式のマンションは、茨城県のつくば市ではじめて採用されたことからこのように呼ばれますが、建物は通常よりも耐久性の高い構造体(スケルトン=骨格)にして、内部(インフィル)の住宅の壁や内装、設備を分けて供給することから、「スケルトン定借」ともいいます。
入居者は、当初30年間は定借の持ち家に住み、31年以降は建物を地主に売却します。その売却代金を家賃と相殺することにより、低額の家賃で継続して住み続けることができるというものです。ただ、この仕組みは難解なところがあるので、ここでのくわしい説明は省略します。
事業用借地権
この借地権は読んでのとおり、事業用建物の所有を目的とするもので、借地期間は10年以上20年以下でなければなりません。また、必ず公正証書という書面で契約をする必要があります。そして、この事業用借地権は借地人にも地主の側にとっても双方にメリットがあるものです。地主にとっては、契約更新がないので貸した土地は必ず返ってきます。建物買取り義務もありません。建物を建てて貸すという費用もかかりません。
一方、借地人にとっては、事業目的に応じた建物を建てることができます。また、土地取得費用がかからず、事業の撤退も比較的容易です。ただ、事業用に限定されますから、居住用のマンションは対象となりません。郊外型のファミリーレストランや量販店、ディスカウントショップの用地などとして、比較的短期間での利用が想定されます。
このように定期借地権等といってもいろいろな種類があることが、お分かりいただけると思います。
土地を所有している方であればその有効利用に、これら借地権について一考の余地があるでしょう。住まいをどうしようかと考えている方にとっても同様でしょう。既成の方法にとらわれず、ご自分でいろいろ調べられてみてはいかがでしょうか。
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最近話題の大規模再開発 |
最近、都心においては大規模な商業施設が次々にオープンして話題を呼んでいます。
去る3月30日には、東京六本木の旧防衛庁跡地と港区赤坂9丁目再開発計画により誕生した複合施設およびその地域一帯である「東京ミッドタウン」がグランドオープンしました。そのシンボルとなるミッドタウン・タワーは、高さ248bで、六本木ヒルズ(森タワー)だけでなく、東京都庁舎第一庁舎をも追い抜き、都内で最も高い超高層ビルとなりました。
さらに4月27日には、丸の内ビルディング(新丸ビル)が東京駅前にグランドオープンし、地上38階(高さ198b)、地下4階、延べ床面積19万5000平方bという超高層大型商業ビルが開業、オープン前から多くの来場者が行列をつくったとして話題になっていました。
このように特に首都圏においては、大規模再開発が目白押しです。そこで今回は首都圏を中心に、どのような再開発事業が進行または計画されているのかを、その方式とともに見ていきましょう。
都市再開発法
そもそも再開発とは、既存の建物などを撤去し、新たな施設を建設して街並み(街区)の整備を行うことで、その多くは「都市再開発法」という法律にのっとって行われる市街地再開発を指します。もちろん、この法律に基づかず、任意で同様の事業が行われる場合もあります。
都市再開発法による市街地再開発は、「都市計画法及び都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備に関する事業をいう」と定義されていますが、具体的には、駅前広場を整備して、利用しやすいバスターミナルやタクシー乗車場をつくるとともに商業ビルなどを建設する駅前再開発や、都市部で狭い道路に面して低層の建物が密集している地域などで共同化ビルを建設する事業が典型的なものです。
第1種再開発事業
都市再開発法による第1種市街地再開発事業は権利変換方式といい、再開発ビルを建設し、そのビルに売却を予定するフロアー(これを保留床といいます)を確保して、最終的にこれを売却することによってビル建設費用などの事業費をまかなうという方法です。
実施例としては、皆さんよくご存知の「六本木ヒルズ」をそのシンボルとする「東京都港区六本木六丁目地区」の第1種市街地再開発事業があります。この事業はテレビ朝日や周辺敷地の再開発を行った事業で、この地域は道路が極端に狭く緊急自動車の出入りにも支障があったことなどから、地権者が長期間をかけて再開発の合意形成を行い、組合施行で実施した例です。
また、現在その事業の進行がスタートしている例として、東京西部に位置する「二子玉川東地区」の第1種市街地再開発事業があります。これは、鉄道会社ほかによる組合施行の再開発事業で、工事竣工は2009年3月の予定となっており、超高層のマンションやオフィス・ホテル棟を中心とし、その開発規模は約11・2fに達します。民間施行の再開発事業としては、全国最大規模となる見通しです。
第2種再開発事業
これに対し、第2種市街地再開発事業は用地買収方式といわれ、保留床を売却して事業費をまかなう点は第1種と同じですが、公共団体が実施するもので、防災上などで緊急性の高い事業について認められます。個人あるいは組合が施行することはできません。
第2種の実施例としては、大阪の天王寺駅南側、阿倍野区の常盤地区と金塚地区における再開発である「阿倍野地区」の再開発事業が第1号として適用されました。また、神戸市では阪神・淡路大震災後に壊滅した市街地の都市復興を第一の目的とした再開発事業が多く、JR山陽線の垂水駅前を中央地区、東部地区、西部地区に分けた神戸市主体の「垂水駅東第2地区第二種市街地再開発事業」が進行しています。
土地区画整理法
以上は、都市再開発法に基づく再開発ですが、他の法律に基づいて実施されるものもあります。その中で多いのは、土地区画整理事業による再開発事業です。土地区画整理事業は、換地(土地の交換)と減歩(所有地の一部を事業地として提供する)という方法が用いられますが、駅前再開発の場合には立体換地といって、土地の割り当てに代えてビルのフロアーの一部を所有するという方法も用いられます。
この方法による事業の実施例としては、JRの東京「汐留」貨物駅跡の再開発や、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレス線で話題を呼んだ旧東京中央卸売市場の移転による市場跡地および都有地の開発である「秋葉原クロスフィールド」も土地区画整理事業によるものです。
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このように大規模開発により街並みは整備され、商業施設に来所する人も増えることで店舗の売り上げも増大し、その経済的な波及効果も多大なものがあると思われます。
最後に個人的な見解を言わせてもらうと、例え高級ブランドの店や一流の飲食店がそこにあったとしても、人工施設のかたまりの中に、わざわざ足を運ぶほどの価値は見いだせないのですが、それはひがみというものでしょうか。売っている品物や料理の味が、施設によって影響を受けるわけではないのですから。
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マンション管理組合の規約 |
今回はマンションの規約に関するお話です。
居住形態としてのマンションは、都会だけでなく地方においても戸数を増やしており、全国の分譲マンションの戸数は520万戸(05年末の推計・東京カンテイ)以上、マンションの居住者数はすでに1000万人を超えています。大都市圏では、住宅総数の約3割がマンションという自治体も増えています。
手持ち資金に余裕があれば、戸建住宅に住みたいという人は多いと思います。しかし、限られた資金では、手に入れることができても遠方になってしまうのが実情ですから、通勤や通学などのことを考え、利便の良い所を選ぶとなると、どうしても必然的にマンションになってしまいます。
しかし、マンションに住むということは、ある種の利便性がある半面、その規模を問わず他人と共同生活を営むことになりますから、いろいろな面で制約を受けることになります。そこに住む人たちがトラブルなく暮らしていくためには、一定のルールが必要とされるからです。そして、そのルールは管理組合の集会で「規約」という形で取り決めがなされます。
管理組合
ところで、分譲マンションには必ず管理組合がありますが、この管理組合はマンションの住人が集まって任意に結成するわけではありません。
マンションをめぐって生ずる法律問題を解決するための法的基準を示すとともに、トラブルの発生防止を目的として制定された「区分所有法」という法律があります。その法律の第3条に「区分所有者は、全員で、建物・敷地・付属施設の管理を行うための団体を構成し、区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことができる」という規定があります。
ここにいう「団体」のことを一般に管理組合といいます。ということは、管理組合はマンションの住人が任意に集まって結成するものではなく、そのマンションに複数の住人がいれば当然、管理組合ができるということなのです。ですから、この管理組合には加入したくない者であっても必ず、その管理組合の構成員となり、脱退をするという自由もありません。
規約
共同生活が営まれるマンションにおいては、どうしてもいろいろなトラブルが生じます。それを未然に防止し、共同生活が円滑になされていくためには、管理組合の組織や運営に関する規制が必要です。そこで、前述のように区分所有者(マンションの所有者のこと)は「集会」を開き、「規約」を定めるものとされているのです。つまり、自分たちのことは自分たちで取り決めをしていくことが求められているわけであり、この取り決めのことを「規約」といいます。
言い換えると、マンションで共同生活をする上での皆で決めた一定のルールなのです。したがって、各区分所有者はこれを守らなければならないのは当然ですが、そもそも定めた規約自体が適切であるかという問題もでてきます。
そこで、過去に規約違反になる行為か否かについて、裁判所で争われた事例を取り上げてみましたので、特にマンションに住んでいる方は参考にしてください。
【例1】 今までペットの飼育について、規約に何も定めていなかったマンションにおいて、規約を改正し、ペットの飼育を禁止する条項を規約中に設けようとする場合に、それ以前から犬を飼育していた者がいたときは、その者の承諾を必要とするか。
結論 規約を改正し、マンションにおいて動物の飼育を一律に禁止すると定めることは有効であり、それに違反する犬の飼育は、管理規約違反行為であり、かつ区分所有者の共同の利益に反するものであるから、飼育者の承諾は不要である(東京高裁平成6年判例)。
マンションにおけるトラブルの原因として多いものに、ペットに関するものと騒音があります。特にペット問題は、飼い主から動物飼育により具体的被害が発生していないという主張がなされることが多いのですが、この裁判例ではそれを認めていません。
【例2】 バルコニーを温室に改造することは認められるか。
結論 ベランダ、バルコニーは専有部分ではなく、共用部分であり、接続する居室部分の区分所有者は、専用使用権を認められているにすぎないから、その使用については、規約、総会決議等により美観や避難通路としての効用を保持等を理由とする、相当広範囲な制約が可能である。したがって、それらの効用を損なう温室の設置は違反行為であり、他の管理組合員の共同の利益を侵害するものであるとされ、撤去復旧が求められた(最高裁昭和50年判例)。
分譲マンションのバルコニーやベランダが専有部分か共用部分のいずれに属するかは、マンションの規約で定められているのが一般的です。そしてそれは通常は共用部分であって、専有部分を所有する専用使用権が設けられているにすぎません。したがって、これを自由に使用できるわけではなく、本件以外でもBSアンテナや物置、サンルームの設置なども同様の理由から認められていません。
【例3】 専有部分の床材を木質フローリングとすることを管理規約で禁止、制限されていないマンションにおいては、区分所有者はそれを自由に張り替えることができるか。
結論 専有部分内の床材を変更し、張り替えることは区分所有者の自由であるが、「遮音性能」をそれ以前より低下、悪化させることは、他の区分所有者の生活の平穏を阻害する行為であり、「区分所有者の共同の利益に反する行為」にあたる(東京地裁八王子支部平成8年判例)。
住まいをめぐるトラブルの中で、騒音に関するものは、特に多いものの一つです。これには、マンションの設計、施工、建築部材の質に起因するものと、専有部分の使い方に原因がある場合とがあります。階上部室に小さな子供がいる場合には、その走り回る音が階下に響いたり、ピアノを弾く音がうるさかったり、場合によっては双方が感情的になり深刻なトラブルをまねくこともあります。その意味では「遮音性能」をそれ以前より低下、悪化させることは、他の区分所有者の生活の平穏を阻害する行為であるとした裁判所の判断は妥当なものといえるでしょう。
◆ ◆ ◆
以上は、過去に裁判で争われた、マンションの住まい方をめぐるトラブルのほんの一例にすぎません。しかし、考えてみるとマンションに住むということは、ある種の利便性を享受することの半面、これらのルール(住みにくさ?)をある程度は甘受しなければならないということでしょう。
長屋を除けば、マンションのような一般の共同住宅が日本に建ちはじめてから、まだ100年も経っていません。ルールづくりとその理解も、まだまだこれからなのかも知れません。
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J-REITの仕組み/不動産投資編(1) |
今回からは不動産投資がテーマです。
近時、株への投資が一種のブームにもなりましたが現在は一段落し、代わって不動産投資が注目を集めはじめているようです。ただ、不動産投資にもいくつかの方法がありますが、一般にまだあまりなじみがないことから「どのような仕組みになっているのかよく分からない」という声を聞きます。
そこで、不動産投資の超入門講座と題して、最近話題の″REIT(リート)″といわれる不動産投資信託を中心にQ&A形式で数回に分けて連載します。
Q1:不動産投資の種類と方法は?
不動産投資にもいろいろありますが、大きく分類すると次のようになります。
(1)現物不動産投資
現物不動産投資とは、マンションやアパート、オフィスビルを1棟丸ごと購入し、それを賃貸して、賃料収入を得ること(インカム・ゲイン)や、投資した不動産そのものの値上がりを得ること(キャピタル・ゲイン)を目的とする方法です。
例えば、ワンルームマンションのオーナーになり、それを賃貸して賃料収益を上げるというケースです。しかし、そのためには多額の資金を用意しなければなりませんし、一度不動産を取得してしまうと、それが空室になることによる収入減というリスクを負います。また、売りたいときにすぐに売れないという非流動性リスクを抱えてしまいます。
(2)小口化不動産投資
小口化不動産投資とは、投資額を少額にして、複数の投資家が共有持分権を所有し運用する投資方法です。1980年代後半に登場した、共有持分権の信託方式による不動産共同投資商品がその始まりで、現物不動産投資と違って、所有権を共有持分権などの小口に分けて販売する商品のことです。
ただ、当初の商品は、バブル崩壊で投資家に多大な被害を及ぼし、社会的な問題となったため、95年に「不動産特定共同事業法」が施行、その後、数度の改正などにより、投資家保護を目的として不動産小口化商品の発売を許可制としたり、事業内容に対する情報公開(ディスクロージャー)が制度化されました。
この投資の仕組みは、まず不動産会社や信託銀行が投資家から資金を募るための受け皿として「組合」(この投資方式は、対象不動産の所有権などの名義が営業者のままで、出資者の名義にならないことから、通常この組合を「匿名組合」といいます)を設立します。そして組合は商業ビルや賃貸マンションなどを購入あるいは建設し、そこからのテナント料や家賃収入などの運用益を資金出資した投資家へ分配する仕組みとなっています。
この方式は、投資者(匿名組合員)が営業者に出資をし、その経営の一切を営業者に委ね、組合員は自分が投資した金額に応じて利益分配を受け取るという契約内容なので、投資家は現物不動産投資と違って不動産の所有権を有しないことから、投資対象の不動産の管理などを行う必要はありません。
ただし、この方式では、取得した不動産の所有権自体は不動産会社に帰属するため、もし不動産会社が倒産した場合には投資家が損害を被ることになります。また、利益分配金は運用実績によって変動しますから、当初の出資額を下回ることもあり、元本は確保されていません。
(3)証券化不動産投資
証券化不動産投資とは、不動産への投資や運用を目的とする投資法人が、不動産などを担保にした証券を発行することにより、投資家は少額でも投資することができ、投資法人は、これら多数の投資家の資金や借入金で、オフィスビルやショッピングビル、住宅といったさまざまな種類の不動産を複数取得して管理、運用します。そして、これらの不動産から得られる賃料収入や売却益から、運用に伴う経費などを差し引いた後の利益の大部分を、投資家に配当するという仕組みです。
この商品への投資は少額ですることができ、投資家は、この投資証券を東京証券取引所などに開設された市場で、株式と同じように売買することができるので流動性が高いという特徴があります。この証券化不動産投資の典型的なものに「REIT(リート)」と呼ばれる不動産投資信託があり、現在、不動産投資の主流となっていますので、今回はこれを取り上げることにします。
Q2:リートの仕組みは?
REIT(リート)とはReal Estate Investment Trust の略で、日本語では不動産投資信託と訳しますが、正確には「不動産に投資することに特化した株式会社」、つまり不動産投資法人のことです。もともとリートはアメリカで60年代に誕生し、90年代になって急速に拡大しました。日本においては「投資信託及び投資法人に関する法律」が00年11月に改正されたことにより、はじめて投資商品として誕生しました。仕組みがアメリカのリートと異なる点もあるため、特にJリート(日本版不動産投資信託)と言われています。
一般に不動産投資というと、ともかく不動産への投資は怖いものだという印象を持たれる方が大半ではないでしょうか。それは、あれほど狂乱的に上昇した不動産(特に土地)が、バブルの崩壊により、現在、その価値はバブル期の5分の1程度まで下落している現状をみているからです。バブル期の不動産投資は、まさに現物投資であり、価格の上下が即時収益に反映される投資であったからなのです。
それに比べ、Jリートは土地の値上がりなどで利益を得て配当するのではなく、 主にテナントからの賃貸料で利益を得ていくという堅実な仕組みをとる方式であり、従来の不動産投資とはまったく性質が異なっています。
株式投資信託では、投資家がファンド(投資信託会社)に資金を投資し、運用者はその集まった資金を主に株式で運用してその運用益(株式の値上がり益や配当金)を投資家に分配するものですが、リートも基本的な仕組みは同じで、いってみれば「株式投資信託」の「株式」が「不動産」に代わったものといえます。
投資家はリートと呼ばれる「投資法人」に資金を投資し、「投資法人」はその投資家から集めた資金を不動産などに投資して、その不動産から得られる運用益(賃料収入や売却益など)を投資家に分配します。株式や債券、それらを運用する通常のファンド(投資信託)に比べ、値上がり益も大きくはないのですが、リスクが低いということで、今後は個人の需要の増加が見込まれています。
簡単ではありましたが、リートの基本的な仕組みが理解してもらえたでしょうか。次回は、商品特徴などについて、お話ししていきたいと思います。
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J-REITのメリット/不動産投資編(2) |
不動産投資の超入門講座の第2回です。前回は最近話題の″REIT(リート)″といわれる不動産投資信託の仕組みを中心に、Q&A形式で基礎的な事柄を解説しました。今回はリートについてもう少し詳しく、商品のメリット、リスクについてもみていきましょう。
Q1:商品の特徴とメリットは?
不動産を証券化するということは必要資金を「小口に分けて販売する」ことを意味しています。日本版不動産投資信託のJリートは投資法人であり、市場に上場していますから、投資家は証券会社を通して日々の市場価格で自由に売り買いすることができます。投資口の価格(株式における株価)は、一口数十万円から100万円前後の価格が多く、株式と同様に需給関係によって常に変動していますので、取引価格の上下によるリスクを伴うことはいうまでもありませんが、投資商品として次のようなメリットがあります。
(1)資金の小口化
個人で不動産に直接投資をするには大きな金額が必要となりますが、Jリートは不特定多数の投資家から資金を集めて投資するので、投資額は少額でも購入することが可能です。
(2)投資対象の分散化
例えば、不動産の直接投資でワンルームマンションの1室を購入し、それを賃貸する場合、入居者がいればリターンは100%ですが、空室が出て、新しい賃借人が決まらず入居者がいなければゼロです。このように、不動産の直接投資は常に物件が賃貸されていて、かつ賃料の遅滞がないか、あるいは購入価額より高額で転売することができなければ大きなリスクを負うことになります。しかし、投資法人は複数の不動産に分散投資するので、借り手がいなくてもそのリスクが軽減され、投資家は安定的なリターンを期待することができます。
(3)流動性
不動産の直接投資で取得した不動産を売却する場合、条件に合う買い手がすぐに見つかるとは限りません。しかし、Jリートの仕組みは現物の不動産の所有権を持つのではなく、小口化された証券を購入するという形で投資するものであり、それは株式市場に上場され、株式同様に売買が行われていますので、随時時価で売却することができます。それだけ現物不動産と比べ高い流動性が保たれています。
Q2:リスクとその要因は?
市場で取引されるため、価格変動リスクがあります。したがって購入価格を下回る可能性(リスク)も当然あります。また、不動産賃貸市場や金利など経済情勢の影響を受けて不動産投信の価格が下落、分配金が減少する可能性があります。
さらに、Jリートが購入した個別の不動産においては、地震、火災などによる物件の損傷にともなう損失なども考えられます。また、投資法人自体の経営の悪化なども考えられます。
このような点から、リートは預貯金よりもリスクが高くなりますが、株式への投資よりもリスクは少ないといえます。一般に国債がローリスク、株式投資がハイリスクとすると、不動産投資信託(Jリート) はミドルリスクであるといわれています。
Q3:これまでの運用実績は?
2007年7月現在、全41件の銘柄が東京証券取引場に上場されています。
それらの商品の平均分配利回り(株式における配当利回りに相当)は現在、年3%〜4%前後です。低金利時代の現在では、相対的に高い分配利回りを期待できる商品として個人投資家の注目を集めつつあります。
Q4:具体的な購入方法は?
リートは株式市場に上場していますので、証券取引所で取引されます。投資家には投資証券等(=株券)が発行され、「株」と同じような4桁の証券コードが割り当てられます。現在は、東京証券取引所、大阪証券取引所での売買が可能です。したがって、株式を扱っている証券会社や信託会社などの金融機関であれば、どこででも購入できます。
各証券会社のインターネットのホームページには、▽どのような投資法人があって、その投資法人は現在どのような不動産に投資しているのか▽配当予想は年何%なのか▽現在の時価はどの程度なのか▽チャートはどう動いているのか──といったことの詳細が掲載されていますので、まずそこから情報を仕入れるのがよいでしょう。
Q5:将来的な見通しは?
リートは商品としての歴史は浅いものの、この低金利時代にあって、現在のところ配当利回りは年3%〜4%と予想される分配金をだしており、比較的安定した運用実績がありますから、かなり魅力のある商品ということができます。その意味では、短期的な値上がり益を狙う商品というよりも、長く保有して分配金を得る商品といえるかもしれません。
ただ懸念材料もあります。これまで超低金利政策をとっていた日銀が、金利を上げる方向で動いていることです。長期金利の上昇は、不動産価格にとってはマイナス要因であり、今後も金利の上昇傾向が続くと、投資法人の借り入れコストが上昇し、さらに投資している不動産価格自体の下落というダブルパンチを受けかねない可能性があります。
このように金利の上昇は、不動産市場の先行きには不透明感を与えるものです。しかし一方で、このほど公示された土地の「路線価」(相続税、固定資産税の課税の算定の基礎となる)では、都心の一部地域における価格の上昇はバブル期を超える様相を呈しているようです。
◆ ◆ ◆
いうまでもなく、リートは不動産に対する投資ですが、単に不動産関係の知識だけでなく、経済の諸条件を充分に認識した上で自身の運用スタイルを考えて、投資することが必要とされます。いずれにせよ、リターンを得ようとする投資はリスクを伴うことを常に忘れてはなりません。投資の世界は自己責任の世界なのですから。
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リバースモゲージ |
皆さんは「武蔵野方式」という不動産の担保方法を知っていますか。それでは、「リバースモーゲージ」という言葉はどうでしょうか。これは一般にはあまりなじみがないかもしれませんが、不動産を担保に融資を受ける老後の生活資金調達方法の一つのシステムとして、最近注目されています。
今回は、このリバースモーゲージの仕組みについてのお話です。
私的年金にも
リバースモーゲージ制度を端的に説明しようとすると難しいのですが、まず、貸し手は、借り手の所有する建物や土地を担保評価して貸付限度額を設定し、借り手はその限度額に達するまで毎月一定額の融資を受け取ることができるものです。そして、借り手が死亡した後に、担保となっていた不動産が売却され、借入金が一括返済されることで精算されるという仕組みの総称です。
一般の住宅ローンが、不動産の購入資金を、一括で借りて元利金を定期的に分割して返済していくのに対して、リバースモーゲージは、死亡後の不動産売却代金を担保として、定期的に借入を継続していき、それを生活資金などに充当し、死亡時に元利一括して返済するという、言ってみれば「逆住宅ローン」がこのシステムです。一種の私的年金という意味合いを持つものです。
武蔵野市が最初
日本はいま、急速な勢いで過去にどの国も経験したことのない高齢化社会に突入しようとしています。そして、それは核家族化を伴っています。厚生労働省の調べによれば、単身または夫婦のみで暮らすケースは現在、高齢者世帯数の約半数を占め、10年前より10%以上も増加しています。そして、これら高齢者の生活する住宅は、財産として相続されることはあっても、相続人(子息)が引き続いて住むということはほとんどないというのが現実です。また、あるデータによると、子息に遺産を残すことはせず、また、老後の面倒をみて貰うとは考えないとする人は、高齢者の7割を超えています。
しかし一方、最近の国の調査によると、高齢者世帯の年間所得は250万円以下が約半数以上を占め、その所得の約65%が公的年金・恩給によっており、預貯金などの利子や配当は1・5%程度に過ぎません。低金利政策の経済下で預貯金金利も低率化し、高齢者の収入不安が起きているのが実情です。
高齢者の住居の約8割は持家とされていますが、このように定期的な収入は年金だけという人がほとんどです。住んでいる住宅を売却して資金化するという方法はありますが、住んでいる不動産を売却すれば、住むところがなくなってしまいますし、また、住居を変えなければならず、高齢になってから新しい環境になじむのは難しいことです。
そこで、ローンの返済も終わって完全な自己資産となっている、現に住んでいる住宅を、老後の所得源に活用できないかという発想から生まれてきたのが、リバースモーゲージなのです。リバースモーゲージであれば、長年住み慣れた自宅に住み続けたまま収入を確保することができるという利点があるのです。
アメリカでは1960年代からこの制度がスタートし、日本では1981年に武蔵野市が全国に先駆けてこの制度を導入したので、この制度を一般に「武蔵野方式」と呼んでいます。
その後、いくつかの地方公共団体や民間の信託銀行でもこの制度は導入されましたが、担保不動産の資産価値の下落もあり、実質上制度として機能していませんでした。しかし近時の公的年金の不祥事などによる信頼感の低下や医療費負担の増加など、老後の生活が不安視される中で再び注目されてきています。
融資終了後も居住
この制度は、住宅や土地などの不動産を担保に、年金の形で定期的に融資を受ける制度であり、受けた融資は、利用者の死亡などで契約が終了したときに担保の不動産の処分などによって元利一括で返済されるものです。融資を受けている人は、融資が実行されている期間中、元金の返済および利息の支払いはしなくてもよく、契約終了時に元金と利息が一括返済されるという仕組みになっています。一括返済の方法は担保とされている不動産の売却によるのが一般的です。
通常の住宅ローンでは、購入時に一括して融資が行われることがほとんどで、その後、毎月の返済を行いながら融資残高が減少していくのに対して、リバースモーゲージでは逆に毎月融資が行われることで、融資残高が増加していき、契約終了時に一括返済が行われるということになります。
ここで注目点は、住宅ローンと違い、リバースモーゲージは特徴の一つとして「融資終了時」と「契約終了時」とを異なる時期にすることができます。それは、リバースモーゲージ制度を利用し、一定期間融資を受け、融資残高が契約者の生存中に満額になりこれ以上は融資を受けることができなくなった後であっても、その不動産には住み続けられるということです。つまり、融資が受けられなくなっても、死亡するまで担保とした不動産には住めるということなのです。
実施の具体例
このシステムには、地方公共団体が運営する「公的プラン」と信託銀行などによる「民間プラン」とがありますが、その代表的なものを最後にまとめてみましたので参考にしてください。
◆ ◆ ◆
リバースモーゲージの利用は、減額方向にある公的年金をはじめとする公的保障制度の補完や、不動産の流通の活性化にも寄与することになり、高齢化社会の裏返しである少子化社会対策としてもメリットがあるといえます。しかし、不動産価格の下落は、この制度にとってのデメリットになるので、地価の低迷は好ましいものではありません。そして、なんといっても融資を受けられなくなる、最大のデメリットは本人の死亡ですから、ともかく健康で暮らしましょうというのが、今回の結論でしょうか。
◆ ◆ ◆
リバースモーゲージの具体的事例
武蔵野市(武蔵野市福祉公社)
▼担保は自宅不動産(土地・建物、マンション)
▼貸付利率は年5%を限度とし、毎年3月1日現在の長期プライムレート金利を1年間適用する(変動金利制)
▼貸付内容は福祉公社サービスの利用料(基本サービス月額1万円ほか個別サービス利用料)/生活費(月額1人8万円以内)/医療費(月額70万円以内)/住宅改良費(1件100万円以内)/その他(介護保険料、固定資産税、国民健康保険税)など
▼融資条件は、市内に引き続き1年以上居住していること/福祉公社と有償在宅サービス契約を締結していること/貸付金の償還が確実と認められること/担保物件に、抵当権などが設定されていないこと/担保物件に、第三者が居住していないこと/マンションは、専有面積が50u以上、契約時の築年数が13年以内であること
▼貸付限度額は「土地の評価額の80%」以内で建物の評価額は0円、「マンションは評価額の50%」以内
▼利用は、福祉公社サービスの利用料金はすべて貸付とし、生活費、医療費、住宅改良費などは領収書添付のうえ福祉公社に申請し、福祉公社から利用者の指定口座に振り込む。公社(市)は3カ月ごとに貸付金を委任状により、利用者に代わって市に請求。利用者は、3カ月ごとの利用額の借用書を武蔵野市あてに提出
▼更新契約は3年ごとに審査会を開催するほか、毎年、登記簿、貸付状況確認など書類審査し、更新契約(1年)を締結する
▼契約終了は本人死亡、本人希望などにより契約終了
▼返済は続人が返済(現金による一括返済)/本人が返済(現金による一括返済)
中央三井信託銀行
▼満60歳以上満83歳以下の方。カードローンの利用は満64歳以下の方
▼原則として、自宅に一人暮らしまたは夫婦二人暮らしで、他に同居人のいない方
▼担保不動産に第1順位の根抵当権を設定できる方
▼中央三井信託銀行で遺言書を作成される方
▼対象不動産は、申込者が所有する土地付一戸建住宅で、その担保不動産が、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府・京都府・兵庫県エリア内にある物件に限定
▼担保不動産の土地評価額が原則4,000万円以上
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火災保険と地震保険 |
「天災は忘れたころにやってくる」とはよく言われることですが、天災の中でも最も恐ろしく、また被害が大きいのは「地震」です。地震に対する日常的な備えは、どこの家庭でも多少なりともしているようですが、案外″おざなり″にされているのが地震保険です。ということで、今回はマンションや戸建住宅の保険について考えてみます。
火災保険は建物と家財は分けて契約
家を建てたり、マンションを買ったりする場合、不動産という固定資産を所有することになり、それは大きな財産ですから、大体において、火災保険を付けるのが一般的です。その火災保険は、住宅を取り巻くさまざまなリスクを総合的に補償するタイプ(住宅総合保険)とベーシックな補償のタイプ(住宅火災保険)に大きく分かれます。住宅総合保険が、火災や落雷、ガス爆発などによる破裂などほとんどすべての災害を補償するのに対して、住宅火災保険は、水災、車や飛来物の衝突や落下、給排水設備の事故などによる水漏れなどは対象外となります。
また、火災保険では、建物と家財を分けて契約することになっています。建物は契約したが、家財は契約しなかったということがないようにしなければなりません。借家に住んでいる場合には家財のみ契約することになります。
火災保険の契約金額を設定するには、「再調達価額」をもとに設定する方法と、「時価」をもとに設定する方法があります。時価の場合、時価を下回る金額で契約したときは、損害額の全額が補償されない場合がありますので注意が必要です。
地震による出火は火災保険の対象外
しかし、いずれにしてもこの火災保険を付けただけでは、まだ安心することはできません。それは、火災保険の対象となるような出火によって延焼しても、その出火原因が地震である場合は、火災保険の対象とならないということです。地震が原因となる火災は、延焼でも火災保険の対象外であることを十分理解しておく必要があります。
そこで通常は、地震による損害も補償の対象とするため、地震保険を合わせて付けるのが一般的です。
地震保険は、地震・噴火または津波を原因とする損壊、埋没、流出や火災(延焼・拡大被害を含む)を対象とした、火災保険では対象外となる損害を補う保険です。1964(昭和39)年の新潟地震を契機として、「地震保険に関する法律」に基づいて創設された政府主導の保険であり、損害保険会社が支払いできない場合に備えて国が負担する仕組みになっています。
加入方法も独特で、火災保険の免責部分を補償する形で生まれたため、原則として火災保険に自動的に付いてくる形をとり、希望しない場合のみ、申込書の「申し込みません」という確認欄に押印する仕組みになっています。
構造、地域で異なる保険料率の設定
地震保険の保険料率は、「損害保険料率算定会」が過去約500年間の地震被害から算出したものであり、損害保険各社が同じ保険料率を使用していますので、全社同一の保険料となっています。地震保険の契約金額は、建物・家財とも火災保険の契約金額の30%〜50%の範囲内ですが、それには限度額があり、建物は5000万円、家財は1000万円です。
例えば、建物の火災保険の契約金額が2000万円であると、建物の地震保険は600万円(30%)〜1000万円(50%)の範囲で契約することになります。
地震保険の保険料は、地震保険の契約金額の他に建物の構造材による2区分(木造と鉄筋コンクリート造・鉄骨造)および危険度により都道府県別に1等地から4等地の4階級に分け、地域差が反映されています。
また、保険料の割引制度が設けられており、築年度割引として2001年10月より、1981年6月1日以降に新築された建物である場合は一律10%の割引になっています。さらに、耐震等級割引もあり、住宅の耐震性能に応じて10%〜30%が割引かれます。
地震保険付帯率は全国平均で約40%
日本損害保険協会のデータによれば、火災保険に加入している人のうち、地震保険にも加入している人(火災保険への地震保険付帯率)は、全国平均で37・4%(05年3月末)となっています。
東南海・南海地震の危険がある高知県や、宮城県など火災保険への地震保険付帯率が高いところがある一方、長崎県や佐賀県など全国平均を大きく下回っている地域も多数あることから、全国的にまだまだ十分な状況とは言えないようです。
確認しておきたいその他の保証制度
保険もそうですが、家の新築やマンション購入の際に、チェックをしておきたい保証制度として次の二つがあります。
◆住宅性能保証制度と住宅性能表示制度
住宅の品質確保促進法により、住宅供給事業者は、構造耐力上主要な部分について、住宅の完成引渡後10年間保証を行うこととされています。この住宅性能保証制度では、登録された事業者が10年間の保証を適正かつ確実に実行できるよう、現場審査や保険でサポートする仕組みです。
また、住宅性能表示制度とは、耐震性、省エネ性などの種々の住宅性能について等級を設定し、住宅取得者が前もって性能の違いを比較しやすくするもので、品確法で整備された任意の制度です。また、評価書が交付された住宅については、紛争処理機関による専門的な紛争処理が受けられます。
◆地盤保証制度
住宅性能保証制度の保証対象住宅(一戸建住宅、小規模な共同住宅等)の地盤につき、登録地盤会社による考察に従い、地盤補強工事や基礎形式が選択された住宅が不同沈下した場合、保証住宅引渡日から10年間が経過する日まで保証者(登録地盤会社)は、▽不同沈下の再発を防ぐために必要な地盤補強工事▽不同沈下が原因で発生した建物本体の不具合修補工事──などについて保証するという仕組みです。
これら以外にも、住宅・宅地については、各種保証制度が具備しています。家はまさに生活の根拠の場所であり、大きな財産なのですから、自分の家だけは大丈夫と思っていると、取り返しのつかないことになりかねません。転ばぬ先の杖として、保険、保証制度の詳細を調べて活用されるとよいでしょう。
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不動産活用のアパート経営(1) |
「天最近の公的年金制度への不安(資金運用という言葉を使った、明らかな年金の無駄遣い、事業の失敗も含めて)から、私的年金形成のための手段として、所有不動産活用が、ビジネスとしても活発になりつつあります。
そこで今回と次回は、所有不動産の活用として、「アパート経営をしてみませんか」というテーマを取り上げ、さまざまな面からみていくことにしましょう。
土地の活用とアパート経営
「土地は持っているが、どう活用していけばいいのか?」ということで悩んでおられる方は多いと思います。活用方法はいろいろありますが、その中でアパート経営には次のようなメリットがあります。
@経営が比較的容易
アパート経営を開始するには、資金が必要ですが、既に土地を保有しているのであれば、金融機関から資金の融資を受けやすいということがあります。
A資産価値の減少が少ない
現在、経済状態が上向きであるとは言っても、地価は大幅上昇しているわけではありません。しかし、逆に急激に減少する要素も考えにくいので、アパートを保有することは、資産としては安定した価値が保てるものといえます。
Bローンの返済が比較的容易
空室がでない限りは、比較的安定した家賃収入があるので、返済は比較的容易といえます。
収益、税金対策など目的は明確に
このようなメリットはありますが、実際にアパート経営をするには、その目的を明確にしておかなければなりません。資金返済計画や建設するアパートのグレード、価格などのアパートの経営計画自体が変わってくるからです。
目的にも種々ありますが、▽収益を「私的年金」として将来に備える▽「相続税対策」として節税効果を期待する▽土地を単独で所有しているよりも、土地上に建物を建てたほうが固定資産税を低く抑えることが可能──などが考えられます。その中でも、最初に述べたように、将来の公的年金制度への不安から、私的年金として収益を考えることの目的は大きいものと思われます。
さて、アパート経営を考える入り口は、マーケットリサーチからです。
種類グレードと立地条件が鍵
アパートを建てるといっても、さまざまな種類のアパートがあります。どのようなグレードの建物を建てるのかということは重要です。当然、賃料の設定にも関係してきます。グレードの高いアパートは高い家賃設定をすることができますし、修繕や建替えの時期なども遅くてすみますから、その意味では資金が許せば、やはりできるだけグレードの高いアパートのほうがよいといえます。
さらにこれにも増して、アパート経営が成功するか否かに大きな影響を与えるのが、立地条件です。アパート経営で恐いのは、何といっても空室が出ることです。当初は家賃収入をローンの返済に充てるのがほとんどでしょうから、この収入がないということは、即、ローンの不払となってしまい、最悪の場合は、競売を実行されてしまうことになりかねません。そこで、現に自己の所有する土地以外の土地を取得してアパートを建てる場合には、その土地の選択が重要な意味をもってきます。いつもガラガラのアパートでは困りますから、安定した入居率の期待できる物件でなければなりません。
選択のポイントとマーケットリサーチ
では、その選択のポイントはどこにあるのでしょうか。まず大原則は、必ず人口が増加傾向にある市町村を選ぶことです。少子化社会の到来で、人口が減少していくことが予測される中、コンスタントに安定した入居率を確保することがアパート経営を成功させる鍵となりますから、アパートが立地する市町村の人口が増加傾向にあるのか、減少傾向にあるのかというマーケットリサーチは欠かすことができません。したがって、これが場所の選択の第一に重要な要素です。
次は、言うまでもなく購入価格あるいは建築価格です。大都市圏近郊のいわゆるベッドタウンであれば、間違いなく需要は多いものと思いますが、そういう好立地の場所は地価が高価であり、また建築費も高くつきますから、なかなか資金的に手を出せないということが多いでしょう。
一方、地方都市であれば、大都市圏と比べると地価や建築費は低くなりますが、人口が増加傾向にある都市は少なく、一般的に需要もあまり多くはないといえるので、この辺りの判断は難しいところがあります。
さらに、アパートの種類として、学生や社会人向けのワンルーム型か、家族向けのやや大型のアパートにするかということも収益に大きく関わってきます。一般には、家族向けのアパートよりもワンルーム型のほうが入居退去の回転が早いことから、それに伴い、敷金や礼金という収益も大きくなるといえます。
ただ、このワンルーム型のアパートやマンションについては、ゴミの問題など管理が不十分になりがちなことから、一部の自治体ではワンルームの建築を規制するところもありますから、事前調査は欠かせません。
必要な各種条件と事前調査の要点
そこで、いろいろな面から必要な各種条件の調査のポイントをいくつか挙げてみますと、次のようになります。
▽その地域の人口の増減と人口構成の年齢層(つまり、若者が多い町かということです)
▽周囲のアパートの有無(あれば、何型のアパートが多いのか)
▽周囲のアパートの家賃相場(敷金、礼金も含めて)
▽最寄りの公共交通機関までの交通手段(徒歩圏か否か)
▽スーパーやコンビニの有無と距離(ワンルーム型であればコンビニが近いほうが、ファミリー型であればスーパーが近い方がよい)
▽周囲の環境(大きな道路に面していると騒音が嫌われます)
▽周囲に月極の駐車場があるか(アパート敷地内に駐車場スペースがとれないときは、駐車場の有無は入居率に大きく影響してきます)
これら以外にもその地域の特性から調査すべき項目は数多くあると思われますから、労を惜しむことなくしっかり調査しましょう。
このような調査が終了し、アパート経営に乗りだそうとする次の段階は、「資金」ということになりますが、ここからは次回です。
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不動産活用のアパート経営(2) |
今回は、前回に引き続き不動産資産活用としての「アパート経営」第2弾です。
ある程度長期的な収支計画の予測を
何をするにもまず収支計画を立てることが必要です。アパート経営においても自己資金だけではほとんど無理ですから、当然融資を受けなければなりません。収支計画ですから、収入の予測と、支出しなければならないものとを、できるだけ詳細に把握した上で、しっかりとした計画を立てなければなりません。
まず収入の面の予測です。収入は当然家賃ですから、それには入居率が大きく影響します。収支は希望的な数字となりがちですが、予測できる平均的な空室状況と、収支がマイナスになる空室状況を想定した、ある程度長期的な収支計画を立てることが必要です。
家賃の総額は新築時が最大
場所的に不利な条件(駅から遠い、周囲に騒音があるなど)のアパートは、ある程度の空室は覚悟しなければなりませんが、新築であっても年数を経るにしたがってリフォームの必要や、設備の更新、場合によっては家賃の値下げをせざるを得ないことも考慮しなければなりません。
収入を増加させるには、どうしても家賃の値上げということになりますが、新築後数年間は契約更新時ごとにアップすることは可能であっても、古くなるとそうはいかず値下げをせざるを得ないという状況になっていきます。したがって、年間の家賃総額は、新築時の金額が最大であり、後は逓減していくと思ったほうがよいでしょう。
次の収入源は、敷金と礼金です。これは個々のアパートや地域によって様々です。例えば、敷金2カ月、礼金1カ月というケースもあれば、敷金1カ月、礼金なしという場合もあり、これはある程度その地域の慣習によるしかないでしょう。また、少なくとも敷金は、最終的に借主に返還しなければならないものですから、単純に収入として考えることはできません。
最近は「敷金礼金はなし」をアピールするアパートが増えていますから、それに対抗しなければならない現実に直面することもあります。
一方、支出を考えると、固定的なものとしては、固定資産税、通路や外回りなどの電気代、入居者が退去した際に行わなければならないリフォーム代やカギの交換費用などがあります。火災保険や地震保険の保険料も必要です。築後一定期間を経過した後には、ある程度大きな規模での外壁の補修や内装のリフォームを実施しなければなりませんから、この代金については修繕積立金として毎年積み立てておく必要があります。
しかし、そもそもこれら収支計画は、アパートを所有してからの話です。まずは、アパートを新築するか中古を取得するかのどちらにしても、その元手となる費用の工面が最大の難関です。
元手の資金調達は公的機関から検討
自己資金で全額まかなうことはほとんどないでしょうから、金額の多寡はあっても金融機関から融資を受けることは絶対条件です。その場合、企業であればいわゆるメインバンクがあるのが普通ですからよいのですが、個人ですとそうはいきません。現実に融資を受けるには、かなり厳しいかもしれませんが、ここが入り口ですから粘り強く交渉しましょう。
金融機関も数ありますが、まずは公的機関の利用を考えてみて下さい。例えば国民金融公庫であるとか、自治体の地域振興策などにより有利な条件で融資を受けることができる場合もあります。
融資を受ける場合の最大のポイントはなんといっても「金利」ですが、当然、低いに越したことはありません。加えて、固定金利か変動金利かの選択もあります。ただ、この先の金利がどうなるのかは、返済期間が長期にわたるのが一般的なことから、どちらが有利かの判断はつかないでしょう。したがって、これは金融機関との相談になります。
リスクへの対処と管理の方法
実際にアパートを経営していくに当たっては、いろいろなことが起きるのは覚悟しなければなりません。考えられるもっとも大きな問題はなんといっても家賃の滞納です。さらには入居者間のトラブル、契約者以外の人が入り込んで同居してしまうケース、また、清掃などの日常的な管理など様々なものが考えられます。
これらすべてに対処するのは大変なことですから、軽減する方策の一つとして、管理の専門家である管理会社(不動産業者)に管理を委託するという方法があります。委託方法にもいろいろあり、家賃の請求収納だけを委託し、アパート周りの管理だけは自分でするという方法。また、その管理も含め一切を業者に任せるという方法もあります。
さらには、業者がアパートを一括して借り上げ、業者が先に大家に全額家賃を支払い、業者が借主から家賃を収納するという「サブリース」方式というものもあります。この場合は、管理の煩わしさもなく、空室の心配をしなくてもよい半面、未収のリスクは業者が負うため、結果的に家賃収入はそのリスク分だけ減少してしまいます。
結局、他人の手を煩わすほど、自分は楽ではあっても実入りは少なくなるということですから、アパートの規模によって管理はどのような形態をとればよいのかを決める必要があります。
会社経営と同じく長期的ビジョンで
アパートを経営することは、会社を経営することと同じだと思ってください。会社は経営方針を誤ると即倒産の憂き目に遭います。アパートも受けた融資額を弁済できなければ人手に渡ってしまいます。
アパートを所有し経営するということは、収益を生む財産として多大な価値を所有することになります。そして、それは自己一代だけでなく子孫が引き継いでいくことができるものですから、アパート経営をしようとするには、長期的なビジョンをしっかり確立してからスタートしましょう。
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資格者で迷わないために(1) |
世の中には、国家資格や業界団体認定資格を合わせると、実にたくさんの資格があります。その中で今回は、不動産関連の資格を取り上げてみたいと思います。
まず、思いつくままに不動産に関連する国家資格を挙げてみると▽司法書士▽宅建主任者▽建築士▽土地家屋調査士▽測量士▽マンション管理士▽管理業務主任者▽建築施工管理技士▽造園施工管理技士──などがあります。業界団体認定は国家資格よりも多く存在します。資格が多いので、1人で複数の資格を持っている人も少なくありません。
取引の流れで必要な資格を整理
マンションや戸建住宅を購入したり借りたりする場合に、取引のいろいろな場面で専門家の力を必要とすることがありますが、具体的にどのようなときに、どのような資格を持っている人に、何を、どのように頼めばよいかという観点から、さまざまな資格を見ていきましょう。
例えばあるマンションが新築されて、分譲されるとします。それを消費者が購入しようとするときは、通常、分譲業者あるいは販売代理の宅建業者から物件の説明を受け、契約を交わし、代金を支払い、引渡を受けるという流れで取引が進行します。そしてこれらの各段階で、必要に応じて各資格者が関与してくることになります。
しかし、実際には、分譲業者がマンションを建てるには、まず用地を取得し、設計図を書き、建物の工事が施工され、完成してはじめて売却に至ることになり、この売却前の各段階おいても、それぞれ資格者を必要とするのです。
そこでマンションの売買を例にとり、業者が用地の取得から売却に至るまでの売主側からと、購入後の買主側からの部分の大きく二つに分け、どのような場面でどの資格者が必要であるか、各資格の内容を説明しながら、順を追って見ていくことにします。
設計・監理は建築士の独占業務
分譲業者がマンションを建築しようとするときは、用地の取得から始まります。それなりの規模のマンションを建てるには、ある程度まとまった土地が必要ですが、大抵は地主から直接仕入れることが多いので、これについてはほとんど価格の交渉だけですから問題は生じないでしょう。
土地の手当がつくと、次はどのようなマンションを建てるかという設計の段階に入ります。建物の設計・監理をすることができるのは「建築士」という専門家の独占業務であり、その資格は建物の規模などにより1級建築士と2級建築士、木造建築士に分けられています。1級建築士は、設計できる建物の規模に関係なく複雑・高度な技術を要する建築物を含むすべての施設の設計および工事監理を行うことができます。
建築士は、その建物について建築基準法や消防法などの法律の規定に適合した内容の建物を設計し、「建築確認」を受けます。建築確認は工事を開始してもよいという、いってみればお役所のお墨付きなわけで、この建築確認があってから、そのマンションの分譲広告や、実際に分譲することもできます(ちなみに、まだ建物が完成していない段階での分譲を一般に「青田売り」といいます)。
表示の登記は土地家屋調査士
さて、工事が竣工してマンションが完成すると、分譲業者は「表示の登記」をしなければなりません。表示の登記とは、新しく建てられた建物がどのようなものであるかという物理的現況を示すものです。建物であれば、法務局備え付けの登記簿に、所在・家屋番号・種類・構造・床面積が記録されます。
この表示の登記は「土地家屋調査士」に依頼します。土地家屋調査士は、依頼を受けて不動産の表示に関する登記につき必要な土地または家屋に関する調査、測量または申請手続きをすることを業とする者とされています。
宅建主任者は社員の1/5以上
表示の登記が完了すると、分譲業者はいよいよ本格的に販売を開始します。販売については、分譲業者が直接販売するか、あるいは他の業者に販売代理を依頼することも多く行われます。どちらの場合であっても、この業者は宅建業の免許を受けた「宅地建物取引業者」でなければなりません。そして、宅建業者は、宅建業法という法律の規定により「宅地建物取引主任者」という資格を有する者を一定数置かなければならず、その数は、社員5人につき1人以上でなければなりません。例えば、社員が12人の宅建業者は3人の宅建主任者が必要となります。もし、この数に不足する状態が続くと、最終的には免許が取り消されてしまいます。
重要事項説明は宅建主任者のみ可
では、この宅建主任者の資格はどのような内容のものであるかというと、一言でいえば不動産取引の専門家ということです。具体的には、宅建業者はマンションを販売しようとする場合に、宅建業法の規定により、その物件について一定の事項を必ず購入希望者に説明しなければなりません。
購入者が後になって、気に入らなかったり、欠陥があったとしても、お店で商品を買ったときのように、返却したいとか他の物件と交換したいということは簡単にはできません。不動産は何千万円という買い物になるわけですから、十分検討した上で購入し、買った後になって失敗したということがないよう、宅建業者は購入希望者がその判断をすることができる材料を書面に記載して提供する必要があります(この書面を「重要事項説明書」といいます)。
この書面を作成し、実際にその内容を説明するのが宅建主任者であって、これは宅建主任者の資格を有する者でなければできないことになっています。
ちなみに、マンションの売買の場合に、重要事項として説明しなければならない特有なものがありますが、その主なものは▽専用駐車場やバルコニーなどを特定の者に使用させる規約の定め▽計画修繕積立金に関する規約の定め▽通常の管理費の負担額▽管理の委託先の氏名・住所▽売買代金等に関する事項▽ペットの飼育・ピアノの使用禁止等の規約の内容──などがあります。
現物やモデルルームによる検討も含め、宅建主任者による重要事項説明と価格などの交渉が行われ、条件が合致するといよいよ売買契約締結をすることになります。
実は、売買契約というのは民法の規定によれば、本来口約束でもよいものなのです。しかし、現実には何千万円もする物件の契約を口約束ですませようとする人はいないので、必ず売買契約書を作成します。
宅建業法では、宅建業者にその作成を義務付けており、「契約書面」として最低限必要な事項を記載し、買主に交付しなければなりません。
権利の登記は司法書士に
買主は売買契約をすれば、その物件の所有権は自分のものになるわけですが、その権利を確定的なものにするためには「登記」することが必要です。その登記を「権利の登記」と呼び、その登記をする専門家が「司法書士」です。
司法書士という資格者は大きな業務としてこの「権利の登記」の申請があり、他方、小型版「弁護士」とでもいうべき、一定の金額を訴訟により請求することができる裁判の訴訟代理人となることができます。
ここまでは、取引の流れにおける売主側の立場からの資格の話でしたが、買主が権利の登記をして引渡を受けることにより、マンションは名実ともに買主のものになります。
そして、ここからは買主側に関連する資格になりますが、次回にお話ししたいと思います。
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資格者で迷わないために(2) |
前回の続きです。
残代金のローンも無事に審査がおり、マンションの引渡しを受け「やれやれこれでやっと自分のマンションになった」と思っても、実は法的にはまだ完全に自分のものとはいえないのです。
前回書いたように、不動産(マンションや戸建住宅、土地)には登記簿(登記記録)が備えられ、表示の登記がなされます。人間でいえば戸籍と同じようなもので、戸籍謄本を見れば個人の出生、婚姻、死亡などの身分上の重要な事項が分かるように、建物登記簿を見れば、その建物の所在地や種類、新築年月日や増改築などを行った履歴が分かります。
例えば建物であれば、登記項目は次のようになります。
▽所在=東京都豊島区池袋2丁目72番地1▽家屋番号=1番1号▽種類=居宅▽構造=木造2階建瓦葺▽床面積=1階35・23平方メートル、2階18・65平方メートル▽登記原因・日付=平成15年2月9日新築▽登記の日付=平成15年2月10日
しかし、この登記は建物を特定する意味しか有しません。誰に対してもこの建物は自分のものである(法的には所有権といいます)ということを主張するためには、所有権の登記をしなければなりません。
所有権の登記は司法書士に
所有権の登記は登記簿に、所有者の氏名、住所が記載されることによりなされます。この登記を権利の登記といい、この登記をすることの専門家は「司法書士」です。実際に司法書士にマンションの所有権移転登記を依頼するときには、登録免許税として、物件の評価額(売買価格ではなく固定資産税を払う時の基準となる固定資産税課税台帳の登録価格です)に0・4%の税率を乗じた金額を必要とします。
ただ、特例により、そのマンションが2009年3月31日までに取得または新築した居住用家屋であること、さらに新築または取得後1年以内に登記することなど一定の要件を満たしている場合には、この税率は0・15%に軽減されます。この登記の手続きは、通常売主の業者が用意する司法書士に依頼するのが一般的ですが、この司法書士への報酬なども掛かりますので、資金計画を立てる際に忘れてはならないことになります。
弁護士の選定は得意分野を確認
所有権の登記も済ませ、新居での生活が始まりますが、そこで快適に過ごすことができれば、購入した甲斐もあったということになります。しかし、問題が生ずることもままあります。その大きなものが、住んでみて建物の欠陥が分かったという場合です。
例えば、建付けが悪く襖などが閉まらないとか、水回りの処理が悪くて排水がうまく流れないなどということもあります。こうした欠陥は売主業者と直接交渉して解決していくことになりますが、その話が当初の約束と違うなどの理由でこじれた場合は「弁護士」に任せるべきでしょう。ですが、実際に仕事を依頼できる弁護士が身近にいるかというと、そうではないのが普通です。そこで、どのように弁護士を探せばよいのかということになりますが、実は、弁護士といっても、それぞれに専門分野があります。刑事事件を専門としている人や、経済関連の仕事だけで個人の事件は受けない人もいます。
そこで、一般には各地の弁護士会へ出かけていって相談をするというケースが多いと思います。しかし、もっと簡便にインターネットを利用して弁護士を探すこともできます。例えば「弁護士ドットコム」というサイトは弁護士を比較することもでき、なかなか有用なものです。
欠陥の事実確認は1級建築士に
欠陥といっても、特に近時は、建物の躯体自体が強度不足であるというマンションも幾つか露呈していますが、これらの欠陥の責任を誰にどのように追及していくかということは、とても素人の手に負えるものではありません。こうした場合は、まずその欠陥の事実を確定するために「1級建築士」にその調査を依頼します。その上でやはり弁護士に、売主との間で解決を依頼することになります。
ただ、近時の例でも分かるように、躯体に影響があるような欠陥は、そのマンション全体のことですから、個人ではなく、管理組合が前面に出て行くことになるでしょう。
管理業務主任者とマンション管理士
ここで、管理組合の話が出てきましたので、今度はマンションの管理について考えてみましょう。よくマンションは「管理を買え」と言われます。それはいくら高級マンションであっても、管理がしっかりしていなければその価値は下がっていく一方だからです。マンションも大きな資産ですから、その価値はしっかり維持されていかなければなりません。
建物は築年数を経ることにより当然傷んできますから補修や修繕を必要とします。場合によっては、壁面の修補やエレベーターの取り換えなどの大規模のものもあります。そこで、あらかじめ修繕金を積み立て、補修計画を建てて管理をしていくことが必然となります。ただ、大規模なマンションになるほど、これらの管理すべてを管理組合自体が行うことは実際上無理です。そこで、マンションはよほど小規模なものでない限り、必ずこの管理を専門とする管理会社に委託するのが普通です。この専門会社が「マンション管理業者」です。マンション管理業者は、国土交通大臣の免許を受け、マンション管理組合と管理委託契約を締結して、管理を実施します。契約内容によりその内容はさまざまですが、管理費の徴収・会計・修繕計画の立案・清掃などの多岐にわたっています。そして、この管理業者は、管理の専門家として一定の人数の「管理業務主任者」を設置しなければならないことになっています。宅地建物取引業者が、一定数の「宅建取引主任者」設置しなければならないのと同様です。
さらに、マンションにまつわる資格として「マンション管理士」という資格があります。簡単にいうと、マンション管理士は管理組合から依頼を受け、管理組合の抱える問題に対して、相談を受けたり、アドバイスをしたりすることをその業務とします。近時、管理組合の管理が不十分であるとか、管理費用が高額であるなどを理由として、従来から管理を委託していた管理業者を変更して、新規に他の管理業者と委託契約を締結するというケースが増えてきています。それはマンション管理士に相談した結果であることも影響しているようです。
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2回にわたり、不動産に関連する資格について書いてきましたが、どういう場合にどういう資格者を必要とするのかをしっかり把握して、これら「士業」の者を賢く利用しましょう。
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不動産相続人が増える? |
今回は相続にまつわる問題を取り挙げたいと思います。
相続に関しては実際に質問を受けることが多く、その主な内容は▽相続税の申告について▽不動産を相続する場合の登記について▽借金がある場合の相続の方法について──といった事項をよく相談されます。そこで、今回と次回の2回にわたって、3つの事項それぞれについてお話ししながら、相続に関する注意点を整理していきたいと思います。
申告が必要なのは全国平均で約4%
まず、典型的なものとして「相続税の申告が必要か?」「相続税はいくら位かかるのか?」という質問に答えたいと思います。
相続または遺言により財産を取得した人は、遺産の評価額(財産の評価額から債務を控除した後の金額)が相続税の基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要になります。遺産が基礎控除以下の場合には、相続税の申告は不要です。
相続税の基礎控除額は「5000万円+1000万円×法定相続人の数」です。例えば、法定相続人が2人であれば基礎控除額は7000万円、法定相続人が3人(配偶者と子供2人など)であれば基礎控除額は8000万円になります。遺産の評価額が基礎控除額以下の場合には、相続税はゼロですから、その申告も不要であるということです。また、所得税の申告も必要ありません。
ちなみに、相続税の申告が必要な割合(相続税の申告件数を死亡者数で除した割合)は、全国平均で約4%であり、現実に相続税の申告をする必要のあるのは、ごく一部の人に限られるということです。別な言い方をすると、相続税の申告をするほどの″お金持ち″は日本中を見てもそんなにいないということです。
では、相続税の申告をしなければならない約4%の人たちが支払うべき相続税の算定はどのようにするのかということですが、これには複雑な決まりごとがあり、一般の人の手に負えるものではありません。よく、書店に行って相続に関する本を立ち読みし、あるいは購入して、なんとか自分で分かろうとしている人がいますが、おそらくは無駄に終わってしまうでしょう。やはり、最初から税務署または税理士に相談することが近道です。餅は餅屋にということでしょう。
後のことを考えて相続登記は早めに
次に、相続財産として不動産を相続する場合に問題となるのが相続登記です。相続登記は、「いつまでにしなければならない」ということはありませんが、その不動産の名義を相続人名義にせず、そのままにしておくと、将来、急に処分をしなければならない場合などが起こったときに、時間がかかってしまいます。やはりできるだけ早くしておくことが賢明です。
このような事例があります。実家の父親が亡くなったので、駐車場として貸している土地の相続登記をしようと思ったら、その土地の名義がまだ祖父のまま(ひどいときには曾祖父のまま)となっているようなケースです。この場合、その所有権は(曾祖父)→「祖父」→「父」→「本人」という順に移転しているので、相続登記をするには、さかのぼって、これら相続関係をすべて調べ上げ、相続関係を確定させなければなりません。
このように3代、4代にもさかのぼるような場合には、相続人は代が替わるごとにねずみ算式に増えていきますし、また、その間に相続人が死亡などしていることも当然あります。これらの関係を丹念に1人1人の戸籍や原戸籍などを通じて調べるわけですから、相続関係図をつくりあげる調査だけで1年も2年もかかることがあります。こうした調査は司法書士や弁護士に依頼することになりますが、要する費用もかなりのものになりますし、ともかく後の代の者のためにも、相続登記はすぐにすべきです。
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相続税の申告や登記に比べ、より深刻なものに、例えば、親が事業に失敗して借金を残して死亡したが、その借金はどうなるのか、相続人が全部負わなければならないのかという相談があります。このケースについては次回、お話ししたいと思います。
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相続するか、しないか |
前回の続きです。
一般に「相続」と聞くと不動産や現金、銀行預金、株式、絵画など、いってみればプラスの財産だけがその対象と思われがちですが、借金のようなマイナスの財産も相続の対象とされています。
例えば「親が事業に失敗して、借金を残して死亡」した場合や、どう考えてもマイナスの財産のほうが多いとき、あるいはプラスの財産だけだと思っていたところ、死亡後に実はマイナスの財産のほうが多かったということが初めて分かることもあります。
このような場合、誰しもマイナスの財産は受け継ぎたくないものです。そこで、何か方法はあるのでしょうか。
相続の方法は三つから選択
実は、相続が開始した場合、相続人は次の三つのうちのいずれかを選択できます。
(1)相続人が被相続人(亡くなった人)の土地の所有権の権利や借金などの義務をすべて受け継ぐという「単純承認」をする。
(2)相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない「相続放棄」をする。
(3)被相続人の債務がどの程度あるか不明であり、財産が残る可能性もある場合などに、相続人が相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐという「限定承認」をする。
このうち、(2)の方法は始めから相続人になることを放棄するわけですから、マイナスの財産を負うことはありません。ただし、プラスの財産も放棄することになります。
(3)の方法は、例えば残された借金のほうがプラスの財産より多くても、プラスの財産の範囲で借金を返せば残りの借金は払わなくてもいいというもので、これを限定承認といいます。プラスの財産を受け継ぐことはできませんが、少なくともマイナスの財産を負わなくても済みます。
そして、(2)の方法も(3)の方法もとらない場合は、相続人は@の単純承認をしたものとみなされますので、この場合にはプラスの財産もマイナスの財産もひっくるめてすべて相続することになります。
限定承認の場合は家裁に申述が必要
ここで、(3)の限定承認について少し詳細に述べると、限定承認をするには家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。その申述すべき期間は民法に規定があり、熟慮期間といって自己のために相続の開始があったことを知ったとき(被相続人の死亡を知ったときであって、死亡時ではありません)から3カ月以内に相続人全員でしなければならないと定められています。相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、申立てにより、家庭裁判所はその期間を延ばすことができます。
ちなみに、限定承認をする場合の家庭裁判所に対する申述の方法は、次のように定められています。
(1)申述先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所。
(2)申立てに必要な費用は、収入印紙800円と連絡用の郵便切手。
(3)申立てに必要な書類は▽相続の限定承認の申述書1通▽申述人の戸籍謄本1通▽被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本、除籍、改製原戸籍など1通▽住民票の除票各1通▽財産目録1通。
そして、限定承認をした者は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者および受遺者(遺言により財産を取得した者)に対し、限定承認をしたことおよび一定の期間内(2カ月を下ることは不可)に弁済請求の申し出をすべき旨を官報に公示しなければなりません。
以上、前回と2回に分けて、相続に関してよく聞かれることが多いものを取り上げましたが、実は相続をめぐって一番問題となるのは遺産分割に関するものです。
遺産分割協議は調わない!?
相続が開始すると、遺産は一応、共同相続人の共同所有となります。そのままでは各相続人単独の所有財産とはなりません。遺産が現金や銀行預金、株式などの分割可能なものであれば相続人の相続分に応じて分割することができます。一方、遺産が不動産や車、絵画などの動産であったりすると、分割をすることができませんから、そのままにしておくと、それらは全部相続人の共有という形になります。しかし、それでは、これらの遺産を管理したり、処分をしたりするには大変不便です。
そこで、この共有状態を解消して、それぞれ単独所有にしようというのが遺産分割です。基本的には相続人全員が話し合って、誰がどの財産を所有するかを決めることになります。この話し合いを「遺産分割協議」といい、相続人の1人でもこの話し合いに欠けると、遺産分割協議は無効になってしまいます。
問題点というのは、この遺産分割協議は任意に行われますが、相続人が多かったりすると、なかなか協議が調わないことが多いものです。この話し合いによる解決ができない場合には、裁判所における手続きによることになります。実際には、家庭裁判所に「家事調停」の申し立てをすることになります。
家事調停は、家庭に関する事件などについて、裁判所が間に入って話し合いで解決を図るものですが、ここでも話がまとまらなければ、次に「審判」手続きが開始されます。これを「家事審判」といいます。家庭裁判所にいる審判官が、職権でさまざまな調査をしたうえで、相続財産ごとに具体的な分割の最終的な決定を下すことになります。
話し合いの手順はこのようになされますが、実際の調停や審判の場に立ち会うと、凄まじいものがあります。親族身内が相続財産をめぐって、髪の毛を引っ張り合って取っ組み合いまでやっているケースも現実にはあるのです。それほどまでに人の欲望は果てしないものであるかを、まさに実感することになります。
しかし、相続財産がなければこのようなことも起こりようがないので「子孫に美田を残さず」と言われているのは、ある意味正解なのかもしれません。そして、最後にこのような状況を皮肉った川柳を一句。
遺産分け 母のもらい手 誰もなし
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価格の透明化が課題 |
不動産の価格については、以前もこの連載において取り上げたことがありますが、今回は国土交通省が2005年から三大都市圏の政令指定都市などを対象に取引価格に関する調査を実施し、発表している「不動産価格情報制度」を中心に見ていくことにしましょう。
実勢価格と公示価格の差は?
その前に、不動産の価格についておさらいをしておくと、不動産の価格には、実際に売買された取引価格(実勢価格)の他に、「公示価格」「標準価格」「路線価」「固定資産税評価額」の4種類があり、これを不動産の「一物四価」と称しています。通常「物」の価格には卸値と小売値とがありますが、不動産の価格には卸値という概念はありません。取引される価格がその不動産の価値なのです。ではなぜ「四価」という価格があるのかというと、それは市場で取引される価格ではなく、いろいろな場面で基準値として利用するために用いられる価格なのです。
では「取引価格(実勢価格)」と国土交通省による一般の土地取引価格の指標である「地価公示価格」との差異はどの程度かというと、バブル崩壊前「地価公示価格」は「実勢価格」の約80%、他の価格もそれぞれ実勢価格に対し、一定の水準でした。バブル崩壊後は、その水準が崩壊している地域があり、一時期地域によっては、固定資産評価額が実勢取引額よりも高くなることもあったくらいです。さすがに現在それは是正されていますが、昨今の不動産実勢価額の低迷はまだまだ長引くことが予想されていますから、元の対比水準に戻ることは考えにくい状況でしょう。
不動産取引の生の情報を提供
そのような中で国土交通省は″景気対策の根幹は不動産市場の活性化にある″という発想のもとに、不動産取引の活発化にやっきになっているようです。そもそも不動産取引は、不透明さや不確実な部分があり、この課題が是正されなければならないという認識から、その必要性や具体的な方法が以前から議論されてきました。
現実に昨今の不動産に関する情報は多様化しています。例えば、ある地域内で3DK程度のマンションを購入しようとします。そのときにその地域内に同規模の複数の売り出し物件があれば、それらを比較することで、価格なり物件の優劣の程度などの情報は比較的簡単に分かるかもしれません。しかし、その地域内に比較すべき売り出し物件がなければ、それらの情報を手に入れることはできません。
このような場合、すでに完売している物件の購入者から、その購入物件のいろいろな情報をあらかじめ提供してもらい、それを情報として包括的にストックすることで、不動産取引を考えている誰もがそれを簡単に閲覧することができるようになれば、比較する物件がない場合にも情報が得られます。この仕組みが国土交通省の「不動産の取引価格情報提供制度」といわれるものです。
この不動産取引価格情報は▽実施主体=国土交通省▽調査方法=取引当事者へのアンケート調査▽価格の性格=売買価格▽価格の内容=実際に取引された価格▽取引内容=土地(更地)、建付け地、中古マンション▽情報提供=全国約10万件(四半期ごとに追加)──などが主な内容です。
ここにいう不動産取引情報の価格は、実際に取引された土地または土地建物一体の価格ですが、実際の取引は値上がりを見越して買い受けるいわゆる買い進みや、また逆に売り惜しみなどさまざまな事情があることはきわめて当然です。その意味では、まさに生の情報を提供して取引の参考にしてもらうという趣旨です。そして、より内容を充実させるため、さらにこれら以外にも情報の内容を拡大することが検討されています。マンションであれば、最寄り駅の名称、その所要時間、容積率・建ぺい率、建物の建築年などの項目の追加が予定されています。
件数不足だが今後に期待
この制度は、05年度から国土交通省が法務省より情報の提供を受け、不動産購入者に対して取引価格などに関する調査を行っており、06年4月17日から稼働しています。調査結果は、個々の物件に関する個人情報が特定できないようにされており、国民一般はインターネットから無償で提供を受けることができます。
ちなみに、07年10月から12月分の調査結果(対象地域は全国の県庁所在都市など地価公示対象地域となっています)は、08年4月16日から公表されています。この期間の総物件アンケートの提供件数は1万9222件となっていますが、不動産業界において参考とするにはまだまだ件数が不足しているのが実情でしょう。そのため、国土交通省ではこの制度を法制化して、情報提供を義務付ける方針のようですが、いずれにしても無駄な税金の投入にならないように、心して取り組んでほしいものです。
この不動産取引情報価格の検索サイトに興味のある方はのぞいていてみてはいかがでしょうか。
▽http://www.land.mlit.go.jp/webland/
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不動産担保の方法(1) |
不会社が金融機関から事業資金の融資を受けるため、その所有する不動産を担保に入れるということは、日常的によく行われることです。そこで今回は、金銭の貸借の場合における不動産担保の方法についてお話ししたいと思います。
金銭を貸し付ける際に不動産を担保とする方法にはいろいろあり、例えば「抵当権」「質権」「譲渡担保」「仮登記担保」「買戻し」「リバースモーゲージ」などがあります。このうち、民法では「抵当権」「質権」という制度が典型的なものとして規定されていますが、今回は特殊な担保手段である「仮登記担保」「譲渡担保」などについてお話しします。
仮登記担保
債務者が、金銭債務を返済できない場合には、担保物を債権者に売却する(または物をもって弁済に代える)ことを債務者が約束し、そのことを仮登記しておくことを仮登記担保といい、「仮登記担保法」にその根拠があります。
実務において、金銭担保の手段に不動産を担保する方法としてもっとも用いられているのは「抵当権(あるいは根抵当権)」です。しかし、抵当権は、債務者が債務の履行をしないときには、その回収を図るために裁判所に対して担保権の実行として競売の申し立てをしなければなりません。申し立てにはそれなりに費用を要します。さらに、現実に弁済を受ける配当の時点までには、一般的に1年から長いときには2年という時間がかかります。また、不動産価格が低迷した場合などは、競売にかけられても買受人がいないため売却できないというケースも多くなってきます。
そこで、これに替わるもっと簡易な債権回収はないかということから考え出され、昭和の中頃から実務に用いられてきたのが、仮登記担保という方法です。もともとは、民法の代物弁済または代物弁済予約のことです。
具体的には、抵当権の設定の登記と合わせて代物弁済の予約契約を債務者と締結し、その予約に基づく権利(所有権移転請求権)を保全するために担保不動産にその旨の仮登記をして、債務不履行があったときはこの予約権を完結、結果的にその不動産の所有権を取得してしまうという方法です。
しかし、例えば債権が1千万円あり、担保不動産の価値が3千万円だとすると、債権者は1千万円の債権の焦げ付きで3千万円の不動産をまるまる取得することができることになってしまいます。このようなことから、当初は街の金融業者が専らこの方法によって丸儲けをしていたといういきさつがありました。そこでまず、1952年に最高裁判所が債権額の6倍の価値のある不動産を代物弁済として取得するのは公序良俗に反し無効であるとした判例を出し、67年には、この仮登記を抵当権の本登記と同じように考え、債務額より不動産の価格が高い場合の差額は債務者に返すべきであるという判断を下しました。
さらに、最高裁判所大法廷は74年、仮登記担保権に関する判例法理を詳細に展開し、これらの理論を構築しました。以上のような経緯を受けて政府は、78年に現在の「仮登記担保法」を制定したのです。
差額は清算払い
仮登記担保法の仮登記担保契約は、代物弁済の予約・停止条件付の代物弁済予約・売買予約など名称はどうであれ、将来弁済期がきて債務不履行があれば債務者の不動産の所有権は債権者が取得することをその内容とするものです。
例えば、債務者所有の不動産に登記の原因を「代物弁済予約」とし、登記の目的を「所有権移転請求権仮登記」とする仮登記を行い、これによって金銭債権を担保するという方法です。
この法制度の骨子は、前記の債権者による不動産の丸取りを防止するため、債権額と不動産の価格を比較し、もし不動産の価格が債権の額を上回っている(差額がある)場合には、債権者は債務者にその差額を清算金として払わなければならないということにあります。そのため、仮登記担保権者は、代物弁済予約に係る予約完結の意思表示に加えて、2カ月経過後における清算金の金額を債務者に通知すべきものとされ、予約完結の意思表示をして2カ月後に清算金を支払って初めて、代物弁済が完結します。
仮登記担保法は、このような規制があるので、担保権者は従前のように担保不動産をまるまる手に入れるということができません。したがって、代物弁済予約は一部の金融業者を除いて、現在は、あまり使われなくなっています。
譲渡担保
譲渡担保は仮登記担保のように法で定める担保権(典型担保)ではなく、判例法上で認められてきた非典型担保の一種です。簡単にいうと、金銭債務の担保として、債務者の所有する物(動産でも不動産でもよい)を、債務者が債権者に形式的に譲渡し、債務が全額弁済されると同時に債務者が債権者からその物を買い戻すという仕組みです。
不動産の譲渡担保においては、債務の担保として債務者の不動産の所有権を債権者に譲渡し、債務の弁済が完了した時点で不動産の所有権の登記を債務者に戻すといものです。もし、債務者が債務を弁済できないときは、暫定的に債権者に移転していた所有権は、確定的に債権者に帰属することになります。一見、質権と似ていますが、質権を設定すると担保対象物を債権者に引き渡す義務が生じることから、債務者は担保物を継続的に使用できなくなるのに対し、譲渡担保であれば担保物をそのまま使用できるため、抵当権を設定することができない動産(工場の機械一式など)の担保手段として多く用いられます。
時間・費用が節約
不動産を譲渡担保にとる場合のメリットは、なんといっても不動産所有権が債権者に形式的にせよ移転してしまうことにより、債務者に対しプレッシャーをかけることができるという点にあります。抵当権の場合には抵当権が実行(競売)され、買受人が買受代金を裁判所に納付するまでは、所有権を失うことはありませんから、それに比較すると債務者に与える心理的影響は大きいといえます。
また、抵当権と異なり債権回収の手続きも裁判所を経由する必要がないことから、抵当権と比べて時間と費用を節約することができます。一方、デメリットを考えると、先順位で譲渡担保を設定すると、所有権が債権者に移転することから、仮にその不動産に担保価値が残っていたとしても、その後、事実上その不動産では融資を受けられなくなってしまいます。
そして、回収のための譲渡担保の実行も、裁判によらない私的実行であることから、債務額を不動産の価額が超える場合には、代物弁済予約の場合と同様に債権者はその超過部分を債務者に清算金として返還しなければなりません。この清算義務は判例により確立したものです。
なお、譲渡担保という場合には、不動産を担保に金銭の貸借をするのではなく、債権者に担保不動産を売却した形をとり、その代金を受け取った上で一定期間内にその不動産を買い戻すといった、当事者間に債権・債務関係を生じさせない法構成の形式を取る「売渡担保」も含まれます。
◆ ◆ ◆
今回は少し難しい内容になりましたが、特殊な担保には、まだまだ「買戻し」「再売買の一方の予約」「リバースモーゲージ」などいろいろあります。これらについては次回にお話ししましょう。
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不動産担保の方法(2) |
今回は前回に引き続いて、債権の担保手段のいくつかを見ていくことにします。前回は「仮登記担保」と「譲渡担保」を取り上げましたが、今回はまず「買戻し」と「再売買の予約」です。
買戻し
「買戻し」は簡単にいうと、債務者はその所有する不動産を担保のために債権者に譲渡し、債務を全額弁済すると同時に、その不動産を債権者から買い戻すという仕組みです。この制度は民法に根拠をおき、民法では売買の特約として規定しています。
実際の手続としては、最初(当初借り入れをした時点)の売買契約と同時に買戻しの特約をして、債権者への所有権移転登記にあわせて買戻し特約の付記登記をします。付記登記は、所有権移転登記と同一順序を確保するため、主登記(所有権移転登記)の番号を用い、その番号の左側に付記何号と記載して表示される登記です。
ただ、この買戻しは、担保にとった不動産を債権者が占有することになるので、債権者は不動産から生ずる利益を取得できるかわりに、債務者から利息を得ることはできません。さらに、債務者が買戻す代金は、当初の売買契約時の代金と同額であるなど、適用要件が厳格であるうえ、債権者にとってはデメリットが多く、使い勝手が良くないということから、実務においては、ほとんど使われていないのが実情です。
ごく親しい親族間の金銭貸借の担保に、形式的に不動産の所有権移転の形式をとるといったケースには適している方法です。
再売買の予約
「再売買の予約」は、やはり融資の担保に用いられますが、民法上そのような規定があるわけではなく、売買契約とともに反対売買の予約をすることにより行われる方法です。
例えば、BがAに1000万円を融資する場合、Aの1000万円相当の土地を担保に入れるとします。このとき、その土地をAからBへ売却する形をとりますが、その売買代金1000万円は融資した金額とされ、AがBに弁済したときに、その土地を今度はBがAに再び売却することにします。このことを最初に融資をする段階で約束しておくこと(これを再売買の予約といいます)により、売主は将来その不動産を取り返すことが可能となるという仕組みです。
前述のように、「買戻し」については、その同時の登記や期間的な年数制限など要件が厳しく定められているうえ、買戻しの金額は当初の売買金額と同額のため、うまみがありませんが、「売買予約」はあくまで最初の売買契約とは別個の売買なので、価格などを元の売買契約と関係なく定めることができます。
ただ、この再売買の予約も「買戻し」と同様、現在実務においては、前回述べた代物弁済の予約等による仮登記担保を利用することが多く、ほとんどその例をみないといってよいでしょう。
リバース・モゲージ
次にやや変わった担保方法に「リバース・モゲージ」があります。
実はこれについては、既に第30回の連載で解説しているのですが、再度その概略を紹介しておきます。この「リバース・モゲージ」という融資システムは、老後の生活資金調達方法の一つで、地方自治体が運営する「公的プラン」と信託銀行などによる「民間プラン」がありますが、最初にこの方式を採用した自治体である東京の武蔵野市の名前をとって、別名「武蔵野方式」とも呼ばれています。
この制度の概略は、貸し手(例えば武蔵野市)は、借り手(住民である一般市民)の所有する建物や土地を担保評価して貸付限度額を設定し、借り手はその限度額に達するまで毎月一定額の融資を受け取ることができます。そして、借り手が死亡した後に、担保となっていた不動産が売却され、借入金が一括返済されて精算されるという仕組みの総称です。
一般の住宅ローンが、不動産の購入資金を、一括で借りて元利金を定期的に分割して返済していくのに対して、リバース・モゲージは、死亡後の不動産売却代金を担保として、定期的に借入を継続していき、それを生活資金などに充当、死亡時に元利一括して返済するという、言ってみれば「逆住宅ローン」のようなシステムです。このように、この制度はいわゆる一般の資金融資のための担保とは異なった担保方法に分類することができます。
サブプライムの影響は
そして、最後に昨年から話題となっている、アメリカの景気後退の引き金となった「サブプライムローン」とはどういうものか、簡単にみておきましょう。
本来、低所得者や信用力の低い個人層を「サブプライム」と呼びます。そうした層への住宅ローンが「サブプライムローン」です。所得や資産が多く返済能力の高い優良顧客(プライム層)向けの「プライムローン」ではない、という意味で「サブプライムローン」と呼ばれるものです。
この制度の創設は1980年代であり、低所得者の住宅取得の促進をその目的としています。その特徴として、融資の審査は比較的簡単ですが高金利であったことから、アメリカの中央銀行は景気を支えるため03年から金利を低くし、その結果サブプライムローンの融資残高は06年末で約100兆円にまで達しました。そうすると当然のことながら、その焦げ付きの防止策が必要とされ、その手段として考え出されたのが、この「住宅ローン債権」を小口の証券化商品として、投資家や、ヘッジファンド(富裕層などから資金を集め株などに投資、運用することにより高収益を狙うファンド)に売却するという方法です。
しかし、この好景気もいつまでもつづくわけではなく、06年後半以降、金利上昇などを背景に米国の住宅バブルがついにはじけ、サブプライムローンの焦げ付きが急増しました。サブプライム関連証券の価格は暴落し、それを多量に保有していた欧米金融機関の巨額の損失が明るみになり、例えば、大手のニュー・センチュリー・ファイナンシャルの経営破綻が懸念されるとして取引が停止され、上場廃止となりました。これらをきっかけに今や、世界金融市場や世界経済の混乱を巻き起こしており、好景気を誇っていたアメリカ経済の景気後退が一層明白になっています。加えて、原油高、ドル安などの要因は、アメリカ経済のみならず、このままでは世界同時恐慌という筋書きが待っているのかもしれません。
折しも、日本ではG8サミットが開かれていました。地球温暖化対策というテーマも重要ですが、いま起こっている明確な経済対策をもっと話し合う必要があったのではと思うのですが……。
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ニーズに合わせて住み替え支援 |
今回のテーマは「住み替え支援」です。
着実に高齢化社会に向かっているわが国ですが、その住まいに着目してみると、特に地方都市では中古住宅の流通がほとんどないため、高齢者が所有する住宅の″空き家化″が増加してきています。十分利用できる住宅が空き家化し、放置されているケースです。そこで、こうした高齢者の住宅を借り受け、ファミリー世帯に転貸したり、住み替え先になる賃貸住宅に関する情報を提供するなど、高齢者の住み替えを支援する動きが地方自治体、各種法人、NPO団体、財団法人などを中心に始まっています。
そこで今回は、この住み替え支援の現状を見ていきましょう。
空家でも家賃保証
本来、人が生活の根拠とする住まいは、その人のライフスタイル、世帯構成により、年月を経るごとに変化していくものです。しかし、いずれにしても晩年にさしかかると、子供と同居をしていなければ、やがては老夫婦だけになってしまうのが通常です。そうすると賃貸住宅に住んでいるのならいざ知らず、持家である場合には老夫婦2人、あるいは単身となり、家が広すぎて日常の管理にも手を焼くということにもなります。持家はあっても、無用の長物ということになりかねません。
そこで考えだされたのが「高齢者の住み替え支援制度」です。この仕組みの概要は、高齢者の所有する住宅で、耐震性など一定の基準に適合する住宅を、賃料を保証して長期的に借り上げ、その物件を子育てなどで広い住宅を必要とする世帯へ賃貸するというものです。
現在、この住み替え支援制度に取り組んでいるのは国、地方自治体、財団法人、中間法人、NPO、民間会社など様々です。そして、これらはその仕組みが少しずつ異なり、それぞれに特徴があります。
ハウジングアンドコミニュティ財団の「住み替え支援活動ガイドブック」によれば、現在、地方自治体などが13団体、NPOなどの任意団体が10団体、中間法人が1団体、株式会社が4団体となっています。そこで、この中からいくつかの実施例を具体的に挙げてみましょう。
まず、国のモデル事業(2006年から実施)について見てみると、移住・住みかえ保証機構が借り上げ主体として登録され、保証している家賃のうち、通常の保証により担保されるものを超える部分を基金が3年間保証する仕組みをとっています。この制度の利用には次のようなメリットがあります。
通常の借家契約では、いったん賃貸物件である借家について賃貸契約を結んだ場合、それ相応の正当事由がない限り貸主の都合で明け渡してもらうこと(契約解除)ができないようになっていますが、同機構の「マイホーム借り上げ制度」の定期借家契約では、期間満了の半年前に契約解除の事前通知をすることで契約終了(明け渡し)が可能となっています。この制度の定期借家契約は貸主にとって極めて有利な制度といえます。
また、家賃保障も大きな魅力です。借り手が決まらない場合にも、同機構より事前に決められた家賃が支払われます。貸家とする時に耐震補強や、補修をした場合の費用も家賃の中から支払う制度があり、その制度を利用している時でも、契約期間中は家賃として支払いを受けることができるという安心感があります。
空き家の状態でも家賃が正当に支払われるのか心配ですが、マイホーム借り上げ制度は、厚生労働省、国土交通省の外郭団体である高齢者住宅財団に5億円の債務保証基金が設定されており、同機構は基金の登録事業者になっています。
高優賃とセットも
次に地方自治体の例として、横浜市(横浜市住宅供給公社)の場合を見てみましょう。
横浜市の場合の骨格は(1)住み替え情報の提供・相談(2)市住宅供給公社による高齢者の持家の子育て世帯へのサブリース事業(3)高齢期の多様な居住ニーズに適した住み替え先として高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)の供給を促進すること──などにより、総合的に住み替えを支援しています。
(1)については、ケースワーカーの講習を受けた相談員(公社や市の職員OB)が、生活設計を含めて住み替えの相談に応じています。(2)については、公社(協力管理会社と別途協定締結)が、定期借家制度を利用して、高齢者の持家(戸建、マンションなど)を子育て世帯に転貸します。この住み替え事業での賃貸は、6年契約の定期借家を標準としています。そして、(3)では当該高齢者は市場家賃の9割以下の賃料で転貸することを条件に、高齢者向け優良賃貸住宅に優先的に入居できることになります。
この場合の制度の対象となる住宅は、耐震関係規定に適合することが条件であり、耐震改修およびリフォームを行う場合は、市の補助制度の利用(耐震改修費補助は最大150万円)が可能です。従って、この制度がより多く活用されれば、適用を受けるために住宅の耐震化も進むものと見られます。
なお、Bについて横浜市は、高齢者の住み替え先として高齢者向け優良賃貸住宅の供給の促進を目指しており、数百戸単位での供給を見込んでいるようです。
富山市においても同様に、まちなかに居住を希望する高齢者世帯の持ち家を市が借り上げ(定期借家)、子育て世帯など広い住宅を必要とする世帯に転貸する制度を07年1月から実施しています。賃貸借契約などの仲介や、市が転貸する高齢者住宅の入居や退去の手続、建物管理などの一切を、そのノウハウを有する不動産関係団体などと連携をとることにより、事業の円滑化を図っています。
なお、この「住み替え支援」制度と類似した制度に「リバースモゲージ」があります。自宅を担保にして銀行などの金融機関から借金をし、その借金を年金という形で受け取るというもので、年月と共に借金が増えていき、死亡時に自宅の評価額と同じになるように相殺することで調整するという仕組みです。死亡時に金融機関が契約者の自宅を引き取るという自宅を担保にした年金制度の一種ですが、これには▽予想以上に長生きして、借入金の残高が不動産の価値を超えてしまう▽不動産の価値が下落して担保割れになる▽支払金利が高くなる──などのリスクがあることから、現在はあまり利用されていないようです。
このようなことからも、そのリスクを負わない「住み替え支援」は制度として着実に増加してきており、高齢化が進むわが国においては、必須の制度として定着していくのではないでしょうか。
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共有名義のメリット・デメリット |
一つの財産を1人で持っている状態を単独所有というのに対し、一つの財産を複数の人で共同所有することを共有といいます。特に不動産を共有する場合においては、単独所有との違いがいろいろな場面で出てきます。その違いをメリット、デメリットという観点から見ていきましょう。
不動産を共有する場合のパターンとして@相続の場合A友人と別荘を共有する場合Bマンション(戸建)を購入し夫婦名義にする場合──などが考えられます。特に最近は、マンションを購入する際に、夫婦や親子などで「共有名義」とすることも多いようです。不動産を「共有名義」にするということは、複数の人間が出資して、その出資割合に応じて共有登記することを言います。
それではまず、マンションを購入し、夫婦の名義にしようという場合を例にとって、共有について考えてみましょう。
不動産を共有する場合には、その持分割合を必ず決めなければなりません。その場合の持分割合は、夫婦が出し合った資金割合で決めるのが一般的です。もし、その割合を半々にしたい場合には、夫婦半々で資金負担することになります。むろん適宜な割合にすることも可能ですが、お金を出したのに出していないことにしたり、お金を出していないのに出したことにしたりすると贈与税の対象になる可能性があります。
このようにして購入したマンションは、共有の登記をすることにより持分の所有権は確定的に各共有者のものとなり、これにより共有者は単独で自分の持ち分を第三者に売却することもできることになります。
では、単独所有と比較した場合のメリットとデメリットについて見てみましょう。
税制上で有利
まず大きなメリットとして、税制上の各種特例を受けられることがあります。
(1)「居住用財産の譲渡所得の3000万円控除の特例」が、夫婦おのおので適用できるようになります。住宅の名義が共有になれば、住宅を売って利益が出ても、1人当たり3000万円までの売却利益には税金がかかりません。
(2)「住宅ローン控除」を受ける場合も、共有名義のメリットがあります。この住宅ローン控除は、ある一定の条件を満たしていると、新築や中古住宅の購入などにかかる借入金の額に応じて、その年に納めた所得税の一部が還付されるという制度で、金融機関などから借り入れる契約を連帯債務など夫婦での契約に変更すれば、おのおのが負担するローンの年末残高を基にした「住宅ローン控除」を受けることができます。なお、住宅ローン控除(減税)は今年末に期限を迎えますが、国土交通省の09年度税制改正要望などによると継続も検討されています。
(3)通常、年間110万円を超える贈与については、贈与税がかかりますが、共有名義にすると、それを払わなくて済みます。
トラブルの原因に
一方、デメリットとしては以下のようなものが挙げられます。
(1)共有者は単独で自分の持ち分を第三者に売却することができます。しかし、住宅の建替えや売却など、共有物全体の変更や処分の場合には、共有者全員の同意が必要ですから、それだけ手間がかかります。
(2)共働きを前提として夫婦の共有名義でローンの返済を始めた場合、完済前にどちらか一方が退職してしまうと、出資の割合が異なることになりますから、贈与税の課税対象となってしまう可能性があります。そのため、共有名義を単独名義に変更する場合、登記変更の費用の他に所得税(譲渡所得)あるいは贈与税が発生します。
(3)共有者のどちらかが死亡した場合、相続によりまったく知らない他人が共有者になることも考えられます。
(4)共有者の一人が固定資産税を滞納すると、他の共有者がそれを負担することになります。
(5)そして、もっとも困るケースは、共有者の一方が自己破産をした場合です。破産は残余財産の清算手続きですから、破産者の所有不動産は競売にかけられ債権者へ弁済されるのが原則です。競売されると、その買受人と不動産を共有することになります。結果的に見知らぬ人との共有になるわけです。
これを避けるには、自己破産者の共有者が協力して、全体として売却してしまうか、あるいは破産してない共有者が、破産した共有者の持分を取得するなどしなければなりません。
共有名義の解消
当初は不動産を共有名義とした場合でも、何らかの理由で単独名義に切り替えることもあります。それでは、いったん共有した不動産の共有を解消(単独所有にする)するにはどのようにすればよいのでしょうか。
不動産の共有状態を解消するには、不動産そのものを現物分割により単独所有にする方法と、他の共有者の持分を買い取る方法(価格賠償)があります。
現物分割とは、文字どおり不動産をそのまま分割するという方法です。ただ、現金を分割するのは簡単ですが、不動産を分割するということは簡単にはいきません。建物については事実上不可能です。土地などの不動産を分割する場合は、土地の分筆を行い分割することになります。分筆とは、登記簿上でひとつの土地を、数個に分割して登記し、それをおのおのが取得するということになります。
価格賠償という方法は、共有者の1人が不動産を取得して、その代償として他の共有者に金銭を支払うことにより、その者の持分を取得することで所有権の全部を取得する方法です。
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以上、共有名義のメリット、デメリットなどを見てきました。最後に結論として、ケースバイケースによるのですが、不動産を共有名義にすることは、税制上のメリットは大きくても、後で思っても見なかったトラブルが発生することもあります。将来の売却や相続のことまで考えて、共有名義にするか単独所有にするか、慎重に選択することが必要でしょう。
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地籍調査は進展しない緊急課題 |
今回は「地籍」についてのお話です。地籍とは一筆ごとの土地に関する記録であり、人の戸籍のようなものです。人に氏名、生年月日などが記された戸籍があるように、土地にも所有者や地番、面積などがあり、それを土地の場合は「地籍」と呼びます。また、「一筆」とは登記してある土地ひとかたまりを表す単位です。
この地籍と紛らわしい言葉に「地積」という用語がありますが、混同しないようにして下さい。地積とは土地の面積のことです。この地積は、不動産登記簿に、平方・単位で記載されますから、不動産登記簿で確認することができますし、また、測量図がある場合は、測量図で面積の確認が可能です。しかし、登記簿上の土地の面積と実際に測量したときの土地の面積が、必ずしも一致しているとは限りませんので注意が必要です。
進捗率は50%以下
ところで、「地籍」に話を戻しますと、例えば土地の売買などの取引をしたり、相続が発生したり、また地方公共団体が公共用地を取得しようとするような場合に、必ず地番、地目、境界、土地面積、所有者などの地籍情報が必要です。このような地籍情報は、登記所の登記簿(登記記録)と地図によって表されています。
しかし、現在、法務局備え付けの地図は明治時代の地租改正によって作られた地図(公図)をもとにしたもので、土地の境界が不明確であったり、測量も不正確であったりするため、土地の実態を正確に把握することができず、そもそも、面積、形も現状と合致しないので、現地を特定できません。
そこで、限りある土地の有効活用・保全のためには、土地の実態を正確に把握する地籍調査の実施は緊急課題となっています
地籍調査とは、一筆ごとの土地について、その所有者、地番・地目の調査、境界、地積に関する測量を行い、その結果を地図および簿冊に作成することをいいます。地籍調査により作成された「地籍簿」と「地籍図」は、その写しが登記所に送付され、登記所において地籍簿をもとに土地登記簿が書き改められ、地籍図が不動産登記法上の地図として備え付けられます。
地籍調査の成果は、個人の土地取引から公的機関による地域の整備まで、およそ土地に関するあらゆる行為のための基礎データとなるものです。これについては、内閣官房長官決裁で、地理空間情報活用推進会議が設置され、その中で法務省に対し、「登記所備付地図及び公図の電子化」を2010年までに完了するとされています。
また、これに伴い、地理空間情報活用推進基本法が制定され、地図関連業務における番地図情報の相互活用ということで、「国および地方公共団体は既に整備された基盤地図情報相互の活用に努めるものとする」とされ、今まさに急ピッチでその整備がされているところです。
基盤地図情報相互の基本となるデータは国土地理院がGIS(地理情報システム)といって、位置や空間に関する様々な情報をコンピュータを用いて重ね合わせ、情報の分析・解析を行ったり、情報を視覚的に表示させるシステムが用いられています。
国土交通省の地籍調査ブロック別進捗状況によると、現在の全国平均の整備の進捗率は48%となっていますが、地籍調査の着手が遅れれば遅れるほど、土地境界の調査に必要な「人証」や「物証」が失われて調査が困難となっていきますので、できる限り早期に調査を行い、正確な土地情報を残しておくことが求められています。
縄はのびたり縮んだり
それではここで、この整備がされないままでいることの不都合と、地籍が整備された場合の効果について、いくつかの例を挙げてみましょう。
(1)地籍調査が行われておらず、土地の境界などが不明なままの地域では、土地についての係争が発生しても正確な境界を明示できないので、なかなか解決しません。しかし、一筆ごとの土地の境界が明確に確認されていれば、その記録により、将来の境界の紛争が未然に防止でき、土地取引や相続が円滑に行われるようになります。
(2)また、大規模災害などが起こって、その復興をしようとする場合、土地の境界や権利関係がはっきりしていなければ復旧に支障を来すことになります。実際にこの例はいくつかあるようですが、このような場合であっても地籍情報が整備されていれば迅速にかつ余分な費用をかけずにできることになります。
(3)さらに、登記手続きの簡素化にもつながるメリットがあります。土地を分筆する場合、通常は隣接地との「境界確認書」を添付した上で、登記所に申請を行いますが、この境界調査には多額の費用と時間を要します。しかし、地籍調査が行われていると、境界確認作業がスムーズに行われ、登記の段階においても市町村が作成した「地籍調査成果証明書」をもって登記申請に必要な境界確認書に代えることとしているので、登記費用の軽減を図ることができます。
(4)土地の有効活用という観点からいえば、都心の中心市街地の開発などにおいても、一部の地籍の問題によって再開発事業や土地の有効利用が妨げられているケースがあります。実際に、あの六本木ヒルズの市街地開発事業においては、約11・(400筆)の境界の調査に4年という長き年月を要しているのです。仮にこの地域で、事前に地籍調査が行われていれば、もっと期間が短縮できたものと思われます。
(5)課税の適正化・公平化にも寄与します。税務行政においては、税の負担の公平が何よりも求められますが、固定資産税の課税データは、必ずしも正確ではないデータによっていることも多く、不公平な取り扱いがされている場合があります。これも是正されることになります。ちなみに、実務において「縄のび」「縄縮み」という言葉が使われますが、登記簿に記載された土地面積より実際の土地の実測面積が多いこと、少ないことを指します。どうしてこのようなことが多かったのかというと、明治政府が地租改正作業を行った際、測量技術が低かったこともありますが、なんとか地租を低く抑えたいという住民によって、実際の面積より少なく測量しようとしたことにも一因があったようです。
この地籍調査は、国土調査法に基づき市町村が実施することになっていますが、地籍調査の必要性や有効性については理解を示しているものの、財政状況が厳しく、財政的負担や人的負担に耐えられないといった事情で、未着手の市町村も多いのが実情です。しかし、以上のような効果があることを考えると、すべての市町村において早急に調査が完了することが望まれます。
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インターネットの物件情報 |
現在、日本経済というより世界的な経済不況といわれる中で、それを反映して、経済の一方の牽引車であるべき不動産市場が冷え込んでおり、大手デベロッパーの倒産も一つや二つではすまない状況です。外資系のリートも手持ちの不動産を売りに出しているまでになってきています。
しかし、見方を変えると、いま不動産は買手市場になっているということでもあります。
土地は、まだこれから4割は下落するであろうという見方をする人もいますし、マンションも、特に首都圏のマンションはなかなか完売できないという状況で、現金取引だと200万円くらいは値引いても売却するともいわれています。
バブル期に不動産に手を出さず、じっとしていた人にとってみれば、まさに千載一遇ともいうべきチャンスの到来です。しかし状況はどうであれ、不動産を購入したいと考える場合に、特に注意をしなければならないことがあります。
後を絶たない「おとり広告」
土地や戸建住宅、マンションを購入したい、あるいは借りたいという場合に、まずどういう手段で不動産を見つけようとしますか。それにはいろいろな方法がありますが、どんな場合でも、広告を見ることからスタートします。その広告も▽新聞の折り込みチラシ▽ポストに投げ込まれたパンフ▽店頭の案内板▽不動産情報誌▽インターネット──などさまざまなものがあります。
そして、当然のことですが、どの種類の広告であっても、広告には絶対にウソがあってはならないものです。しかし、実際にはいわゆる誇大広告といわれるインチキ広告もいまだ後を絶ちません。そこで、以前にも簡単に取り上げましたが、今回と次回にわたって、少し詳細に広告について考えてみましょう。
不動産の広告を規制する法律には「宅地建物取引業法」と「不動産の表示に関する公正競争規約」があります。後者の不動産の表示に関する公正競争規約とは不動産業界が自ら取り決めた自主的なルールであって、公正取引委員会の認定を受けているものです。
その内容は、規約11章、施行規則14条から成り立っているかなり詳細なもので、不動産公正取引協議会の加盟団体に所属する会員業者に適用されることから、事実上、全国のほとんどの宅建業者に適用されます。宅建業者が出す広告は、基本的にこの規準による規制を受けることになります。そして、この規約は、自主的ルールといっても規約を守らない業者に対しては罰則規定もありますので、十分な強制力があるものです。
広告にも前記のように種類がありますが、近時、広告媒体として増えているのがインターネットを利用した広告です。ところが最近、インターネット上の広告表示における「おとり広告」事案が増加しているため、これらの違反行為を未然に防止する観点から、公正取引協議会は「インターネット広告の適正化について(お願い)」と題して「おとり広告の規制概要及び不動産業者の留意事項」を取りまとめました。おとり広告を行うことがないよう、公正取引協議会を通じて会員各社への周知徹底を依頼したものです。そこでまず、このインターネット広告の規制内容を取り上げることにします。
公取協が具体例まとめる
まず、公正取引協議会が過去に規約違反として措置したインターネット上の「おとり広告の具体的な態様」は、次のとおりです。
▼適切な更新を怠ったために、掲載途中から取引不可能になった例
最初にインターネットに広告を掲載した時点では、取引することができる物件であったが、掲載後に成約済みとなった物件を削除することなく更新を繰り返すなど、適切な更新を怠ったために、長期間(表示規約に違反する事案をみると、いずれの事案も広告時点の1カ月以上前に成約済みとなっている物件が含まれている)にわたり、実際には取引することができない物件となっていたもの。
▼当初から成約済みであった物件をインターネット上に掲載していた例
成約済みの物件を、成約状況などを適切に確認することなくインターネット上に広告を掲載したことから、実際には掲載した当初から取引することができない物件であったもの。
▼架空の物件をインターネット上に掲載していた例
事例として多くはないが、不動産業者が一般消費者の関心を引くために、まったく架空の格安物件や既に入居者が存在する成約済みの物件をもとに賃料を安くするなどした架空物件を掲載したことから、実際には取引することができない物件であったもの。
これらからいえることは、違反の主な原因は、宅建業者が物件の新規掲載時または更新時に物件の制約状況の確認を怠っていることにあります。そこで公正取引協議会は、おとり広告を防止するには、成約状況の確認はもとより、情報登録日または直前の更新日以降もリアルタイムに成約状況の確認を行い、成約済みの物件を削除することが最善の方法であるとして前記の「おとり広告の規制の概要及び不動産業者の留意事項」を出したのです。
これを一般消費者からみると、インターネット広告は必ずしも最新の物件情報が載っているとは限らないと思って見るべきだということです。IT化時代でコンピュータはどこの家庭にも普及していますが、われわれはつい、インターネットに載っていることはすべて事実と思いがちです。そのあたりは十分注意を払いましょう。
次回は本連載の最終回ですが、一般の広告における規制例を中心にお話ししたいと思います。
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不動産広告でつまずかないために |
前回はインターネットの広告規制についてお話ししましたが、今回は広告の読み方のポイントです。首都圏不動産公正取引協議会がインターネットのホームページ上で紹介していますので、これを引用しながら、知っていないと分かりにくい項目について、そのいくつかを取り挙げます。
不動産の所在地
不動産の所在地の表し方には、登記地番と住居表示があります。登記地番は不動産登記法に定められた土地の番号のことで、住居表示は、住居表示に関する法律に基づいて市町村が合理的に分かりやすくするために定めます。
例えば、東京都千代田区九段南3丁目18番地は登記地番で、東京都千代田区九段南3丁目7番7号は住居表示です。
法務局では、住居表示の番号から地番を確認する資料として「住居表示地番対照住宅地図」(住宅地図の上に、登記所備付の「公図」の内容を重ね合わせて印刷したもので、通称「ブルーマップ」といわれています)が備え付けられているので、これにより調査することができます。
青田売りと設備概要
建売住宅や分譲マンションは、工事の完了前に販売されるものも多いのですが、これを青田売りといいます。青田売りの場合には建築確認番号、工事の完了による入居予定年月、主たる設備の概要などが表示されますが、ほとんどの場合、未完成物件はモデルルームなどを見て買う訳ですから、完成後にそれと異なったものが出来上がっては困ります。そこで、これ以外に次のものが表示されます。
新築分譲住宅の場合は排水施設、上下水道施設、汚水の処理方法、道路の幅と舗装の状況、ガス設備など、新築分譲マンションの場合はガス、厨房などの設備や建物の主要構造部の材質、内装、外装の材質や塗装の方法、集会室などの整備状況、エレベーターの基数、駐車場の台数とその利用条件など、主要たる設備の概要が表示されます(一部の項目についてはパンフレット以外の広告には表示されていない場合があります)。
環境
当然のことですが、住まいとしてよい環境と悪い環境があります。例えば、買ったマンションの隣に大きな建物がたち、日当たりや風通しが悪くなることや、近くに鉄道や高速道路が建設され騒音に悩まされることもあるでしょう。このように、住まいとして好ましくないものが将来出現することが客観的にはっきりしているときは、パンフレットに必ず表示することになっています。
市街地型のマンションは工場跡地に建設されることもあり、その場合に最も問題となるのは土壌汚染です。以前はどのような種類の工場であったのか、よく現地をみて調査することが必要です。
住宅ローン
民間融資には銀行、信託銀行、信用金庫、生命保険会社、農協などがあります。民間の住宅ローンには「提携ローン」と「紹介ローン」の二つがあります。
(1)「提携ローン」とは、不動産会社と金融機関との間で、その不動産会社から住宅などを購入する人に対して、その資金を金融機関が融資することを書面で協定していることをいいます。この場合は、購入者が借入資格さえあれば必ず融資を受けることができます。
(2)紹介ローンは、提携ローン以外のものをいいます。広告には、「紹介ローン」などと表示されます。これは金融機関が独自に行うもので、これを借りるには、住宅などがその金融機関の融資基準に適合しているか、購入者が借入資格があるかの両方を審査して融資するもので、不動産会社とは直接関係はありません。
建築条件付の土地
土地の販売において、その土地に指定された建設業者(建設業者を指定しない場合もあります)との間に、一定期間内に建物を建築することを停止条件(または解除条件)とするものを「建築条件付土地」といいます。土地のみの販売はされません。なかには建物のプラン例(間取図)を大きく掲載して、新築の建売住宅の広告のように見えるものもありますので注意してください。契約は、土地については売買契約、建物については建築請負契約を締結することになります。
この建築条件付土地取引に関して広告に表示する場合は@取引の対象が建築条件付土地である旨A建築請負契約を締結すべき期限B建築条件が成立しない時は、土地売買契約は解除され、土地の買主から受け取った金銭はすべて遅滞なく返還する旨C建物の設計プランを示すときは、参考のための一例でこのプランを採用するか否かは、土地購入者の自由であるD建物価格──などが表示されます。
土地の利用制限
土地は所有者であってもまったく自由に使用してよいものではありません。都市の健全な発展と整備、自然環境の保護、有効な土地利用など人間が安全にそして快適に住めるようにするため、種々の法律によって、土地の利用が制限されています。
土地の利用を制限する法律の主なものは、都市計画法、建築基準法、宅地造成等規制法、農地法、自然公園法、土地区画整理法、土地収用法などです。
このような法律によって宅地の造成や住宅の建築が制限または禁止されているのに、その旨を広告に表示しないときは不当表示として規制されます。また、宅地建物取引業法は、不動産会社にこれらの制限の内容を「重要事項説明書」により、契約する前に購入者へ説明することを義務付けていますから、宅建業者からその内容をしっかり確認する必要があります。
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以上、ここで取り上げたものは広告規制のほんの一部ですが、不動産を購入しようとするときはもとより、単に知識として知っているだけでも面白いものです。これらの規約を知りたい方は、インターネットで「不動産公正取引協議会連合会」で検索すると、そのホームページから規制内容をダウンロードすることもできるようになっています。興味があり、もっと詳しく知りたい方は一度のぞいてみてください。
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足かけ4年の長きにわたったこの連載も、今回をもって終了します。しばし充電期間をおかせていただいて、また、機会がありましたら、新しい企画でお目にかかりましょう。長期間にわたりご愛読いただき、ありがとうございました。