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今週の質問(2019.05.13)

コンクリートのスランプ値について、スランプ値が大きいということは単位水量が多く、強度が低下すると思うのですが、関係がないのでしょうか?

コンクリートのスランプ値や、強度に関する内容は、施工の鉄筋コンクリート工事・構造の鉄筋コンクリート構造でよく出題される内容だね。

まず、コンクリートの強度について考えてみよう。
強度に関連する要素として、材齢や使用材料、調合、施工条件など、いろいろなものがあるけれど、コンクリートの強度を考えるときは、この中でも特に、「調合」におけるセメントペーストの強さ(水セメント比)が重要になってくるんだ。

水セメント比というのは、コンクリート中にあるセメントに対する水の重量比(質量比)のことで、下の式によって求めることができる。

水セメント比

この式から、おさえてほしいポイントは下の2つになるぞ。

  • ・水セメント比が「小さい」方が、式の分母である「セメント」の量が多くなる
    圧縮強度が大きい
  • ・水セメント比が「大きい」方が、式の分子である「水」の量が多くなる
    圧縮強度が小さい

このポイントからも、水セメント比によって、コンクリートの強度が決定されている、ということがわかってもらえるかな。
ここで覚えておいてほしいのが、水セメント比は比率であるということだよ。
つまり、単位水量を多くして、同じだけセメント量も多くすれば、水セメント比は変わらないんだ。

次の例で考えてみよう。
セメントが100kg、水が50kgだとしよう。
先ほどの式に当てはめてみると、水セメント比は50%となるよね。

水セメント比

では、セメントが200kg、水が100kgだとしたらどうかな。
これも、水セメント比は同じ50%となる。

水セメント比

水100kg、というところだけを見てしまい、それだけで、水50kgのときよりコンクリート強度が高い、というのは間違いで、水100kgに対してセメントがどれくらいなのか、という「比率の数値」つまり「水セメント比」が、強度を考える上で特に大切なポイントになるんだ。

ここから読み解くと、水セメント比が同じであれば、単位水量が多くても少なくても、同じ強度となる。逆に、水セメント比を変えれば、強度もそれに左右される、ということだね。

ここで気付いてほしいのは、この式に「スランプ値」が含まれていないということなんだ。
スランプ値が大きくても小さくても、この式に直接的な関連性はない。スランプ値は、コンクリートの強度に直接関わっているわけではないんだよ。

では、スランプ値とは、なんだろう。
改めて、意味を確認していこう。

スランプ値とは、フレッシュコンクリートの流動性のよさを表す値のことだ。
スランプ値が示すのは「コンクリートの柔らかさ」ということを頭に入れておこう。

右図下図のような、スランプコーンと呼ばれる円錐形の容器にコンクリートを詰め、それを静かに引き上げると、コンクリートだけが残されるのがわかるかな。
容器の支えが無くなったコンクリートが、自重でどれくらい下がったかを測定するんだ。これをスランプ試験といい、このときの、頂点から下がったところまでの量の値が、スランプ値と呼ばれているんだよ。

スランプコーン

スランプ値、コンクリート、スランプコーン

例えば、とあるコンクリートでスランプ試験を行った場合、頂点から18cm下がった、という結果が出たとしよう。この場合は、「コンクリートのスランプは18cmである」と言い換えることができるよね。

スランプ値が大きいほど、スランプ試験で大きく下がる結果を出した、ということになるので、流動性が高いコンクリートである、という特徴がわかるようになる。
コンクリートの流動性が高いほど、コンクリートの分離や乾燥収縮、付着強度の低下などを招きやすくなるため、スランプ値はできるだけ小さくする方が良いとされているぞ。
でも、スランプ値が小さすぎると、流動性がなく、扱いにくいコンクリートにもなってしまう。そのため、スランプ値で示されたコンクリートの柔らかさは、施工性(ワーカビリティ)の指標として用いられているんだよ。

確かに、一般的に、「コンクリート中の水を多くするとスランプが大きくなる」という状況が考えられるのだけれども、だからといって水の量(単位水量)の調整だけですべてが済むわけではないよね。
なぜなら、コンクリートを調合するときには、施工性(ワーカビリティ)や強度、耐久性などのバランスを考えなければならないし、上で説明した「セメントと水によって定められた水セメント比」や、細骨材・粗骨材の条件など、全部が関わってくるからだ。

水セメント比を一定にしたまま、スランプを大きくすることもできる(コンクリート中の水分を多くし、それに応じて単位セメント量も変化させ、立米あたりの細骨材量や粗骨材量も変え、細骨材率を調整するなど)し、状況に応じてAE減水剤などを用いる場合もある。
このように、いろいろな状況があるからこそ、一概に、「スランプ値が大きいということは単位水量が多く、強度が低下する」とは言えないんだよ。

あくまで、スランプ値は品質を保つための指標のひとつであり、最良の状態をつくるためのものさしのようなものだね。
実際の現場では、コンクリートを発注する際にあらかじめスランプ値を指定することにより、指定したものと実際に運ばれてきた生コンとで品質に差が出ないようにする目的で用いられているぞ。

「スランプ値とコンクリート強度は直接的に関係がない」という意味が理解できたかな。

良いコンクリートとは、

  • ●良い調合(調合や製造)
  • ●良い材料(適したセメントや適した骨材)
  • ●良い施工管理(打設や養生)

この3つの目標が組み合わさって出来上がる。
それぞれの値の意味や目的が、どのように関連していくのか、
改めて見直してみると、分かりやすくなるぞ。

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