設計製図本試験
課題検証

設計製図試験 総評

令和元年
1級建築士 設計製図課題

美術館の分館

総評

今年度の試験課題は、「美術館の分館」でした。
また、テーマとともに「注1)~注3)」、「建築物の計画に当たっての留意事項」及び「注意事項」が示されました。その内容は、以下の通りでした。

注1)既存の美術館(本館)の隣地に、美術、工芸等の教育・普及活動として、市民の創作活動の支援や展示等を行うための「分館」を計画する。
注2)屋上庭園のある建築物の計画
注3)建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)


「建築物の計画に当たっての留意事項」
  • ①敷地条件(方位等)や周辺環境に配慮して計画するとともに、空調負荷の抑制や自然光の利用を図る。
  • バリアフリー、省エネルギー、セキュリティ等に配慮して計画する。
  • ③各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
  • ④建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
  • 構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を配置する。
  • 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

「注意事項」
  • 「試験問題」及び上記の「要求図書」、「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにして下さい。
    なお、建築基準法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。

また、本年も、昨年と同様A2用紙による出題でした。また、事前公表された上記、建築物の計画に当たっての留意事項においては、試験室の黒板に掲示されました。
そのような中で実施された試験ですが、図面及び記述の解答については、普段実習している課題と大差は無く、完成度は高いと思われます。

本年の試験課題の概要と採点ポイントについては、以下の通りです。



課題検証

(1)敷地及び周辺条件

敷地は、平坦で、北側の一面道路(歩車分離型:幅員16m)に接する。
敷地の東側に既存美術館(本館)があり西側及び南側は公園(防火上有効)がある(肯定的環境)。
※敷地と公園又は本館の建設地とは、自由に行き来できるものとする。

①第1種住居地域及び準防火地域
建蔽率の限度は60%(1,536m2×0.6=921.6m2以下)、容積率の限度は200%

(違反に注意)7m×7mのグリッドを用いて19コマの計画は、931m2で超過となります。

②アプローチの検討 
※敷地と公園又は本館の建設地とは、自由に行き来できるものとする。

西側:公園があり景観が良い。自由に行き来できる。
北側:メイン道路。道路を挟み公共駐車場がある(来館者・職員用と考えられます)。
東側:既存美術館(本館)がある。駐輪場(分館来館者も利用する)がある。
南側:公園があり景観が良い。自由に行き来できる。
※周辺条件及び隣地の条件から北側からメインアプローチを想定することが望ましいと考えます。
車椅子使用者用駐車場(2台)、サービス用駐車場(1台)の出入口は、北側と考えます。また、トラックヤードとして、2tトラック(6.2m×2m)が駐車できるスペースが必要です。


③地盤は、良好で杭打ちの必要はない。
※近年の試験のような地盤略断面図等はなく、経済性に配慮した独立基礎の計画でよい。


(2)建築物

①構造種別は自由

建物の利用形態から鉄筋コンクリート造とし、長スパン部には、PC梁を用いる計画が適切です。

②床面積の合計 2,000m2~2,400m2
※「ピロティを屋内的用途に供するものについては、床面積に算入する。」の指定でした。


(3)要求室

①展示室A~C、ホワイエ及び各種アトリエは、直天井とせずに天井を張るものとし、天井高は3m以上とする。
②各展示室には、「前室(チケットの確認等)」及び「倉庫」を設ける。
③多目的展示室(天井高6m以上、200m2以上、短辺/長辺=1/2以上、無柱空間)… 天井高が6mを超え、床面積が200m2を超える場合は、天井等落下防止対策が必要
・専用の「空調機械室」…空冷ヒートポンプパッケージ方式床置きダクト接続型、屋上に熱源:空冷ヒートポンプ、外気処理空調機
④留意事項において
 (1)公園への眺望
 (2)分館と本館との来館者の動線を適切に計画
 (3)教育・普及部門の展示関連諸室とアトリエ関連諸室を利用形態に応じて適切に計画
 (4)断面計画において、要求室の天井高さ又は天井ふところを適切に計画
⑤設備スペース
 ・ポンプ室(約15m2)…消火ポンプ、給水ポンプ
  ※水道直結増圧方式(受水槽は不要)
 ・屋上設備スペース(約120m2)…空冷ヒートポンプ、外気処理空調機、電気設備
  ※非常用発電設備については記されていない。

 ※設置した下階に適切に平面図に点線で表示
    

(4)その他の施設等

屋上庭園
①3階の床レベル(2階の屋上)に10m四方以上を確保し、150m2以上設ける。
②樹木(樹高3m未満)を植栽するため、客土500mmの部分を100m2以上。
庭園内通路と客土の上端を同レベル程度(スラブを500程度下げる計画)。


(5)要求図書

①建築物の外壁の開口部で延焼のおそれのある部分の位置及び防火設備、防火区画に用いる防火設備の位置及び種別

凡例:特定防火設備  基準法第2条第九号のニロに規定する防火設備 

◆延焼のおそれのある部分の位置の考え方

東側隣地境界線からの距離 … 1階:3m、2・3階:5m
南側・西側隣地は考慮しなくてよい(防火上有効な公園のため)
北側道路からは考慮しなくてよい(幅員16mのため)

◆防火区画に用いる防火設備

面積区画 … 1500m2の区画を特定防火設備により区画 
竪穴区画 … 竪穴区画となるエントランス吹抜け、階段・EV等を防火設備により区画 、面積区画を兼ねる場合は、特定防火設備により区画  

試験の難易度について

1.建築物のプランニングについては昨年の試験に比べ比較的やさしい
 ※3階の納め方が難しい吹抜けの配置計画との関係による)。
2.計画の要点等の記述については例年と同等で中程度であったと想定されます。


プランニングのポイント

①計画可能範囲について

隣地境界から建築物までの空きを2mと想定し、北側道路からは、トラックヤード、駐車場(車椅子使用者2台・サービス1台)を前面道路から8mで計画するものとして、28m×37m(1,036m2)を可能範囲として計画を進めます。ただし、建築面積を921.6m2以下とするため、南北方向又は東西方向のコマを2コマ程度減らして7×7mの場合、18コマ以下、6×7m又7×6mの場合、21コマ以下に調整することで建築面積をクリアできます。


②グリッド計画について

多目的展示室(200m2以上)やその他の諸室が50m2の倍数を利用していることから、グリッド計画においては、7m×7mグリッドを用いた計画がしやすいと考えます。
ただし、7×7mグリッド4コマの計画では不足(196m2)するため注意
が必要です。
その場合、東西スパンに7m×8mグリッド等を利用(15×14=210)することで計画が可能です。


③設置階の振り分け

1階:管理・共用部門(エントランスホール等)及び多目的展示室
2階:展示関連諸室(多目的展示室を除く)ホワイエについては、1階又は2階で検討することになります。
3階:アトリエ関連諸室を配置する。 ※ゾーニングを明快にすることがポイントです。


④天井等落下防止対策について

多目的展示室が特定天井(天井高6m超え、200m2超え)に該当する場合は、下記の基準で図示が必要になります。

  • 天井構成部材(天井材への直付け設備機器等を含む)の単位面積質量を20kg/m2以下とする。
  • 天井吊り材1本/m2で計画する。
  • 振れ止め用の斜材を設ける。 等

⑤地盤条件及び経済性を踏まえて採用した基礎構造の形式について

べた基礎・布基礎・独立基礎の中で、最も経済的な形式は、独立基礎と考えますが、べた基礎でも問題は無いでしょう。


⑥パッシブデザインについて

3層の吹抜けを計画する要求があることから上部に開閉式のトップライト等を計画することで、自然採光、自然通風・換気に有効です。
夏期の日射遮蔽については、南面に庇や水平ルーバーを設け、西面・東面に垂直ルーバーを設けることで対処できます。また、窓ガラスをLow-Eガラスを利用(指定)することで、日射負荷抑制が可能です。


計画の要点記述等(5)

「吹抜け及びその周囲の空間において、多くの自然光を取り入れるために、平面・断面計画や開口部について工夫したこと」が求められています。

開閉式トップライト等により自然採光を取り込む等、計画上工夫したことを記入する。

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