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2019年(令和元年)1級建築士 設計製図試験合格発表[再試験]

試験データ

  2019年
学科の試験 設計製図の試験
本 試 験 再 試 験 全 国
(本試験+再試験)
試 験 日 2019年7月28日(日) 2019年10月13日(日) 2019年12月8日(日)
試 験 会 場 全国56会場 29道府県
全国29会場
23都道府県
全国27会場
実受験者数 25,132人 4,214人 5,937人 10,151人
合格者数 5,729人 1,541人 2,030人 3,571人
合格率 22.8% 36.6% 34.2% 35.2%
総合 実受験者数 a 29,741人
合格者数 b 3,571人
合格率 b/a 12.0%

※今年「学科試験」から受験した方と、過去2年間に「学科の試験」に合格し今年「設計製図の試験」から受験した方の合計です。

2019年(令和元年)1級建築士設計製図再試験の合格発表について

設計製図合格率 34.2%
(本試験・再試験の合計:35.2%) 
≪昨年より7.2P(6.2P)ダウン、本試験より2.4Pダウン≫

最終合格率 12.0% 
≪昨年より0.5Pダウン≫

公表された合格基準等においては、例年に比べ「重大な不適合」に該当して、ランクⅣとなった受験者が28.6%(本試験:31.3%)、ランクⅢとなった受験者が31.9%(本試験:29.2%)と試験制度の見直し(平成21年)以降、最も高くなりました。

1.受験者答案の分析から見えてくる採点基準についての考察

下記の内容は、再試験直後に受験者の方々に復元いただいた答案の計画内容を項目ごとに分析し、合否結果から想定される日建学院独自の分析データです。

約100名のサンプル答案の合格率は42.7%でしたので、それを下回る数値の計画には、何らかの問題や減点、もしくは計画における難しさがあったものと考えられます。

はじめに、受験者が最も悩まれた展示関連諸室(多目的ホール・展示室A・B・C)のゾーニング・設置階においては、要求室欄の上段に記載された「前室(チケットの確認等)及び倉庫を設ける。」と指示されたことから、1層にまとめてゾーニングすることは難しく、1階及び3階に分けてゾーニングする計画等を含め、下記のように様々なゾーニングがありました

また、アトリエ関連諸室のゾーニング・設置階においても1層にまとめて計画することが、明確なゾーニングと考えられましたが、下記のようなゾーニングもありました。

受験者の展示関連諸室・アトリエ関連諸室の設置階による合否結果は下記のとおりでした。

展示関連諸室の設置階について
計画内容 受験者の割合 合格率 サンプル合格率との差
① 1・3階 78.7% 44.1% +1.4%
② 2・3階 9.3% 14.3% -28.4%
③ 1・2階 8.0% 66.7% +24.0%
④ 1・2・3階 2.7% 50.0% +7.3%
⑤ 3階 1.3% 0.0% -42.7%
アトリエ関連諸室の設置階について
計画内容 受験者の割合 合格率 サンプル合格率との差
① 2・3階 50.7% 47.4% +4.7%
② 2階 36.0% 40.7% -2.0%
③ 1・2階 13.3% 30.0% +12.7%

※標準解答例の各階のゾーニングは、上記パターンA・Bでした。
受験者のゾーニングでは、設置階パターンによる合格者には差が出ましたが、最も多かったゾーニングは、展示関連諸室:1・3階、アトリエ関連諸室:2・3階でした。

2.試験機関から公表された「採点のポイント」と「採点結果の区分」

合格発表と同時に試験機関から公表された「採点のポイント」は次のとおりです。

  1. 空間構成

    ①建築物の配置計画
    ②ゾーニング・動線計画
    ③要求室等の計画
    ④建築物の立体構成等

  2. 建築計画

    ①自然光の取入れ方や自然換気の工夫
    ②日射負荷の抑制
    ③要求室の機能性等
    ④図面、計画の要点等の表現・伝達

  3. 構造計画

    ①耐震性・経済性を考慮して計画された建築物全体の構造種別・架構形式・基礎形式・スパン割り等
    ②多目的展示室の構造計画
    ③屋上庭園の構造計画

  4. 設備計画

    ①多目的ホールの設備計画

  5. 設計条件・要求図面等に対する重大な不適合

    ①「要求図面のうち1面以上欠けるもの」、「計画の要点等が完成されていないもの」又は「面積表が完成されていないもの」
    ②地上3階建てでないもの
    ③図面相互の重大な不整合(上下階の不整合、階段の欠落等)
    ④建築面積が921.6m2を超えているもの
    ⑤床面積の合計が1,800m2以上、2,200m2以下でないもの
    ⑥次の要求室・施設等のいずれかが計画されていないもの
    多目的ホール、展示室A、展示室B、展示室C、ホワイエ、創作アトリエ、アトリエA、
    アトリエB、アトリエC、アトリエD、吹抜け、エントランスホール、カフェ、
    多機能トイレ、便所、事務室、荷解き室、PS・DS・EPS、屋上庭園、分館出口前のオープンスペース
    ⑦法令の重大な不適合等、その他設計条件を著しく逸脱しているもの


今年の本試験・再試験では、重大な不適合においては、下記の追加された項目等を含め、該当した受験者が多くなっていることが想定されます。

  1. ①未完成(今年より計画の要点等のイメージ図記入欄は、必ず記入のことと指示されました。) ※図の未記入も未完成とされたおそれがあります。
    ④建蔽率違反(建築面積オーバー) ※例年3%~5%程度
    ⑥要求室の欠落等(今年よりPS・DS・EPSが計画されていないもの)について追加されました。その違反だけでランクⅣに該当した受験者もいたおそれがあります。
    法令の重大な不適合等、その他の設計条件を著しく逸脱しているもの

法令については、昨年の試験から加えられた「延焼のおそれのある部分」、「防火区画(面積区画・竪穴区画)」も含めて、「重大な不適合」として厳しい採点がなされたものと考えます。下記は、試験機関から公表された標準解答例①の凡例の下段に記載された文章です。

  1. 【延焼のおそれのある部分】建築基準法第2条第6号の規定により、延焼のおそれのある部分は、隣地境界線、道路中心線等から、1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建築物の部分が該当するが、防火上有効な公園等に面する部分は除かれている。この計画では、北側の隣地境界線及び東側の道路(8m)の中心線からの「延焼のおそれのある部分」に建築物は計画されておらず、また西側及び南側は、防火上有効な公園であることから当該建築物には、「延焼のおそれのある部分」は生じない。

    【防火区画】建築基準法施行令第112条第1項の規定により、主要構造部が耐火構造の建築物で、延べ面積の合計が1,500m2を超えるものは、床面積の合計1,500m2以内ごとに所定の防火区画を設け面積区画をする必要がある。この区画間の開口部分では、特定防火設備の設置が義務付けられている。また、同第112条第9号の竪穴区画(階段・昇降路、吹抜け)部分には、所定の防火設備を設置する必要がある。この計画では、竪穴区画及び各階を1,500m2以内とした階ごとの面積区画を行い、施設の用途を考慮し、高い安全性能を確保するため、竪穴区画を特定防火設備で区画した。

    【建築物移動等円滑化基準】バリアフリー法施行令第17条第2項第三号の規定を踏まえ、この計画では、車椅子使用者用駐車場の幅を3.5m以上確保し、当外駐車場から建築物の主要な出入口までの経路を、できるだけ短くなるように敷地内に計画した。

    【敷地内の通路】敷地内に設ける通路は、建築基準法施行令第128条の規定を踏まえ、いずれも幅員を1.5m以上とし、東側の道路又は西・南側の公園に通じさせた。

    【道路高さ制限】本課題の敷地は、第一種住居地域で、斜線勾配は、1.25、容積率200%である。建築基準法第56条第1項第一号、第2項、別表第3項の規定により、「前面道路の反対側の境界線の後退距離に相当する距離だけ外側の線」から水平距離20m以内において道路高さ制限が適応される。東側の道路に最も近い建築物の部分の高さ制限による限度は、(2.65+8.0+2.65)×1.25=16.625mであり、道路高さ制限(16.625m>16.300m)に適合している。

上記のように法令〔「延焼のおそれのある部分」、「防火区画(面積区画・竪穴区画)」、「敷地内通路」〕「建築物の移動等円滑化基準」「敷地内の通路」「道路高さ制限」の考え方についても記載されていましたので、今後の試験においては、内容を十分に理解して解答する必要があることを示唆しているように思われます。


続いて、平成27年~令和元年までの「採点結果の区分(ランク分け)」を示します。

ランクⅠ:「知識及び技能」を有するもの
ランクⅡ:「知識及び技能」が不足しているもの
ランクⅢ:「知識及び技能」が著しく不足しているもの
ランクⅣ:設計条件・要求図面等に対する重大な不適合に該当するもの

「知識及び技能」とは、一級建築士として備えるべき「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」をいう。

○受験者の答案の解答状況
ランクⅢ及びランクⅣに該当するものが多く、具体的には以下のようなものを挙げることができる。
・設計条件に関する基礎的な不適合:「要求されている室の欠落」や「要求されている主要な室等の床面積の不適合」
・法令への重大な不適合:「延焼のおそれのある部分の位置(延焼ライン)と防火設備の設置」、「防火区画(特に吹抜け部の1階部分の区画)」や「直通階段に至る重複距離の長さ」等
・その他建築計画に基本的な問題があるもの:「吹抜けの計画(吹抜けとなっていないもの)」等

ほとんどの受験者は、合格となったランクⅠと、不合格となったランクⅢ・Ⅳに区分されたことになります。この「採点基準」が試験対策の要となるわけです。

3.学科合格者と学科免除者の設計製図試験合格率の比較

令和元年から平成26年までの当年の学科合格者と学科免除者の設計製図試験合格率は次のとおりです。今年の合格率の差は11.7%となっています。

  全国
合格率
①当年の学科合格者の
合格率
②学科免除者の合格率
(前年/前々年学科合格者)
②-①
合格率
の差
合格者
/受験者
合格率 合格者
/受験者
合格率
R元年 35.2% 1,696名
/5,542名
30.6% 1,875名
/4,609
40.7% 10.1%
再試験 34.2% 983名
/3,257
30.2% 1,047名
/2,680名
39.1% 8.9%
本試験 36.6% 713名
/2,285名
31.2% 828名
/1,929名
42.9% 11.7%
H30年 41.4% 1,683名
/4,584名
36.7% 2,144名
/4,667名
45.9% 9.2%
H29年 37.7% 1,564名
/4,793名
32.6% 1,801名
/4,138名
43.5% 10.9%
H28年 42.4% 1,582名
/4,101名
38.6% 2,091名
/4,552名
45.9% 7.3%
H27年 40.5% 1,594名
/4,650名
34.3% 2,180名
/4,658名
46.8% 12.5%
H26
40.4% 1,656名
/4,653名
35.6% 2,169名
/4,807名
45.1% 9.5%

4.令和2年 設計製図本試験対策

採点方式が大幅に変更され、法令等を中心に厳しい採点が行われたものと考えます。
今後の試験においては、減点項目を十分に理解し、減点を最小限に抑える図面を完成させることがポイントです。

  1. 法令遵守

    建築基準法令に適合した建築物の計画(建蔽率、容積率、高さの制限、延焼のおそれのある部分、防火区画、避難施設 等)については、課題発表時にも公表されますが、特に重要な要素です。

  2. 低層建築物及び基準階建築物のエスキス手順の理解

    課題テーマは、「低層建築物」と「基準階建築物」の2つに大別することができます。
    集合住宅等の基準階建築物と、図書館、コミュニティセンター等の低層建築物のエスキス手順は異なります。早期からどちらの手順についても、実践課題を通してマスターすることが必要です。

  3. 記述対策

    受験者答案分析から、「記述」も合否が決まる重要な要素です。
    近年の試験では記述の他、イメージ図を用いて解答する等、より専門的な知識を求められるようになっています。要点をまとめ、適切に記入する能力を養成することが合格への絶対条件です。

  4. 試験対策

    基礎構造の計画、天井等落下防止対策、環境負荷低減(パッシブデザインを含む)の取り入れ等については、今後の試験においても設計者として、常に知識を求められます。
    考え方を理解し、図面に反映させることがポイントです。


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