2023年 1級建築士 学科試験合格発表

2023年7月の1級建築士 学科試験結果情報をまとめました

試験内容を振り返り、次の試験に役立つ情報をご案内します!

試験結果

受験者数 合格者数 合格率
28,118人 4,562人 16.2%

合格基準点

学科
I
(計画)
学科
II
(環境・設備)
学科
III
(法規)
学科
IV
(構造)
学科
V
(施工)


合格
基準点
11
11
16
16
13
88

  • ※各科目及び総得点の合格基準点すべてに達している者を合格とする。
  • ※なお、合格基準点について、各科目は過半の得点、総得点は概ね 90 点程度を基本的な水準として想定していたが、総じて難度が高かったことから、上記合格基準点としている。

総評

《合格発表》合格基準点は、昨年より
3点下がり、88点。合格率は16.2%

7月23日(日)に実施された1級建築士学科試験の合格者が発表された。
受験者28,118名、合格者4,562名、合格率は16.2%で昨年より4.8ポイント下がった。
合格基準点は、計画が11/20点、環境・設備が11/20、法規、構造が16/30点、施工13/25点、総合88/125点

  計画(点) 環境
設備(点)
法規(点) 構造(点) 施工(点) 総得点(点) 合格率
R5年 11/20 11/20 16/30 16/30 13/25 88/125 16.2%
R4年 11/20 11/20 16/30 16/30 13/25 91/125 21.0%

※本年の試験問題は、総じて難度が高かったことから、総得点の補正が行われた。

《試験傾向と難易度分析》
標準的な問題の正誤が合否を分けた!

円グラフ出題傾向は、実務に携わる上での啓発的な出題や社会的な重要性の高い分野からの出題となっており、昨年から大きな変わりはない。
正答率Aランク(70%以上)の設問が昨年より14問減り36%出題され、正答率Bランク(50%以上 70%未満)の設問が、昨年より12問増え43%出題された。
容易なAランクの問題、標準的なBランクの問題を確実に得点できたかにより、合否が分かれた。

1.受験者数、合格者数

  R5年 R4年 R3年 R2年 R元年 H30年
受験者数
(人)
28,118
(1,889減)
30,007 31,696 30,409 25,132 25,878
合格者数
(人)
4,562
(1,727減)
6,289 4,832 6,295 5,729 4,742
合格率
(%)
16.2 21.0 15.2 20.7 22.8 18.3

受験者の数は、前年に比べると、1,889名減少した。また、合格者数は、1,727名減少した。

受験者数・合格者数・合格率推移グラフ

2.今後の学習方針
標準問題 (Bランク正答率50~70%) への対策が合否を分ける!「学習の質」が問われる試験!

近年の試験は、従来の表現や論点を変えた出題が増えている。標準問題の対策としては、単に過去の出題を暗記するだけでは不十分で、問題の本質を正しく理解し、その周辺情報まで一歩掘り下げた発展的な学習が求められる。つまり、学習の量だけでなく「学習の質」が問われる試験になっている。

そこで重要なのは、発展的な学習の方向付けである。無作為に学習範囲を広げても、それは非効率であるだけでなく、出題傾向から逸脱してしまうことにもなりかねない。

また、近年の試験は、専門技術者としての「資格者責任」、「契約者責任」、「社会的責任」が問われる建築士の位置付けから、出題内容は多岐にわたる。実務において求められる啓発的な内容が大きな柱になり、各科目の範囲に縛られない出題が増えたことに注目しなければならない。

だからこそ、5科目の内容を横断的に整理した効果的な発展学習が必要であり、そのためには、学習の方向付けを明確にすることが重要で、その「学習の質」が合否を分けることになる。

試験の特徴
【計 画】

テーマとしては、国土交通省や地方自治体等によるガイドライン、脱炭素社会の実現に資するための木材の利用促進、都市計画についての問題が多くみられた。また、計画以外の科目で出題されてきた内容の設問も目立つ。計画という科目にとらわれず、総合的な知識が要求されていると言えるだろう。

特徴的な問題では、No.3「建築や都市に関する著作物」、No.6「木質系材料及び工法」、No.10「交通の面からみた都市計画」、No.11「都市計画法に規定される地域地区」、No.13「高層の分譲集合住宅の新築計画」等が上記のテーマを意識したものだった。例年に比べ、実例建築物の出題が特に少なかったことも特質である。新規の用語も随所に出題されたが、難易度としては標準的と言える。

【環境・設備】

特徴的な問題は、建築環境分野では、新規問題として太陽位置図の読み取り問題、建築設備分野では、受水槽に関する専門的知識を要する問題、自動火災報知設備のP型受信機とR型受信機の違い、設備機器の耐震対策などがあげられ、昨今増加傾向にあるゲリラ豪雨対策としての雨水排水管系の算定の問題などもあった。

建築環境分野においては、正答枝となる枝は過去問の類似が多く、標準的な難易度であったが、建築設備分野においては、新規出題や実務の知識が必要な応用された内容が多く、正答枝が新規で残りの枝が過去問である問題では、消去法で解くため過去問題の理解は必須であり、また応用問題では、過去問題の周辺情報も理解しておく必要があったため、難易度はやや高かった。

【法 規】

問題構成は、建築基準法20問、関係法令9問、基準法と関係法令の融合が1問の出題であった。

今年度の試験の特徴としては、近年の出題傾向であった、より実務的な出題形式である融合問題がなく、従前の形式での出題であった。また、二級建築士試験では頻出であるが、一級建築士試験においては30年以上前に出題された採光計算が出題され、戸惑った受験生が多かったであろう。関係法令においては、建築士法が例年通り比重の高い法令であった。

その他、昨年に引き続き大問での出題となった建築物省エネ法や、1月1日改正の建設業法の内容が盛り込まれるなど、建築士として周知させたい内容が積極的に出題されていると思われる。全体の難易度としては、標準であった。

【構 造】

問題構成は、構造力学6問、一般構造21問、建築材料3問であった。

構造力学は、No.2「棒の軸方向変位」が30年振り、No.5「トラスの塑性崩壊」が13年振りに出題された。一般構造は、No.18「鉄骨構造」において、細長比が異なる筋かいにおける荷重-変形関係の図が与えられている問題が特徴的であった。

また、No.22~24、26は、初出題の枝が比較的多い構成であった。建築材料は、No.27「木材」が「脆性破壊を示さないもの」を選択する、特徴的な問題であった。この形式で出題されたのは、実に、34年振りであった。

【施 工】

問題構成は例年通りで、今年の特徴としては、No.2「工事現場の管理等」で、法規と同様に今年1月1日に施行されたばかりの建設業法の改正から出題された。

No.4「建築工事の届出等」では、建築基準法85条の仮設建築物に対する制限の緩和について初めて出題された。

また、No.14「鉄骨工事(精度の管理)」は図による問題として、No.21は「断熱工事」として単独で出題され、目新しく感じた受験生が多かったと思われる。

今年も新規枝が多く出題されたが、新規枝を正答枝とした問題が多く、また、過去に出題された問題であっても、表現を変更・追加して出題されており、本質を理解していないと正しく判断できないため、難しく感じる問題が多かったと思われる。

3.新規項目

計画
「アカウンタビリティ(専門家としての説明責任)」
「リスクコミュニケーション」 「市街化調整区域」
「宇佐神宮本殿(大分県)、八幡造り」
「箱木家住宅(兵庫県)、現存最古級民家」
「『空間・時間・建築』ジークフリート・ギーディオン」
「『都市の建築』アルド・ロッシ」 「倍強度ガラス」
「霧除け窓」 「CLT」 「LVL」 「MaaS」
「被覆型(メンブレン型)木質系耐火部材」 「意匠登録」
「施設一体型義務教育学校」 「建築設計受託契約」
「400mトラックの運動場寸法」 「ITS」 「ABW」
「車椅子使用者用トイレの自動式引戸開閉スイッチ位置」 「バラガン自邸(ルイス・バラガン、メキシコ)」
「夏の家(アスプルンド、スウェーデン)」
「バワ自邸[Number11](ジェフリー・バワ、スリランカ)」
「ハザードマップ水防ライン」
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」
「ディスプレイ面の鉛直面・水平面照度」
「生産緑地地区」
「小学校両側居室の廊下幅」
「退避区画」 「告示98号 実費加算方法」
「プロジェクトファイナンス」
「積算 設計数量、工事原価、共通費」
「特別支援学校普通教室 鏡・流し台」
環境・設備
「太陽位置図」「学校等施設における外部騒音対策」
「冷暖同時型マルチパッケージ型空調機」
「空気熱源ヒートポンプチリングユニットの台数制御」 「喫煙室の開口部の気流風速」
「塩素による腐食の発生を防ぐためのステンレス鋼板製受水槽」 「ソーラ-チムニー」
「排気フードⅠ型の有効換気量」
「屋外設置のFRP製受水槽の水槽照度率」
「大容量受水槽内の迂回壁」
「敷地排水管の排水ますの間隔」
「雨水排水管径の算定のための雨量」
「サイホン式雨水排水システム」
「不等率」 「雷保護システムのSPD」 「炎感知器」
「地区音響装置における区分鳴動方式」
「耐火配線」
「設備機器の設計用地震力」
「エレベーターの設計用水平地震力」
「非常用発電機の冷却方法」
「エキスパンションジョイント部分の給水管」
「モントリオール議定書のキガリ改正」
法規
「耐火性能検証法における数値」
「2直階段の規定における特定階」
「仮設興行場等における制限」
「非常用エレベーターの構造」
「景観重要建造物に対する緩和」
「開放的簡易建築物の基準」
「消防法:屋内消火栓設備の設置免除部分」
「建築物省エネ法:容積率の特例」
「認定基準の内容について」
「用途変更の際の遡及適用について」
構造
「弾性域における設計用一次固有周期Tの計算に用いる建築物の高さ」 「U字形の折り曲げ定着」
「地下部分一体、地上部分別棟建築物における局部的な地震の伝わり方の検討」
「耐力壁の長期許容せん断力」
「壁の横筋による効果」
「せん断弾性係数とヤング係数」
「鉄骨造のX形筋かい構面及びラーメン構面における水平方向の荷重-変形関係」
「液状化のおそれのある地層が基礎底面以深に存在している場合」 「重要な建築物等の基礎の設計」
「RC柱S梁の混合構造における柱梁接合部の設計」 「PC柱の部材種別判定」
「曲げ耐力に対するPC鋼材の寄与と変形増大係数」 「PC部材の局部圧縮応力」
「ダンパーが弾性範囲に留まる地震動レベル」
「積層ゴムアイソレータの変形と水平剛性」
「制振構造における接合部、周辺部材、柱の変形とダンパーの効果」
「別棟の中・大地震に対する計画」
「SN-B、C種の降伏点のレンジの規定と想定した降伏メカニズムの実現確度」
施工
「せっこうボード直張り工法の接着材の乾燥期間」
「許可申請書(仮設建築物等)」 「浅層地盤改良」
「コンクリート表面の硬化不良を起こしやすいせき板の見分け方」
「実積率の小さい粗骨材と単位水量」
「鋼管充填コンクリートのブリーディング量」
「壁倍率3.7の構造用合板を用いた耐力壁・CN50釘」
「ハンマードリル」 「隅肉溶接のT継手」
「製品検査における階高の誤差」 「地肌地業」
「防腐剤が加圧注入されている防腐処理材」
「成形伸縮目地材のキャップ幅・本体幅」
「塩化カルシウム系の凍結防止剤」 「木材の背」
「ダクトフランジ」 「埋設表示用アルミテープ」
「樹脂製プラグ」 「ころがし配線」 「契約不適合」
「発泡プラスチック断熱材の屋外保管方法」

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