2024年 1級建築士 設計製図課題発表

令和6年 一級建築士試験
「設計製図の試験」の課題

大 学

[要求図書]

  • 1階平面図・配置図(縮尺1/200)
  • 各階平面図(縮尺1/200)

 ※各階平面図については、試験問題中に示す設計条件等において指定する。

  • 断面図(縮尺1/200)
  • 面積表
  • 計画の要点等

[建築物の計画に当たっての留意事項]

  • 敷地の周辺環境に配慮して計画する。
  • バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮して計画する。
  • 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする。
  • 大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画とする。
  • 建築物全体が、構造耐力上、安全であるとともに、経済性に配慮して計画する。
  • 構造種別に応じて架構形式及びスパン割りを適切に計画するとともに、適切な断面寸法の部材を計画する。
  • 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する。

[注意事項]

「試験問題」及び上記の「建築物の計画に当たっての留意事項」を十分に理解したうえで、「設計製図の試験」に臨むようにしてください。
なお、建築基準法等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不適合又は不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。

課題検証

1. 課題テーマと時代背景

2004年に国立大学は各大学が独立した法人格をもつ「国立大学法人」となりました。各大学法人には老朽化した施設も多く、改修や建替えの時期を迎えています。また、近年では18歳人口の減少や生涯学習ニーズへの対応として、大学施設は外部に開かれ周辺地域との関係性を重視したものへと変容してきています。

このような状況の中、大学施設は「知のインフラ」として、SDGs推進やDX加速化、カーボンニュートラル実現など社会課題に対応しつつ将来を担う創造性豊かな人材の育成、独創的先端的な学術研究の推進、イノベーション創出や地方創生などの使命を果たし、社会の期待に応えていくための基盤であり、大学施設の整備充実は我が国の未来を開き、我が国を成長発展へと導く未来への投資であると考えられます。

現在、わが国には国立大学法人が86、公立大学法人が83あり、私大連に加盟している私立大学法人は、108あります。
国立大学の施設整備の方向性としては、「第6期科学技術・イノベーション基本計画」(令和3年3月閣議決定)や「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画」(令和3年3月文部科学大臣決定)の中に、教育研究の高度化等への対応はもとより、産業界や地域の多様なステークホルダーとの共創の拠点として役割を果たすため、キャンパス全体がイノベーション・コモンズへと転換することが示されています。
また、災害時においても、キャンパス内の学生や教職員、地域住民を収容できるような避難場所としての役割が期待されます。

※イノベーション・コモンズとは、ソフト・ハードの取り組みが一体となり、オープンでフレキシブルな教育研究施設だけでなく、個人で集中できる空間や、食堂や寮、屋外空間も含め、キャンパス全体が有機的に連携して地域や産業界などの多様なステークホルダーとともに共創活動を実現する拠点(共創拠点)を指します。

2. 大学について

大学は、学校教育法第一条に定義される教育機関で、その目的は以下のようになっています。

  1. ・第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
  2. ・第八十五条 大学には、学部を置くことを常例とする。ただし、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、学部以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。
  3. ・第九十九条 大学院は、学術の理論及び応用を教授研究し、その深奥をきわめ、又は高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培い、文化の進展に寄与することを目的とする。

これらの法的な定義に加えて、前述したように地域とのつながりや、社会課題に対応することも求められています。

3. 類似課題について

「大学」の出題は、初めての出題です。

過去に大学に関連する「大学のセミナーハウス(H25)」が出題されていますが、ゼミ関連の諸室と宿泊を中心とした保養施設に近く今年度の出題とは関連が薄いと考えます。

近年の課題においては、梁伏図の要求がなく、3平面+断面図の出題となっています。建物用途を考えると大学施設内の一角に増築する計画駅近にサテライト教室として計画する例が考えられ、階数指定が無いことから、基準階(同一平面が複数階)又は地上3階建ての構成をしっかり理解しつつ地下1階の対応も考慮して計画できるようにすることが適切と考えます。

4. 計画上のポイント

大学を計画する上で、次のようなポイントが考えられます。

出題テーマは「大学」となっており、様々な施設が考えられます。初めに基本になる「大学」の校舎等施設について大学設置基準を参照します。

  1. 大学設置基準(昭和31年文部省令第28号(抄)
  2. 第36条 大学は、その組織及び規模に応じ、教育研究に支障のないよう、教室、研究室、図書館、医務室、事務室その他必要な施設を備えた校舎を有するものとする。
  3. 2 教室は、学科又は課程に応じ、講義演習実験実習又は実技を行うのに必要な種類と数を備えるものとする。
  4. 3 研究室は、基幹教員及び専ら当該大学の教育研究に従事する教員に対しては必ず備えるものとする。
  5. 4 夜間において授業を行う学部(以下「夜間学部」という。)を置く大学又は昼夜開講制を実施する大学にあっては、教室、研究室、図書館その他の施設の利用について、教育研究に支障のないようにするものとする。

建築計画

  1. アプローチについては徒歩や自転車が主流で、施設利用者(学生・教職員)と管理・サービス(搬出入・メンテナンス)が想定されます。また、オープンキャンパスや地域とのつながりを考慮した学外の利用者動線を考慮する場合があります。
  2. ② 学生の動線は、講義前後の時間に一度に人の移動が発生することを考慮する必要があります。
  3. ③ 開かれた大学として,公共空間を形成する「場」としての交流機能や、社会との連携を実践するスタートアップ支援機能災害時の避難場所としての備えを考慮する必要があります。
  4. ④ 屋上やテラスは、学習研究時間の合い間のリフレッシュやコミュニケーションの誘発が期待されるため、周辺環境や要求室との関係を考慮して要求されることが考えられます。また、断面図における防水納まりの処理などについても理解しておく必要があります。
  5. ⑤ 駐車場・駐輪場については、広いキャンパス内に別途設置されている想定と、市街地の道路に面する立地で敷地内の要求も想定できます。

構造計画

  1. 3階建てから7階建て程度までが想定でき、階数に応じた基礎を含む構造部材断面について対応できるようにしておくことが必要です。
  2. ⑦ 公示された課題テーマの他に[計画に当たっての留意事項]に記載されているとおり、構造耐力上安全であるとともに経済性に配慮して計画することが必要です。
  3. ⑧ また、「大地震等の自然災害が発生した際に、建築物の機能が維持できる構造計画」が指定されていることから、耐震設計、目標耐震性能等にも留意して計画を進めるとともに地震後の機能維持のため二次部材や設備の耐震性の知識が必要です。

設備計画

  1. ⑨ 設備計画については、設備機器や設備シャフト等の位置に注意が必要です。 設備シャフトについては、給排水用シャフト(PS)、空調用シャフト(DSまたはPS)、電気用シャフト(EPS)をそれぞれ計画する必要があり、その位置及び寸法についても正しい把握が必要です。
  2. ⑩ 設備機器としては、受変電設備(キュービクル)、受水槽、空調設備(空調機械室や室 外機置場等)、非常災害時においては、停電時や消防設備のための自家発電機等が想定されます。設置する場所及びその寸法等については正しく理解しておくことが必要です。
  3. ⑪ 設置する設備によっては使い勝手が向上したり、災害時の機能が付加されたりすることもあります。設備機器の特性についても理解しておくと、より良い設備提案ができます。

法的計画

  1. 建蔽率の上限や高さ制限に違反した計画は、「重大な不適合」に該当し失格となります。
    したがって、課題において挙げられた法規を遵守することが絶対条件です。
    課題において挙げられた法規を遵守することは絶対条件となります。
  2. 2方向避難や重複距離の違反についても、大減点になりますので注意しなければなりません。
  3. 大学の教室は、法的採光の要求があります。(床面積の1/10の有効開口)

5. 計画の要点等

例年、計画の要点が8問程度要求されます。

公示された課題テーマとともに記載されている注意事項に「なお、建築基準等の関係法令や要求図書、主要な要求室等の計画等の設計与条件に対して解答内容が不適合または不十分な場合には、「設計条件・要求図面等に対する重大な不適合」等と判断されます。」とあります。

建蔽率は過去の出題でも求められたことがありますが、容積率や高さ制限(斜線、高度規制等)については対応できるよう算定方法等を確認しておく必要があります。

延焼のおそれのある部分や防火区画、避難施設については、過去の出題もありますが、法的内容の中でも非常に重要な項目であり、重大な不適合(失格要件)に該当することや大きな減点になります。しっかりと理解しておく必要があります。

[計画に当たっての留意事項]に、「省エネルギー、二酸化炭素排出量削減等に配慮」とあります。自然エネルギーを活用し、環境負荷低減や省エネルギーに配慮した建物とする必要があります。


建築計画・構造計画・設備計画において配慮した事項を記述式で要求されますが、重要なのは、実際に計画した建物と記述した内容に不整合がないことです。

建物の計画が優れていても、記述との不整合があれば、採点者の印象を下げ、大きな減点を受ける可能性が高いと言えるでしょう。

暗記した内容をそのまま記述するのではなく、内容を正確に理解した上で記述することを心がけましょう。

今年は梁伏図を要求されていませんが、記述に部材寸法などを求められる可能性があります。伏図の作成に伴う基礎的知識も必要です。


以上のことから、今年度の課題に対し、特に重要と考えられる学習のポイントを列記します。

  1. ⅰ. 施設利用を考慮した明確なゾーニング
  2. ⅱ. 屋外施設を含め周辺環境(大学の同一敷地内における周辺状況)に配慮した配置計画
  3. ⅲ. バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮した計画
  4. ⅳ. 特記事項欄から算定する要求室の面積
  5. ⅴ. 自然災害を想定した建築物の機能が維持できる構造計画
  6. ⅵ. 地盤状態に適合する基礎構造を含む建築物の構造計画
  7. ⅶ. 適切な設備計画
  8. ⅷ. 法令に適合した建築物の計画
  9. ⅸ. 記述問題に対応できる正確な知識

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